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黄山 怜太(1)

 俺はずっと気になってたんだ。好きな子がずっと俺の弟を見ていたことを。その理由が弟のことが好きなんだって分かった時、なんだか寂しさを感じてしまった。

 俺は柚葉(ゆずは)ちゃんに恋をしてしまったんだと思う。


   *

 ある日、俺は玲央(れお)とケーキ屋に来ていた。玲央が茜音(あかね)ちゃんにあげるケーキを買うからついてきてほしいと言った。仕方ないと思ってついていった。

 ケーキ屋に着くと、思ったほど時間が掛かった。ケーキを選ぶのに悩んでいた玲央。俺の一言ですぐ決めた。

 その後、帰ろうとした時、思わぬ遭遇があった。柚葉ちゃんが来たんだ。すれ違っただけですぐに分かった。

 俺は玲央に先に帰るようにいって、柚葉ちゃんの帰りを見送ることにした。一人で来てたってのもあったけど、日が沈もうとしていた時間に女の子を一人で帰らすなんて出来ないでしょ。この時だけは恐い父さんに怒られてもいいと思った。

 見送る時に玲央が好きなのか聞いてみたくなった。分かってはいたけど、聞いてみてそれが本当だったのが悲しかった。それよりも悲しかったこと、俺の名前を知らなかったらしい。

 柚葉ちゃんが小さい頃だったから仕方ないかな。けど、覚えてほしかったと思ってしまうよ。

 そんなこともあり、悲しさが増した心はどこか埋めたい気持ちだった。その気持ちが通じたのか、最近よく柚葉ちゃんを見かけることが多くなった。

 ふらっとどこか寄りたい、そんな気持ちでいつもと違う道を歩いていたのがきっかけだった。

 柚葉ちゃんが学校帰りで、一人寂しく歩いている気がした。声を掛けて、話をした。玲央とどうなっているか聞きたいってのもあったのかな。本当は玲央とくっつけたくない気持ちはあるのに、言葉とは裏腹にくっつけようとする。気付けば、応援していた。

 話す機会が多くなった時だった。

怜太(りょうた)さんは好きな人いないんですか? いたら、アドバイスほしいです」

 直球だった。それを聞いた瞬間、なんと答えればいいか迷った。なぜなら、好きな人が目の前にいるから。だから、答えられない。

「怜太さん?」

「あ、えーと。ごめん、今まで好きな人いないから分からないんだ。本当にごめん」

 本当は柚葉ちゃんが好きだといえばいいはずなのに言えなかった。柚葉ちゃんは俺に聞いたことを謝った。答えられない俺が悪いのに。

 もし、玲央が茜音ちゃんを好きで柚葉ちゃんが悲しむようなことがあったら、ちゃんと言おう。絶対に。


 数週間後、柚葉ちゃんに会わなくなった。その理由は俺の帰りが遅くなったからにある。少しもの足りなさを感じてしまう。

『柚葉ちゃん、久しぶり。元気かな?』

 俺は以前に教えてもらった連絡先にメッセージを送ってみた。たった一言だけなのはそれしか思い付かなかったからだ。変に長文なのもおかしいし、だからといって意味が分からない短文なのも良くない気がする。

 挨拶程度の文がちょうどいい思った。すぐに返信が来てほしいなと思っても、それはただの欲張りだ。首を長くして待った。

 それから、数時間後。思っていたよりも早く返信が来た。

『お久しぶりです。元気です。怜太さんは元気ですか?』

 たったそれだけでも返信が来たのは嬉しいな。俺はすぐに返信をした。けど、それっきりで返信は来なかった。心配するも続けてメッセージを送ろうとしたが、中々送れなかった。勇気が出なかったんだ。


   *


 それは突然だった。

「先輩、好きです。付き合ってください」

 これで何回目だ? また告られた。女子に人気って嬉しいような、戸惑うような。好きな人がいるからって断ったら女の子に悪い気もしてきている。

「はい」

 思わず受け入れてしまった。本当は柚葉ちゃんと……。でも、もう後に戻れない気がした。

「これからよろしくお願いします。怜太先輩」

 いつまで続くかなと思い、俺は女の子と付き合った。女の子の名前は桃月(ももづき)(あや)ちゃん。明るくて元気な女の子な感じだった。一緒にいて、明るくて楽しいと思った。

 けど、それは突然起きた。

「怜太先輩、あっち行きませんか?」

 一緒に歩いていると、彩ちゃんは言葉にした。

「いいけど、どうかしたの?」

 すると、彩ちゃんは下を向いた。なにか苦手なものがあるのかなと思いつつ、彩ちゃんが行きたい方向に行くことにした、その時だった。

「あ、やっぱり彩だ。って男? どういうつもりだよ!」

 突然、俺と彩ちゃんの前に現れた男の子。どうやら、彩ちゃんを知っているようだった。

「おい、聞いてんのかよ!」

 男の子は大きな声を出し続けている。俺は男の子に聞いてみる。意外な言葉を耳にした。

「俺たち付き合ってるんだよ!」

 たったそれだけの言葉だった。俺は衝撃を受けた。だって、告白されたってことは大切な人がいないって思っていたから。俺はどうすべきか考えた。その結果、ある答えに辿り着いた。

「ごめん、桃月さん。実は俺、好きな人がいるんだ。だから、俺たち別れよう」

 彩ちゃんは驚いて俺の顔を見た。よく見ると、泣いていた。その場から走り去っていった。男の子は先ほどと変わって、俺に頭を下げて彩ちゃんの後を追いかけていった。

 付き合って僅か一週間後の事だった。

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