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第一回戦第四回戦メレッタ

 時は少し遡り、ブデとライジンが第一回戦を突破した頃。


 一年生の大会に出ていたメレッタは、多くの人の注目を集めていた。


(すごい見られてる)


 人々がメレッタを見てしまうのも無理はない。メレッタの背中に担がれた巨大な鉄の塊は、それだけ目立つのだ。


 白銀に輝き、細部まで装飾された2本の円柱の鉄。


 大きはさメレッタよりも頭1つ大きく、普通に歩くことすら困難に思える程。


 そんな巨大な武器を担ぎ、控え室で自分の番を待つメレッタを見ない方が無理であった。


 「人気者ね。誰もがメレッタを見ているわ」

 「おー、メレッタ人気者なの。みんなメレッタの虜なの」

 「二人とも絶対にこの状況を楽しんでるよね?顔がにやけてるよ」


 メレッタの応援に来たリーゼンとイスは、そんな視線を集めるメレッタをニヤニヤしながらちょっかいをかける。


 メレッタは少しウンザリしながらも、二人なりに緊張を解してくれているのだと解釈した。


 否、そう解釈しておくことにした。


 実際は、二人ともただ単にこの状況を楽しんでいるだけであり、そこそこ長い付き合いのメレッタもそのことはよく分かっている。


 だからこそ、ウンザリとした顔をしているのだ。


 「変なこと言わなきゃ良かった........」

 「この武器にしたいって言ったのはメレッタだからね。その場のノリと勢いで決めた自分を恨みなさい。普通に使いこなしてる上に、メレッタの異能にも合ってるからいい選択だったとは思うけど」

 「私でも本気の一撃を食らうと少し痛いの。普通の人間相手なら、粉々に潰れるから凄いと思うの!!」

 「それ、褒めてる?確かに私の異能にはあってるけどね」


 メレッタがこの武器を選んだのは、その場のノリだ。


 ある程度基礎を積み上げてきた段階で、武器をどうするかとなった時に、建築が好きなら丸太とかで戦えば?とイスが冗談半分で言った事にメレッタが乗ってしまったのだ。


 結果として、メレッタの武器はこの巨大な金属の棒となる。この武器を作ったくれた職人曰く、この武器の名は“破砕棍”らしい。


 どこに棍棒要素があると突っ込みたかったが、それ以外にふさわしそうな名前もなかったのでメレッタは武器申請の際に“破砕棍”と書いていた。


 もちろん、そんな武器の名前など聞いたことがない受付担当の教師は首を傾げたが、今となっては納得の名前である。


 「それにしても運が良かったわ。1回戦でレナータと当たるなんて。メレッタが叩き潰す前に敗退されたら困るもの」

 「その通りなの。もし、メレッタと当たる前に敗退してたら、私がこっそり叩き潰してたの」

 「イス、物騒だね。リーゼンが言う通り、1回戦で当たるのはラッキーだけど」

 「なるべく痛みを長引かせながら戦いなさい。手足をへし折るぐらいはやってあげないとね」

 「ファイトなの」


 お泊まり会や毎日の遊びでさらに仲が深まった三人は、お互いを呼び捨てし合うにまでなっている。


 拳を突き出しメレッタの健闘を祈るイスとリーゼンにメレッタも拳で応えると、その巨大な“破砕棍”を持って会場へと向かうのだった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


 第3試合が終わり、メレッタの番が回ってくる。


 メレッタはその巨大な武器を闘技場に下ろすと、会場は今までにないほどザワつく。


 剣や杖、槍等はまだ分かるがバカでかい鉄の棒を持ってきたとなれば観客も困惑するだろう。


 対戦相手であるレナータも、その巨大な鉄の棒を見上げて固まってしまっている。


 が、すぐに気を取り直して腰に提げたレイピアを構えた。


 「........その馬鹿でかいので戦うのかしら?ドブネズミの考える事は分からないわね」

 「そのドブネズミに今から負けるんだよ。精々死なないように頑張ってね」

 「あの糞ガキの腰巾着風情が良くもまぁ調子に乗れるわね。串刺しにして焼き殺してやるわ」

 「所詮は親の力でしか威張れない三下風情が良くもまぁ調子に乗れるね。叩き潰してゴブリンの餌にでもしてあげるよ」

 「........殺す」

 「出来ないことは口にしない方がいいよ?負けた時の言い訳でも考えておいたら?」


 イス仕込みの挑発をするメレッタ。


 プライドが高いレナータは、顔を真っ赤にしながらレイピアを持つ手に力を込める。


 レナータはスピード型の近接戦闘を得意としている。見るからに鈍重そうな武器を構える(正確には両脇に立てている)メレッタに捉えられる訳が無い。


 「これより、第一回戦第四試合、普通科メレッタ対応用科レナータの試合を始める!!」


 手を振り上げる審判。


 メレッタは腕を組み仁王立ちで相手を待ち構え、レナータは姿勢を低くしてレイピアを構える。


 「それでは、試合開始!!」


 手が振り下ろされると同時に動いたのはレナータだ。


 すばやく距離を詰めると、渾身の突きをメレッタの能天気目掛けて放つ。


 明らかに殺す気満々の一撃だった。


 メレッタはこれを首を曲げることで回避。隙だらけのレナータの腹に、軽く蹴りを入れる。


 が、レナータは左腕で蹴りをガードし距離を取った。


 「少しはやるみたいね。ドブネズミにしてはだけど」

 「んー、遅いね。最初は撃たせろって言ってたから撃たせたけど、これなら余裕かな」


 メレッタはそう言うと腕組みを解いて拳を握る。


 そして、虚空に向かって拳を放った。


 「は?頭でもおかし──────────!!」


 何も起きないことを煽ろうとしたその直後、物凄い勢いで飛んでくる鉄の棒をレナータは紙一重で避ける。


 真横を通り過ぎた破壊棍の風圧に冷や汗を流しながら、レナータは闘技場の壁に穴を開けた鉄の棒を見る。


 「よそ見厳禁」

 「くっ!!──────────ゴフッ!!」


 続けて2発目。


 レナータはこれも何とか回避しようとするが、途中で軌道の変わった破壊棍に吹き飛ばされた。


 「“念動力(サイコキネシス)”それが私の異能だよ。ほら、次」


 受身を取り、何とか体制を建て直したレナータに容赦なく迫り来る破壊棍。

 

 魔力を消耗し、生命以外の物体を操ることが出来るメレッタの異能はこの巨大な鉄の棒と相性が良すぎた。


 何度も何度も繰り返される攻撃。


 一撃でもまともに喰らえばタダでは済まないことを本能的に感じたレナータは、死ぬ気で避け続ける。


 しかし、限界は訪れるものだ。


 避けきれずレナータの肩を鉄の棒が抉っていく。


 ゴキィと鈍い音がレナータの耳に響き、それと同時に激痛が走る。


 「あ"ぁぁぁぁ──────────」

 「五月蝿い」


 悲鳴を上げるレナータに、容赦なく追撃を食らわすメレッタ。


 その視線は冷たく、レナータの目には淡々と相手を壊す機械のように映った事だろう。


 左足、右手、左手、右足。


 審判が止めるよりも早く、メレッタはレナータの体を壊していく。


 そして、悲鳴すら上げられなくなって地面にひれ伏したレナータに近づき、髪を掴んで持ち上げトドメの一撃を刺そうとした。


 「そこまで!!勝者メレッタ!!」


 が、これ以上は不味いと感じた審判が強引に試合を止める。


 メレッタはレナータをボコれてスッキリしたのか、レナータの髪を放すとそのまま舞台を降りていった。


 「後はリーゼンに任せよっか。今までの罪を罰で受ける時だよ」


 その呟きは、誰の耳にも届かない。

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