≪視点≫ ダズモンド・アダラグ ④
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さて、早速ですが、続きをどうぞ☆
“夕暮れが近づいているな…”
隣町のグルドラまで、休憩なしに走り続ける。王都からグルドラまでは、馬を急がせて半刻ほどだ。
グルドラは、エイバラス・ドルワーズ公爵が治めるユミーラ領の端に位置する町だ。王都と隣国を繋ぐ道の途中に位置し、森を抜ける前の最後の補給地となるため、王都までとはいかないが、綺麗に整えられていて、長旅の必需品の品揃えも豊富だ。
町に着くと、早速必要な物資を調達する。数日分の食料に、水筒の魔道具、あとは傷薬、それから…。
“そういえば、あの格好…。”
嬢ちゃんたちは異界の衣を着たままだったなと思い、自分の分も含めた外套を三枚仕入れることにした。服も揃えてやりたかったが、サイズが分からないし、何より荷物になる。余計な荷物は増やすべきではないと判断した。この短剣と一緒に、残りの金を渡し、隣国で揃えてもらえばいいだろう。それから、エドモンドを訪ねてもらおう。あいつなら、きっと嬢ちゃんたちを助けてくれるはずだ。
いろいろと考えながら、必要な物を揃え、嬢ちゃんたちとの待ち合わせ場所に向かう。
“嬢ちゃんたちは無事に大岩に辿り付けただろうか…。”
大岩までの道のりは短いようで長い。魔道具を持たせているから、魔獣の心配はないが、魔獣の他にも厄介な者がいる。誘惑の森の主だ。隣国への近道なので、魔獣だけなら魔道具を持っていれば、ほぼ無事にたどりつくことができる。しかし、誘惑の森の主は厄介だ。魔道具が効かず、よほどの者でないかぎり、幻覚に惑わされてしまうからだ。現に、屈強な騎士団の者でさえ、俺を含めた数人以外は幻覚に惑わされ、森を抜けることができなかった。ある者は仲間に斬りかかり、ある者は泣き出してしまった…あれは本当に厄介だったな…。
そんな誘惑の森に、なぜ嬢ちゃんたちを置いてきたのか…。
まず第一に、人の目がないこと。通常のルートを通ると嬢ちゃんたちが生きていることがバレてしまう。第二に、なるべく早く隣国へと行くべきだと思ったから。いつ、あのバカ共が、嬢ちゃんたちの持ち物に目をつけるか分からない。今は、聖女召喚に沸きだっていて、嬢ちゃんたちのことは気にもとめていないが、この興奮が冷めると、きっと誰かが言いだすだろう。≪侍女と子どもが持っていた荷物はどうした≫と…。異世界から持ち込まれた荷物に興味が湧かないはずがない。そうなると捜索が行われてしまう。誘惑の森を抜けることができる奴の中にも、腹黒大臣の手の者がいるからな。そうなる前にこの国を出なければ。それに、この国は、彼女たちには生きにくいだろう。隣国ラファルエド帝国は、民に優しい国だ。国政に携わる多くの者たちが、民を第一に考え、国を動かしていると聞く。その者たちを統括する皇帝は、民のことを第一に考えるのであれば、口を出さず、政策を見守り、時には自らが民の声を聞くんだとか。だから、俺は嬢ちゃんたちを隣国へと逃がす。必ずな。そして、第三に彼女のあの瞳だ。あの瞳を見た時、言葉では言い表すことができないような不思議な感じがした。だから、きっと大丈夫だと…。
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誘惑の森に入ると、違和感を感じる。なんだか、いつもと様子が違うのだ。そう、常に誰かに見張られているようなあの感覚、そしてゾワッとするような、心を掴まれるあの感覚をまったく感じない。
“なぜだ?”
森に何かが起こったのか…嬢ちゃんたちは無事なのか…募る気持ちを必死に堪え、ひたすら馬を走らせる。
“どうか無事でいてくれ。”
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大岩に近づくと感じたことのある気配がした。
“この気配は…”
洞穴の前に馬をとめ、気配を探る。
“気のせいか…?”
洞穴の入口まで足を進める。
“気配が2つ…いや、3つか…。2つは嬢ちゃんたちのものだろう。あと1つは…殺気?この気配は…”
僅かだが、殺気が感じられる。しかもこの気配は、森を通る度に感じるあの気配だ。
コツン、、、コツンコツン。
洞穴の中へ足を進める。
「無事に着いたようだな。」
とりあえず安心し、ランタンに火をつけた。
ポッ──。
嬢ちゃんたちの後ろに視線を向ける。大丈夫だとは思ったが、まさか、森の主を連れてくるとは…予想以上だ。俺は、嬢ちゃんたちの後ろで殺気を飛ばしている奴に、危害を加える意志はないことを伝え、出てくるように言い、両手を挙げた。
でできたのは10歳ぐらいの子どもと変わった色をしたトーラだった。殺気を飛ばしていたのは子どもの方か…。
色々聞きたいこともあったが、ラクトの腹がなったので、食事を取ることにした。
“イチゴミルク”
嬢ちゃんがくれた異界の食べ物だ。これが甘くて旨かった。久しぶりに食べ物に感動した気がする。
食後、意を決して語り始めた俺。長年溜まっていたものを吐き出すように…。嬢ちゃんたちは、耳を傾けてくれた。
語っているうちに、自分の愚かさ、情けなさに腹が立ち、拳を強く握りしめていた。血が滴るほどに…。
それに気づいた嬢ちゃんが、傷口を押さえてくれた。優しい嬢ちゃん…。そう、この娘が妹に重なったんだ。助けてやることのできなかった妹に…。だから、俺は必ずこの娘を助ける。
俺は嬢ちゃんに微笑み、嬢ちゃんの頭に手をのせた。すると、嬢ちゃんは俺の手を優しく握りしめながら、泣き出してしまった。
ポワン、ポワン──。
嬢ちゃんの目から零れた涙が光だし、全身を優しい光に包まれる。俺は立ち上がり、全身を確認する。光は強くなり、あまりの眩しさに目を閉じる。
“お…ちゃ…”
“!?”
聞き慣れた声に、思わず目を開け、声の方を向く。
“お兄ちゃん”
“…エリー?エリー!?”
そこには、透けた体のエリーがいた。
“すまなかった!俺のせいで辛い思いをさせてしまって…守ってやることができなくて、本当にすまなかった!”
涙が零れ、視界が歪む。
“お兄ちゃん、謝らないで。お兄ちゃんこそ、私のせいで辛い思いをさせてしまってごめんなさい”
“そんな…お前が謝ることなんて…俺が…俺が…”
自責の念に駆られ、言葉がでない俺の頬に、エリーが両手をそえる。
“あのね、お兄ちゃん、お兄ちゃんはまったく悪くなんてないんだからね!悪いのはあいつらよ!ジュランにも酷いことをしたし!ホント、許せないんだから!…だけど、もういいの。全部、終わったんだから”
“終わった?…なにを…”
“ふふっ…彼女のおかげね。お兄ちゃんが彼女を助けてくれたから…だから呪いが解けたのよ”
“呪…い…が解け…た?”
“お兄ちゃん、今までごめんなさい。私のためにいっぱい辛い思いをさせて…苦しめてしまって…。でもね、これからは自分の幸せを考えて…お願いよ”
“エリー?”
“お兄ちゃん、愛してるわ…お兄ちゃんの妹でよかった”
エリーの透けた体が消えていく。
“ダメだ…エリー!いかないでくれ…!”
“私は幸せだったわ”
“エリー…エリー…”
“ありがとう…お兄ちゃん。”
“エリー…”
“幸せになって、約束よ”
“エリー…ありがとう。”
エリーは微笑みを残し、消えていった…。
気づくと、光が消えていた。俺は、膝から崩れ落ち、顔を両手で覆う。俺の肩に彼女がそっと手をのせた。俺はその手を両手で握り、心からの感謝をした。
「感謝します、シオリ様・・・やはり、あなたが・・・。」
俺は確信した。城にいる聖女殿が本物であれ、俺にとっての聖女様は彼女…いや、シオリ様だけだと。仕えるべきは、シオリ様だと、俺の…私の心が言っているのだ。彼女の前に膝をつき、私は騎士の誓いを捧げる。
「ダズモンド・アダラグ、シオリ様に助けて頂いたご恩は、決して忘れることはございません。我が身命を賭して、盾となり、剣となりて、貴方様をお守り致します。我が忠誠をここに!どうかお受取り頂きたく!」
戸惑いながらも、シオリ様は剣を受け取って下さった。戸惑う彼女も可愛いらしい。
「これからよろしくお願いします。」
私なんかに礼を言う必要はないと伝えると、“どんな人にでもお礼を言うし、間違ったことをしたら謝るの”だと。何とお心の広い方だ。さすが私が主と認めたお方。
パチン─!
シオリ様のウィンクに思わず頬が染まる。なんと可愛いらしいことだろう。
それからシオリ様のお力のことや、ベニトとモミジのことを話し、シオリ様たちは眠りにつかれた。シオリ様の肌を見てしまうという大失態を犯してしまうが、シオリ様は許して下さった。
シオリ様たちの寝息を聞きながら、持ってきたブルウ酒を味わう。酒の味が分かるのは久しぶりな気がする。
「うまいな…」
自然と笑みがこぼれていた…。
いかがでしたか?ようやくダズモンドさんの視点が終わりましたので、次回は…たぶん本編に戻ります(笑)ちなみにブルウ酒は、異世界のブドウ酒です。
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