黄山 玲央(1)
俺はアカネが好きだ。いつからかなんて知らねえ。いつの間にか、好きになっていた。
アカネはモテる。その理由は女らしい美貌を持っているかららしい。そうか? 俺はそう思わねえ。ただ一ついうなら、そうだな……強いってことか。その強さに惚れちまったのかもしれねえ。近いうちに振り向かせてやる。絶対にな。
***
俺は今、公園でアカネと二人きりだ。これは、絶好の機会なんじゃないかと思った。今ここで、告れば勝利だ。
俺はアカネに気持ちを伝えた。答えは曖昧だった。アカネに惚れるのは百年早いらしい。ま、マジか。でも、諦めねえ。アカネが好きなアレを渡せば振り向いてくれるはずだ。
数日後。アイツに渡す時がやってきた。実をいうと、俺はアカネが好きなものを知っている。ショートケーキだ。苺が好きだからという理由らしい。以前言っていたことを俺は忘れない。忘れてたまるかよ。
兄貴と行ったケーキ屋で悩みに悩んだ末に買ったんだ。美味いに決まってる。兄貴にアカネが喜ぶだろうと助言をもらった。兄貴、ありがとな。
そんなことはいい。今はアカネに渡すことだけを考えろ。
見るからに中身がケーキだって分かってしまう箱だけど、俺はアカネに渡した。最初はアカネに受け取ってもらえるか不安だった。けど、受け取ってもらえた。
心の中で小さくガッツポーズをした。多分、嬉しさを抑えきれてないかもしれない。それでもいい。受け取ってもらえたんだからな。
俺は食べることが好きだ。甘いもんが好きな男がどのくらいいるのか分からねえ。俺は好きだ。正直、アカネに渡したケーキだって少しもらいたい。けど、ここは我慢だ。なんつったって、アカネの為に悩んで買ったんだからな。だから、俺はアカネに食べるか聞かれても、断った。意外な顔をされたが、いいんだ。
その後、アカネと二人きりに中々なれない。柚葉ちゃんがいることが多い。ま、いいんだけどさ。いや、良くねえよ。そんな感情を抱いているせいである事が起きた。
柚葉ちゃんが先に帰ると言い、アカネに送っていけと言われた。俺は気付かないフリをした。それがいけなかったらしい。代わりにアカネが柚葉ちゃんを送ると言い出した。俺が仕方なく送ろうとした時、止められた。帰れと言われ、一人取り残された。やってしまった。
ったくよ、ついてないな。仕方なく一人で帰ろうとした。その瞬間だった。
「おい、黄山じゃねえか。ちょうどいいところにいて助かるぜ。へへへ」
やべえ、最近アカネのことばかりで浮かれてた。けど、アカネがいなくて助かった。俺は奴を睨みつけた。
「お、なんだ。やるか? ヤンキーぶって調子乗ってるもんな。かかってこ、ぶ」
奴が言い切る前に殴ってやった。隙を与えすぎだろ。まあ、いい。俺は奴を残してその場を颯爽と立ち去った。
髪染めて、ピアスをしてから、嫌な奴に絡まれることが多くなった。アカネと一緒にいれば見逃してくれてたのにな。
中二くらいからだから、かれこれ四年くらいか。俺は絡まれるためや目立ちたくてこの格好になったわけじゃねえんだけどな。兄貴やアカネ、大事な人を守りたくてなったんだけど、勘違いする奴が多すぎて嫌になるな。まあ、仕方ねえか。
「おい、黄山。俺の仲間やってくれたじゃねえか。どうしてく、」
「うるせえな。黙れ」
俺はまた殴ってやった。いい加減にしてくれ。ただ帰るだけじゃねえか。
俺は家に帰ろうとして、何度も絡まれた。