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初日終了

 サラサ先生との顔合わせも終わり、授業についての話に移る。


 とは言っても俺と花音は所詮素人。リーゼンやダークエルフ三姉妹達等に戦い方を教えてきたが、教師としての教え方は全く知らない。


 という事で、明日の授業はサラサ先生にいつも通りやって貰うこととなった。


 余談だが、“補習科”の授業は毎日ある。


 基礎科などの授業は、教師の兼ね合いもあって一日無かったりするのだが、補習科はその科目ができない子のためにやる授業。


 勉強然り運動然り、毎日やらなければ己の糧とならない。


 補習科は、全ての日程が終わった後にやらされる授業なのだ。


 高校も成績が悪かったりしたら、夏休みに態々授業を受けに学校まで行くからな(高校によって違うだろうが)。それと同じようなものだろう。


 俺は、追試験とか受けたことないから分からんが。


 そんなこんなで、日が沈み始めた夕刻。ようやく家に帰ってきた俺達を出迎えてくれたのは、元気いっぱいのイスと何故か居るリーゼンお嬢様達だった。


 「おかえりなの!!」

 「ようやく帰ってきたわね!!既に天使........じゃなくてシュナやラファもいるから後はお父様達だけね!!」

 「おい待て。さも当然のように家に転がり込んでるが、なんでいるんだ?しかも、メイドさん達までいるじゃねぇか」

 「入学祝いと先生達の新居を祝ったパーティーよ!!最初は私の家でやろうと思ったんだけど、どうせなら先生の家でやろうと思ってね。大丈夫。ちゃんとシュナとラファの許可は取ってるわ!!」


 一応、家主は俺なんですが........


 そう思いつつ黒百合さんを見ると、黒百合さんは目を輝かせながら楽しそうに俺に話しかけてくる。


 イスの真の姿を見た時ような目だな。キラキラと眩しすぎて、目を瞑ってしまいそうだ。


 「ごめんね仁君。でも、私、誰かを家に呼んでパーティーなんでしたこと無かったから........」

 「いや、別にいいんだけどさ」


 前の世界の黒百合さんは、あまりに高嶺の花すぎて誰かと遊ぶとか言う話を一切聞いたことがなかった。


 黒百合さんが話す時は、先生に当てられた時だけ。それ以外で声を聞いたことは殆どない。


 しかし、この世界では違う。


 黒百合さんが意外とポンコツで、ロマンの分かる子だと俺達は知っている。


 リーゼンお嬢様も、黒百合さんに懐いているので誰かに話しかけられることが嬉しいのだろう。もちろん、下心無しで。


 異世界に来てから青春を楽しむ黒百合さんを見て流石に怒る気にはなれない俺は、仕方がないとばかりに肩を竦めた。


 「まぁ、黒百合さんが楽しいならいいか」

 「そうだねぇ。あんなに楽しそうな朱那ちゃんは滅多に見ないよ。前の世界なら尚更ね」

 「遅めの青春か。多分、イス以上に学園生活を楽しみにしてるんだろうな」

 「だろうねぇ。神聖皇国は朱那ちゃんを“天使”として見る人が殆どだけど、アゼル共和国の人達は“黒百合朱那”として朱那ちゃんを見てるだろうからね。朱那ちゃんからしてみれば、気を使われない自由な場所なんでしょ」

 「学園生活も上手くいくといいな。サラサ先生とは仲良くなれそうだ」

 「朱那ちゃん。コミュ力も結構高くなってるから、多分行けると思うよ」


 今になって青春をする黒百合さんの姿を見ていると、家の外から幾つかの気配がやってくることに気づいた。


 全員知っている気配だ。しかも、つい先日一緒に飲んだ奴らの気配である。


 「リーゼンお嬢様、随分と人を呼んだみたいだな。てっきり後はリーゼンのご両親だけくるのかと思ってた」

 「私もコレは予想外。エリーちゃん達も来たんだねぇ」


 家の扉が開かれると、店でよく飲む面子がやってくる。


 先頭は案内役のサリナ。その後ろにエリーちゃんとラベル、リックにメルの姿が見えた。


 「お嬢様。エリー様方をお連れしました」

 「よく来たわね!!ようこそ!!先生のお家へ!!」


 それ、俺のセリフじゃね?


 俺がそう思っているとエリーちゃん達はズカズカと家の中に上がり、内装を確認する。


 ドッペルがこの家に会うように作った家具を見て、彼らは驚いているようだった。


 「中々センスがいいわね。ジン、貴方が選んだの?」

 「いや。団員の1人にこう言うのが得意な奴がいてな。そいつに頼んだ」

 「へぇ、その団員さんはかなりセンスがあるわね。私の店をリニューアルする時に変えてもらいたいわ」

 「リニューアルする予定があるのか?」

 「今のところは無いわ。でも、いつかはすることになるからね。前はリック達に手伝ってもらったのだけれど、ラベル以外はこう言うセンスが絶望的なのよ」


 エリーちゃんがそう言うと、隣で話を聞いていたラベルが笑う。


 「あははは。僕はともかく、エリーは個性的が過ぎるし、リックは適当。メルに至ってはバランスを全く考えないから、亜空間にいるんじゃないかって錯覚するぐらいだからね」

 「それは酷いな。学園で芸術も学ぶべきだったな」

 「全くだよ。お陰で僕が全部指示を出す羽目になったのさ。大変だよ?みんな人の話なんて聞かないからさ」


 あぁ、うん。想像出来てしまう。


 我が強すぎるエリーちゃんは言わずもがな。リックはちゃんとしてそうだが、メルはそもそも話を聞いていなさそうである。


 飲んでる時も、おじいちゃんかな?と思うぐらい話を聞いてないし。


 「失礼だなラベル。俺はちゃんと話を聞いてたぞ」

 「話を聞いている“だけ”で、言う通りに机を並べたりしなかったじゃないか。リックは適当過ぎるんだよ。魔物の解体をするぐらいしっかりとやって欲しかったさ」

 「........次やる時は善処しよう」


 それ、絶対やらないやつや。“行けたら行く”ぐらいの信頼度しかない。


 ラベルも、コレは無理だなと悟ったようで小さく笑った。


 「あはは。その時はジン君達にも頼もうかな。人が多い方が助かるからね」

 「その時は呼んでくれ。教師をしている間は基本、この家にいるだろうからな」

 「そうさせてもらうよ」


 ラベルはそう言うと、忙しなく動くメイド達の手伝いをすると言ってキッチンに向かって行った。


 あぁいう気使いが素でできる辺り、ラベルはモテるんだろうな。


 「それにしても、あのリーゼンお嬢様も学生か。時の流れは早いな」

 「幼い頃から知ってるんだっけ?」

 「まぁな。かれこれ6年近い付き合いだ。近所のガキを見てる気分だよ」


 リック達とリーゼンお嬢様の付き合いは長い。小さい頃からよく街に繰り出していたリーゼンお嬢様が、その異能()によって引き寄せられたのがエリーちゃんの営む店だ。


 リックやエリーちゃん達からすれば、我が子を見ている気分になるのかもしれない。


 「そういえば、リーゼンの親とは面識があるのか?家に来るみたいだが........」

 「........無いな。やっべ。メルにしっかりと言い聞かせておかないと。アイツ、相手が元老院であろうがお構い無しだからな」


 リックは割とガチで焦った表情をしながら、味見と言って料理をつまみ食いするメルの元に走っていった。


 もうリックは完全にメルの保護者だな。


 「イス、楽しそうだねぇ」

 「そうだな。笑顔が眩しすぎる」


 俺は、いつの間にかどっか行って戻ってきていた花音の言葉に頷くのだった。


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