彼女と僕の一日
「…あ」
何か強い視線を感じる
「ん?」
その視線の主、さっきまで目の前で本を読んでいた彼女がこちらを凝視していた
「なん――むわっ」
ガシッと頭を掴まれた
「…ちょっと動かないで」
そう言って僕の前髪を束ね、それを少しづつかき分けている
「なに?」
なんだかよくわからない僕
「…もうちょっと、じっとしてて」
真剣な表情で毛先を凝視している彼女に言われた
「ん」
言われた通りじっとする
「………」
真剣表情で前髪をかき分けた彼女が、指先で器用にその内の一本を摘んだ
「なに?どしたの?」
ぴっと弱く髪を引っ張る
「これ」
彼女は何かを手のひらにのせ、それを僕に見せた
「………?」
何も乗ってない
「…枝毛」
よく見ると、非常に細い毛がのっていた
「そんな細いのよく見えたね」
「…えへん」
胸を張る彼女
「ありがと」
素直に感謝しておく
ふむ、枝毛…か
もう無いかなー、と前髪を自分で弄る
「………」
するとそれを見た彼女がむくっと立ち上がった
「ん?今度はどしたの?」
すると彼女は僕の後ろに回り込んだ
「え?え?」
ガシッと、それほど強くはないが頭を後ろから掴まれ、固定された
そして
「……うゎ」
さらさらと手櫛が入る
「…ほかに、枝毛がないか見てあげる」
そう言うと、手櫛を入れたり髪の毛の先を摘んだりと頭や髪がいじられる
「…………」
なんて言うか
うん
結構気持ちいい
頭が撫でられると言うか、自分じゃない誰かに髪、と言うか頭を触られるとこそばゆい感じがするが、彼女の優しい手つきに、何となくい気持ちいい感じがして、思わず
目が細まっていく
「……………」
「……………」
僕はあまりの心地よさに無言でその感触を楽しみ、彼女は真剣に、だけど優しく僕の髪を梳いてくれる
「…………」
「…………」
なんだかとってもゆるゆるとした気分になってきた
頭を撫でられるのが好きな人の気持ちがよく分かる
そんな行為が数分間続き
「……終わり」
最後にもう一回手櫛で髪を整えると彼女の手が離れた
「……ありがと」
名残惜しいことこの上ないが、それでも満足な気分があるのでよしとしよう、うん
「……なんていうか、うん、すごく、気持ちよかった、というか、心地よかった、ありがと」
「…えへん」
とまた胸を張る彼女、そして
「……ん」
ずいっと頭を出してくる彼女
「えーと?」
「…私にも」
………
むくっと立ち上がっ彼女は今度は僕に背中を向けた
「…………」
足を崩して床に手をつき、準備万端とばかりにどしっと構え、背中がいつでも来いと言っている
「りょーかい」
「………ん」
彼女の長い髪の毛に手を伸ばす
さらさらで綺麗な彼女の髪、この髪に枝毛なんてあるのかな、と思いながら彼女の髪を手の平でできるだけゆっくりにそして彼女がしてくれたように優しく梳いていく
「……どう?」
「………」
何も言わない彼女だが、雰囲気がもっとやれ、と言っている
「…………」
「…………」
ちらっと彼女の横顔を見ると、目をつむり気持ち良さそうな顔をしている
「……気持ちいいよね」
「…………うん」
真面目に彼女の髪の枝毛を捜すが、見つからない
「………」
「………」
彼女の長い髪を人通り見終わった
そしてさっき彼女がしてくれたように手櫛で綺麗に整え
「はい、終わり、ん?」
「………………」
彼女が今度はこちらを向いた
ぼーっとしている彼女と正面で向き合う
「ん?どし――わっ」
すっと彼女が前に倒れた
「だ、だいじょうぶ?」
と思ったら額を僕の胸に押し付けて来た
「…………もう一回」
「…………」
………ちょっとだけ顔を離して、じっと、上目使いに見上げてくる
「…………」
「……ん…わかった、じゃあ、後ろ向いて」
「…………このまま」
………
動かない彼女
うん、無理に動かそうとも思わないんだよね
「………」
「………」
…………
ひとしきり考え
………
「……まったく、わがままだね」
彼女の頭に手を伸ばし、髪を梳いていく
「………えへへ」
さっきとは違う向きに内心やりにくさを覚えながらも、気持ちよさそうな彼女の顔に嬉しさを感じ、彼女の髪を梳いていく
そんな彼女と僕の一日
ふと思いついた事です。
なんとなく書いてみたくなって書いたので、下手かもしれません。
でも楽しんで頂けたら幸いです。