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本戦第一回戦第一試合エレノラ

 昼休憩も終わり、遂に本戦が始まった。


 この大会のメインイベントということで、会場は今まで以上の盛り上がりを見せ、この大会が終盤に近づいている事がよく分かる。


 かく言う俺達も、本戦が始まるのをワクワクしながら待っていた。


 「1回戦にエレノラ、3回戦にミミル、6回戦にライジン、7回戦にビビット、8回戦にブデが出てくるな。ビビットとブデは準々決勝で当たるみたいだ」

 「ブデとビビットは運がなかったねぇ。準決勝までは補習科の子達と当たらない可能性もあったのに」

 「そこは流石に仕込んでないからな。しょうがないと言えばしょうがない。聞くに言えば、他の3人は準決勝までは補習科と当たらないから、良しとしようじゃないか」

 「仕込んでたけどね」


 呆れ顔でこちらを見る花音。


 だって、できる限り教え子たち同士で潰しあって欲しくないじゃないか。


 少なくとも、俺は長い事教え子達が活躍して欲しい。


 闇の中に隠れられる子供達ってやっぱり便利だよね。諜報にはもちろんのこと、こういう仕込みにも使えてしまう。


 毎度の如く思うが、この揺レ動ク者(グングニル)を結成してから仲間に入れて1番良かったと思っているのはベオークだ。


 彼女がいなければ、俺達はやりたいことが出来なかった場面が多々ある。


 「ベオークって有能だわ」

『呼んだ?』

 「呼んだ呼んだ。ベオークは優秀だなって話」

『ワタシが優秀なのは当然。ジンは感謝するべき』

 「いつもありがとな。ベオーク」


 サラッと俺の影から顔を出すベオークの頭を撫でる。


 と言うか、当たり前のように出てきているけどベオークはこの学園にいないはずなんだがなぁ........


 イスが心配でこっそり着いてきているらしいが、イスの近くにいなくていいのか?


 まぁ、今回イスが暴走することは無いだろうが。


 ベオークは頭を撫でられて満足したのか、影の中に戻っていく。


 相変わらずマイペースな奴だった。


『さぁ!!やってまいりました!!武道大会本戦!!なんと今年は大波乱が巻き起こっています!!なんと、補習科の選手が五人も本戦に駒を進めているのです!!では、早速出てきてもらいましょう!!本戦第一回戦第一試合を戦う選手達です!!』


 実況がそう言うと、舞台にエレノラと対戦相手が出てくる。


 会場はわっと盛り上がり、実況は2人の紹介を始めた。


『その剣は可憐に舞い、蒼き花は水の魔法!!本戦でもその美しい花は咲くのか?!応用科四年生シュレナ!!』

 「可哀想に。エレノラ相手じゃなければ、まだ活躍できたかもしれないのにな........」

 「なーむー」


 お淑やかに観客に向かって他を振るシュルナ。彼女は、この後待ち受ける理不尽な爆弾魔の餌食となると、同情しか湧かない。


 やる気満々のエレノラが本気で潰しにかかるので、おそらく何一つできずに彼女は負けることになるだろう。


『対するは!!なんと、補習科から参戦!!圧倒的な実力で相手をねじ伏せてきたこの選手!!今日も相手の出世街道をぶち壊すのか?!“絶望の出世壊し(ディストピア)”が一角、補習科四年生エレノラ!!』


 かっこいい紹介だなおい。


 もう絶望の出世壊し(ディストピア)が二つ名みたいになってるじゃないか。


 あまりこの名前が好きでは無いエレノラは、渋い顔をしながらその手に持った爆弾をコロコロと転がして弄ぶ。


 若干イラついているのを見ると、この後の試合がどうなるかが容易に想像できた。


 可哀想な事である。


 向かい合ったふたりは、軽く何かを言い合った後少し離れて構えを取る。


 シュルナは剣を構え、エレノラは自然体で待ち受けた。


 「今から絶対煩くなるな」

 「ボンボンバクボンになるからねぇ。観客の中には鼓膜が破れる人も出るんじゃない?」

 「流石にそれなはいと思うけどな........観客の方がうるさいし」

 「確かに」


 既にエレノラが勝つと分かりきっている俺たちは、のんびりとこの試合を眺めることにする。


 天地かひっくり返ろうとも、この試合でエレノラが負けることは無い。


 「それでは、試合開始!!」


 学園長の開始の合図とともに、シュルナが動き始める。


 エレノラはそんなシュルナをつまらなさそうに見ながら、爆弾を放り投げた。


 ドガン!!


 なにかの投擲物だと思って剣で弾いてしまったシュルナは、その爆発に巻き込まれる。


 あまりにもう大きな爆発音は、会場の声援をも止めてしまった。


 「終わったな」

 「GGだねぇ。最初は下に避けるべきだったよ」


 何が起こったのか分からず、足を止めてしまったシュルナ。


 この時点で彼女の負けが決定してしまったのである。


 初撃の爆弾が当たると同時に、エレノラは上に向かって無数の爆弾を放り投げ絨毯爆撃の様な攻撃を繰り出していた。


 時間差で訪れる爆発の波は、エレノラにしか意識が行っていないシュルナには対応することが出来ない。


 ドドトドドドド!!


 と、爆発の波が押し寄せ、シュルナは爆煙の中に飲まれていく。


 勝負ありだ。あの爆弾の威力はかなりのもので、一撃食らうだけでも普通の人間なら死ねるものなのだから。


 爆発が止み、静寂が流れる中観客達は爆煙に飲まれたシュルナの安否を待つ。


 そして、爆煙が晴れると、そこにはボロボロになってピクリとも動かないシュルカが地面にひれ伏していた。


 「そこまで!!勝者、エレノラ!!」


 あまりに一方的すぎる試合。しかも、爆弾を用いた戦いに圧倒された観客達は、歓声を上げることすら出来ない。


 エレノラはそんな静寂の中、俺達に向かって手を振りながら舞台を降りる。


 「あまりに異質な戦い方に、観客が固まっちまったな........」

 「まぁ、気持ちはわからなくも無いけどね........」


 そんな中でも、実況は仕事を忘れることなく声を上げる。


 流石は実況。素晴らしい。


『ナ、ナ、何が起きたんだー?!爆発が起こったと同時に、全てが終わっていたぞ!!一体何が起きたのでしょうか?!解説願えますか?!』

『おそらく、爆弾を使ったのだと思われるが、まさか予選では見せなかった戦い方をするとは思わかなったな。一撃の威力もかなりのものだし、普通に1発貰うだけで勝敗が決まってしまうかもしれん』

『爆弾ですか。確かに何か投げる動作をしていましたね』

『あれがエレノラ選手の本来の戦い方だろうな。なかなかにえげつないやり方をする』


 的確にエレノラの攻撃について解説をする解説席。


 実況は、観客に寄り添った感想を言いながら場を繋いでいた。


 「解説の人、目はいいな」

 「まだ分かりやすい方だからね。エレノラが本気を出した時もこれができるかは分からないよ」

 「だな。あの極小爆弾とか見えるわけが無いし。戦ってる俺達ですら、いつ飛んできたのか分からないやつとかあったからな」


 俺はエレノラ達を応援するついでに、実況解説がどこまで補習科の生徒達についていけるかと言う楽しみを見つけるのだった。

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