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そっくり姉妹

  シルフォードの妹達を迎えに行く為に、俺達は森の中を走る。俺達だけで行くと怪しまれるので、シルフォードも一緒だ。


  ただ、シルフォードは足が遅いので花音の小脇に抱えられている。


 「速っ、速っ!!」

 「喋ると舌噛むよー。気をつけてねー」


  俺たちからすればジョギングより少し早い程度だが、シルフォードからすればジェットコースターに乗ってる気分なんだろうな。


  尚、俺の後ろからは隠れてマーナガルムが着いてきている。帰りに妹達を乗せる用だ。


  そんなジェットコースターを味わう事、1時間。目的地である、洞窟へと辿り着く。


  俺達は外で待機だ。下手に入っていっても警戒させるだけだろう。円滑に話を進めるには、なるべく警戒心を持たれない事が大切だ。


 「ラナー!!トリス!!私!!帰ってきた!!」


  洞窟の奥に向かって大声で呼びかけると、2人の少女が出てくる。


 「お姉様!!」

 「お姉ちゃん!!」


  笑顔で姉を出迎えようと、洞窟の奥からでてきたが、俺たちを見るとその顔が固まる。


  俺達にはそのつもりは無いが、向こうからしたら恐れるべき人間だもんな。当然の反応と言えば当然かもしれない。


  シルフォードはそんな2人の様子を見て、話しかける。


 「大丈夫。この人達は私達の種族に興味無い」

 「嘘だよお姉ちゃん!!人間は私達を殺すか、性欲処理の道具に使うってお父さんが言ってたもん!!」


  何を口走ってるんだこの子は......と言うか、お父さんは娘に何を教えてるんだよ。いや、人間の恐ろしさを教える為に、キチンとそういうことは言うのか?


  俺もイスにそういう教育はした方がいいのかな?あぁ、こういう時にスマホが欲しい。助けてグー〇ル先生。


 「そうですお姉様。人間は口八丁に私達を言いくるめてその身体を貪り食うと、お母様も言っておりました」


  母親もすげぇな。これが日本と異世界の違いか?それとも、長寿なダークエルフの価値観の違いなのか?


  俺としては日が暮れる前には戻りたいのだが、この調子で言い合いをしていると、夜になりそうだな。


 「どうする仁。私が2人とも気絶させて無理やり持ってく?」

 「いや、なんでも暴力でも解決は良くない。今後、俺達と一緒に働いてもらうつもりなんだ。なるべく穏便に行こう」


  シルフォードは思いっきり気絶させてしまったが、その時はまだ仲間にしようとは思っていなかったからだ。え?花音がキレてた?ちょっと何言ってるか分からないですねぇ。


  シルフォードが必死で説得する中、俺と花音はのんびりと3人を待つ。


 「それにしても、顔が3人ともそっくりだな。正直顔のパーツだけで見たら、見分けがつかん」

 「三つ子なのかな?一卵性双生児だと顔が似るって言うでしょ?」

 「1つの受精卵が二つに分かれるやつだっけ?」

 「そうそう」


  3人の顔は本当にそっくりすぎる。それでも判別が着くのは髪型が違うからだ。


  シルフォードはストレートロング。ラナーと呼ばれた、シルフォードを「お姉様」と呼ぶ妹はショートボブ。トリスと呼ばれた、シルフォードを「お姉ちゃん」と呼ぶ妹はポニーテール。


  ここまではっきりと髪型に違いがあると誰が誰だか分かるが、全員全く同じ髪型だったら絶対に見分けがつかない。


 「ですがお姉様!!考え直してください!!」

 「そうだよお姉ちゃん!!人間は信用出来ないってば!!」


  まだまだ時間がかかりそうなので、俺と花音はこっそり着いてきてもらったマーナガルムをモフモフして待つとしよう。


 「マーナガルム。モフらせて」

 「私もー」

 「ゴルゥ」


  許可が降りたので、その柔らかな毛並みにダイブする。高級毛布よりもふわっふわな肌触りが気持ちよく、そのまま寝てしまいそうだ。


  コイツ毛並みの手入れとかしたところ見たことないんだけど、砂埃とか一切ないんだよな。見えないところでしっかり手入れとかしているのだろうか。


  俺達はマーナガルムをモフれて気持ちいいし、マーナガルムは俺達の撫でる手を堪能する。これぞwin-winってやつですよ。


  シルフォード達の言い合いは、実に30分も続いた。危ねぇ、このまま寝てしまうところだった。マーナガルム恐るべし。


 「説得できた?」

 「一応は.......ところでその狼は何?」

 「月狼マーナガルムって魔物。厄災級の魔物なんだけど知ってる?」

 「..........」


  口をあんぐりと開けて、シルフォードは固まる。シルフォードだけでは無い。その後ろにいるラナーとトリスも口を大きく開けて固まっていた。


  この反応を見るに、ダークエルフにも厄災級魔物っていえば伝わるんだな。昔アンスールに厄災級魔物とか言っても首を傾げられたことがあるから、もしかしたら通じないのでは?と思ったが、そんなことは無かった。


  国をもってたストリゴイとスンダルには通じたし、人間と交流があった種族は分かるかもな。ダークエルフも大魔王側に着く前は普通に人間と、交易してたみたいだし。


 「な、なんで厄災級の魔物がここにいる?」


  質問するシルフォードの声は、尋常ではない程震えていた。その顔は恐怖に満ちており、足はすくんでいる。


  これが、厄災級を見た時の普通の反応なのかもしれない。俺達は厄災級がどんなものか当時はよくわかってなかったし、最初に出会ったのがアンスールだったからな.......


 「なんでってそりゃ、俺の傭兵団の仲間だからな。先に言っておくが、ウチの傭兵団にいる人間は、俺とこのマーナガルムの尻尾に巻かれてスヤスヤ寝てる花音以外いないから」


  イスも見た目は人間だが、本来の姿はドラゴンだ。しかも、蒼黒氷竜ヘルとか言う厄災級の。


 「ホント?」

 「ホント、ホント。だから言ったじゃん。ウチの傭兵団は問題児ばかりって」


  世界的に見て、問題児で済ましていいのかは甚だ疑問だけど。


 「傭兵団?世界征服機関とかじゃなくて?」

 「世界征服とか興味無いから。俺達はあくまでお金を貰って戦争する傭兵団だから」


  ヴァンア王国も見方を変えれば、ストリゴイが俺達に依頼してるようなものだから。尚、報酬はヴァンア王国にあった金品だったけどね。


 「詳しい話は後だ。もう日が暮れかけてる。そっちの3人はマーナガルムの背中に乗ってくれ」


  3人の顔が面白いほどに引き攣る。


  凄いな。引き攣った顔もそっくりだ。


  3人は、物凄く怯えながらマーナガルムの背中に乗る。その顔はお化け屋敷を怖がる子供のように見えた。


 「そんなに怖いものかね。怯えまくったせいで、マーナガルムが少し凹んでるんだけど」

 「凹んでるマーちゃん可愛いねー。普通に可愛いと思うんだけど、私たちがおかしいのかな?」

 「ゴルゥ.......」


  俺たちから見れば、マーナガルムはちょっと大きい犬だ。人懐っこいし、俺が暇をしているとよく遊ぼうとしてくる。イスとも仲良くしてるし、恐れる要素がない。


  この程度でビビっていては、ファフニールとか見たら気絶するんじゃないのか?アンスール辺りなら大丈夫かな?


  今後ほかのメンバーとの顔合わせのことを考えると、不安になってくる。


  まぁ、まだ正式にメンバーになった訳では無いんだけどね。ほぼ強制的になってもらうつもりではいるけど。


  後で凹んでいるマーナガルムには、今日の俺のベットになってもらおう。モフモフで気持ちいいし、俺が寝てあげると機嫌が良くなるしな。


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