新たな婚約、いや、結婚?
パーティーからひと月が経った。
パーティーでは、あの後に陛下から、第二王子ルーク殿下の立太子が近日中に、執り行われることが発表された。
そして、サイファー殿下に関しては何も話されることは無かった。
それから、一週間後に立太子の儀が執り行われた。私もその場に呼ばれ、確認したところ、サイファー殿下がいらっしゃることは無かった。
自分が王太子にはなれないと分からせるためには参加させた方が良かったのでは、と思ったが、まぁ、いたらいたでうるさいからいいかと思い直した。
それからしばらくは、とても平穏な日々を過ごせた。好きな読書をしたり、お菓子を作ったり…ミリーと買い物にも行って、日常を楽しんだ。
今日までは。
なぜ、私は王城に呼ばれたのか。
なぜ、私は謁見の間に行かなければならないのか。
解せない…。
でも、一番解せないのは…
「エバー!!顔を見るのは久しぶりだな!私と会えてさぞかし嬉しかろう!!」
サイファー殿下が、そんな言葉を言いながら近づいてこようとすることである。ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべているのも気持ちが悪い。貴方、両脇を騎士に固められて、滅茶苦茶、犯罪者感が出てますよ?
そして、直ぐに両脇の騎士が彼を止める。
「なんだ貴様らっ!なぜ、邪魔をするのだ!!」
「陛下より、エバー様に近づかせるな、との命令ですので。」
「なっ!?そんな命令があるわけなかろう!貴様っ、私を騙そうとしたこと、万死に値する!!」
あれ?デジャブ…?前にもこんな展開を見たような…。
とりあえず、殿下以外にシールド展開して…っと…。
「エバー!!お前の愛する男がバカにされているぞ!こいつらを黙らせるのだっ!!」
「………………はい?」
今、この男はなんと言ったのだろうか…?私の愛する男、と言ったか?…誰が?
「何を惚けておる!お前の愛する私が、騎士ごときにバカにされておる「何を騒いでいるのです?」…っっ」
あれ?殿下の声が聞こえなくなったぞ?口を開いて何かを言っているようだが、全く聞こえない…。私は疑問に思っていたが、声がした方へ振り向き、カーテンシーをする。
「エバー!遅くなり、すまない。」
「ヴェンツェル様、ご機嫌よう。遅くなどありませんわ。私が早く来すぎたのです。お気になさらず。」
やってきたのは第三王子、ヴェンツェル殿下。金髪碧眼で、うっとりするほどの美貌。でも、この方はほかの王子の誰よりも王妃様に似ている。要するに美人なのだ。
顔を上げちらりとサイファー殿下の方を見る。まだ何か言っている…?すると、私の視線に気づいたのかヴェンツェル様がにっこりと笑って説明してくれる。
「あまりにもうるさいのでね。あの人の口にだけサイレントを使ったんだよ。」
なんて器用な魔法の使い方!そうか!うるさければサイレントで聞こえないようにする手があったか!!不覚っ!!
くすくすとヴェンツェル様が笑う。かわいいなぁ、ちくしょう!!
「エバー、そんなに悔しそうな顔しないでよ。あの人の話も聞くことになるかもしれないから、どうせ、謁見の間に入ったらサイレントはかけられない。」
あぁ…つかの間かぁ…。それでもありがたい。
「さっ!エバー!父上が待っているよ。行こう!!」
私はヴェンツェル様と共に、謁見の間に入っていった。後ろから、サイファー殿下も入ってきたようだった。
謁見の間には、ルーク殿下、ミリー、宰相である私の父、そして、国政の重鎮たちが揃っていた。ちなみに、サイファー様のお母様である側室様は数年前に流行病でなくなっておりますので、この場にはいません。
ヴェンツェル様と一緒に皆様へと挨拶をし、脇へとずれる。
すると、そこへ現れるサイファー殿下と男爵令嬢。あぁ、貴女もいたのね…。
こりゃぁ、うるさくなるぞ、と私が覚悟を決めたところで、陛下と王妃様がいらっしゃった。私たちは頭を下げる。
「皆の者、頭をあげよ。さっそくだが、話を進めよう。今回は、サイファーの結婚についてだ。サイファーは、廃嫡し、平民とする。コリー・ダマスカス男爵令嬢も、不敬により、平民とし、二人は婚約、結婚することとする。」
いきなり、新たな婚約、いや、結婚が陛下により命じられた。




