紅 茜音(2)
私は聞いた。柚葉ちゃんはレオのことが好きなんだってこと。告白された私が思うのも変な話だけど、彼女のことを応援したいなと思った。
その一方で、こんな可愛い子にレオが釣り合うのかとも思っていた。言ってしまえば、レオは口悪いし、見た目がヤバいやつだし、考えが子どもらしいし……。彼女にはもっと素敵な男性に出逢えるんじゃないかと考えてしまうのよね。
*
「おい、アカネ聞いてんのか? もしかして、どっか悪いとかか?」
ふと声が耳に届いた。と、ある事に気付いた。いつもなら私のことを気に掛けたりしないのに、気に掛けている。
あの時、告白された時から明らかに態度が違うのよね。私に対して優しかったり、私の周りに男どもが集まってきたら、守り体制に入ったり、私としては接しづらくなっているところはある。
「おい、大丈夫か?」
「うっさいわね。大丈夫よ。アンタ気にしすぎ」
私がそう言うと、レオは攻撃を喰らったように弱々しい顔をした。なんでそんな顔するのよ。やっぱり、おかしい。
「私、帰りますね」
唐突に柚葉ちゃんが言葉にした。そういえば、私たち公園に居たんだった。いつの間にか夕日の橙色の光が差していた。時を忘れて話すってこういうことなんだ。そんなことを思っていると、柚葉ちゃんがその場から居なくなっていた。レオはまだこの場にいる。って駄目じゃない。
「アンタ、柚葉ちゃんを送って行きなさいよ。女の子一人で帰らすとかないわ」
すると、不機嫌そうにして、動こうとしない。ったく、そこは馬鹿なんだから。
「もういい。私が送って行く。アンタは帰りな」
「あ、俺がい、」
「いい! 帰って!」
言葉を遮って、強く言い返すように言うと、私はその場を後にした。ったく、私にだけ優しくしちゃって、本当アイツどうしたのよ。
そうして、私は柚葉ちゃんと歩き始めた。
「茜音さん、玲央さんと仲良いですね」
「は? 仲良くなんてない!」
あ、思わず大きな声で叫んでしまった。謝ろうと、彼女のほうを振り向く。彼女は笑っている。次の瞬間、思ってもいない言葉を聞いた。
「やっぱり、茜音さんに敵わないです」
あー、そういうことなんだ。全てを悟った気がした。この子、レオのことが……。
「柚葉ちゃん、レオのことが好きなんだね」
「え? 私、なんか変なこと言っちゃいましたか?」
彼女は動揺している素振りを見せた。彼女の言葉に私は笑ってしまった。
「言ってた。私に敵わないって。大丈夫。頑張れ」
「え、はい」
私たちは言葉を交わして、笑いあった。眩しい夕日に照らされながら。
茜音視点は終わりです。