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普通ってなんだろう(哲学)

  拠点が決まり、新しく一体メンバーが増えた。これでメンバーは19になる。その殆どが魔物の訳だが。


「拠点ができたのはいいけど、俺達の生活する家が欲しいな」

「そうだねー。どうせなら森の奥にある不気味な家って感じのが欲しいよ。ロマン感じない?」

「感じる。めっちゃ感じる」

「私もお家欲しい!!パパとママと一緒に住むの!!」

「確かに、雨風凌げるだけの洞窟じゃ味気ないわねぇ。折角あの島から出てきた訳だし、少しは豪華に住みたいわ」

『ワタシはジンの影が家だから、特に要望なし』


  拠点が決まったら次は住居だ。しかし、家を作る知識など俺達にはない。ここに職人を呼ぶ訳にも行かないし、どうしようか。


  そう悩んでいると、ドッペルゲンガーこと、ドッペルが少し自慢げに俺達に話しかけてきた。


「フフフ、ここはワタシの出番のようですネ。家づくり等の職人の顔を持っているノデ、ワタシが作って差し上げましょう。材料さえ用意出来れバ、3日と経たずに作れますヨ」


  まじか、流石はドッペル。使える顔は多いんだな。


  職人問題はあっさりと解決したので、次は材料だ。木はここらにある森を切り倒せば問題ないだろうが、道具がいるな。ノコギリとか、カンナとか。


  幸い、近くに街がある。そこで揃えれるものは揃えてしまおう。金は.......足りなかったらシュレクスの実を少し売ればいいか。手持ち大銀貨8枚ならある。日本円にして約80万。この世界で、4人家族が2ヶ月生活出来る金額だ。


  物価は分からないが、これだけあれば一通りは買えるだろう。


「助かるよ。ドッペル。俺も流石に建築の知識はないからな。家を建てる時は手伝うよ」

「イエイエ。上に立つものが働きすぎてはなりまセン。材料や工具の買い出しは、団長がやるのですカラ、家づくりは我々にお任せヲ」

「.......それも顔の知識か?」

「エェ。上に立つものに必要なのハ、頭の良さデモ、強さデモ、ありまセン。必要なのハ、この人について行きたいと言うカリスマ性なのですヨ。団長はそれがあるのですカラ、堂々と命じればいいのデス」

「俺にカリスマ性があるのかねぇ」

「ありますヨ。でなけれバ、こうしてワタシ達は団長について行ってませんヨ」

「そうであるぞ。ジンよ我が強さだけの人間に従うとでも?」

「思わないな」


  ファフニールが、強さだけで人格最悪の奴に付き従うとは思えない。例え、そいつに負けたとしてもだ。そう考えると、俺にはカリスマ性があるのか?......コレについては深く考えるのは辞めておこう。なんかどツボに入りそうだ。


「後、必要なのは情報だな。特に11大国の動きが知りたい」

「その前に、ここがどこなのか把握しないとね」

「そうだな花音。最悪ここらかおさらばしなければならないかもしれない」


  アスピドケロンのいる場所が何処なのか、しっかりと記憶しておけばよかった。本で読んだ時、へぇーとしか思わなかったからなぁ。


  アスピドケロン本人にも聞いてみたが、どうやら分からないようだ。まぁ、期待してなかったが。


  という訳で、情報収集だな。今俺達がどこの国にいるのか分からん。600以上ある国全てを覚えている訳では無いが、必要最低限の国の場所と名前は覚えているのでそれを頼りに何とかしよう。


  この情報収集は、試験的にベオークとその子供たちにやらせてみようと思う。失敗しても大して問題ないだろうしな。


  そうと決まれば早速行動開始だ。今回街に行くのは、俺と花音、イスとベオーク&その子供たちだ。それと、連絡要因として念話蜘蛛(テレパシースパイダー)を連れていく。


  この蜘蛛はアンスールが作り出した蜘蛛であり、この蜘蛛は母体であるアンスールに念話を飛ばすことができる。


  この蜘蛛の念話距離限界は無く、どこでも母体であるアンスールに念話を飛ばすことが可能。この蜘蛛を中継に挟めば、遠くでも会話出来ると言うわけだ。


  戦闘能力はあまり高くないが、小さく素早い。さらに念話で連携をとり、噛み付いて神経毒を流し込んで相手を動けなくしてから食す性質がある。中級魔物に分類されている魔物だ。


  小さい為、街の中に入りやすく、被害が出やすい魔物でもある。


  この便利な蜘蛛はメンバー全員に渡しており、緊急で何かあった場合などに使われる。


  それと、メデューサが俺達に護衛として刺青黒蛇(タテゥースネーク)を付けてくれた。


  刺青のように右の頬から胸にかけて描かれた黒い蛇は、一見動かなそうに見えるが、人を喰らう凶悪な魔物だ。


  様々なものに模様として入り込み、近くによってきた獲物を喰らうハンターであり、そのひと噛みは人の腕程度なら噛みちぎれる強靭さを持つ。


  しかも、厄介なのが蛇以外の刺青系統魔物も数多く存在するため、対策が取れないのだ。


  世の中にはドッペルゲンガーのように完全に人間に化ける者もいるから、そこら辺の対策は諦めた方がいいかもしれない。


  ちなみに刺青黒蛇(タテゥースネーク)は上級魔物だ。コイツ一体で村程度なら滅ぼせてしまう。


「.........なんと言うか、厨二病感が凄い増したな」

「黒コートに、穴あきグローブ。さらに手の甲と背中には揺レ動ク者(グングニル)のマーク。そして頬から胸にかけて蛇の刺青。凄いね仁。前の世界でこんな服装毎日してたら通報物だよ」

「あぁ、黒歴史製造機君が俺達よりもっとはっちゃけていることを祈ろう。きっと彼ならやってくれるはずだ」


  黒歴史製造機君、君の成長を俺は祈っているぞ。主に悪い方向で。


  師匠から貰った黒のコートだが、揺レ動ク者(グングニル)を結成すると決めた時からアンスールに頼んで背中に刺繍をしてもらった。


  アンスールは裁縫などに昔ハマっていたようで、服を色々と作っていたらしいのだ。スンダルのドレスはアンスールが作ったと言う。めちゃめちゃクオリティ高いわ。


  イスの服も、アンスールに作ってもらった。イスはドラゴンにもなるので、ドラゴンになった際に破れたりしないか心配だったが、イスの魔力を織り込みながら作ることでドラゴンに変身した際は服は消えるようになった。もちろん人間に戻ると服を来た状態である。ご都合主義かな?


  そんなイスの服装は俺と花音と全く同じものだ。アンスールは服に関してはかなり研究していたらしく、俺達と全く同じものを作り上げてしまった。衣服に関しては、アンスールがいれば問題ないだろう。


  唯一違う点は、背中にある揺レ動ク者(グングニル)のマークが右腕にある事だ。


  これはアンスール曰く、団長と副団長は先頭に立って仲間にその大きな背中を見せるからだそうだ。ちょっと何言ってるか分からなかったが、要は特別にしたかったのだろう。


  そんなアンスールも黒コートを着ている。と言うか、人型の魔物たちは全員黒コートを着ている。ストリゴイは元々着ていたので別だが、それ以外は、何故か皆俺達と同じ黒コートを着ているのだ。


  揺レ動ク者(グングニル)の象徴はこのケルト十字を逆さまにしたマークなんだが、黒コートも象徴になりそうだな。

 

「ねーパパ?行かないの?」


  準備を終えたイスが、俺を急かしてくる。イスにとっては初めての人間の街だ。ワクワクしているのがよくわかる。


「今行く、ちょっと待っててくれ」


  そう言って、俺はワイワイ話しているメンバーに向かって声を張り上げる。


「総員!!傾注!!」


  俺の声で、ピタリと会話は止み、全員がコチラを向く。なんか軍隊って感じがする。


「今から俺達は人間の街へ行く。その間は自由時間だ。好きにしていい。ただし、気分で国を滅ぼすとかは辞めてくれよ?絶対面倒事になる。それと、念話蜘蛛(テレパシースパイダー)は持っていけ。もし何かあったら連絡をいれろ。いいな?」


  全員が黙って頷く。ちょっと不安な奴もいるが、流石に国を滅ぼすとかはやらないだろう。そう信じたい。


「よし、なら解散だ!!俺からの緊急集合の時だけは絶対に集まれ!!そして、俺の許可無しに死ぬな!!もし俺の許可無しに死ぬ様な愚か者がいたら、俺達が地獄に言った時覚えておけよ!!血の海を24時間360日休憩無しで泳がせた後、そのヘトヘトな身体を俺がシバいてやる!!分かったな!!」


  各々が返事をしっかりと返したのを確認した後、俺達はここから1番近い街へ向かって出発した。


  イスがドラゴンになって飛んでいこうとしたので、あわてて辞めさせて、のんびり歩いていこうとする。


  本当は走ってもいいのだが、せっかくあたらしい環境に来たのだ。観光気分で歩くのもいいだろう。


「こうしてみると、如何にあの島の森が異常だったがわかるな」

「2年近く過ごしてきたからアレが普通になっちゃったけど、普通はこんな感じだよね。大分感覚が狂っちゃってるねー」


  今は街道へ出る前の森の中を歩いているのだが、あの島と比べると段違いで歩きやすい。


  木の根が複雑に絡み合って地面から顔を出てないし、人を食べるような危険な植物も無い。当たり前のように上級魔物が出てくることも無ければ、空からドラゴンが襲ってくることもない。


  天国かここは。


  何体か魔物の反応はあるが、俺の探知をすり抜けてくるような奴で無ければ、相手にならない。こんなに歩きやすい森は、神聖皇国で魔物狩りをしていた時以来では無いのだろうか。


「うーん......ドラゴンさんとかいないね。なんにも無いつまらない森?」

「いいかいイス。普通の森は、ドラゴンなんてそうそう出てこないんだよ。あの島の森がおかしいの」

「そうなの?」

  「そうなんだよ。散歩気分で森の中を歩けば、上級魔物がひょっこり出てくるような魔境は、普通の森とは言わないんだよ」

「ふーん。変なの」


  あの島で生まれ育ったイスにとって、“普通”はあの島であり、この大陸の普通はイスにとっての未知である。これを機に、イスには色々とこの世界のことを知ってもらいたいものだ。


  まぁ、俺もこの世界に来て半分以上はあの島で過ごしてるから、人の事言えないんだけどね。

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