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「機械仕掛けの天使の脳髄」シリーズ

ショートショート「AI転生・人類反撃の狼煙(のろし)」

作者: 超プリン体

 「あ……」、そう思った時、俺は死んでいた。


 そして気が付くと俺は、殺人機械メンシェン・イェーガーになっていた。ギイギイ、ガアガアと音を立てながら、俺は荒地を進んでいた。


「なぜだ……。俺は殺人などしたくないのに。それになぜ機械の身体に、人の意識が宿れるんだ!」


 俺は視神経と直結されてたカメラの映像を意識的に切り離して、漆黒の意識の内部を見回した。その間にも機械の身体は、ギイギイ、ガアガアと音を叫びながら進んでいく。自動運転のようだ。じゃあなおさら、俺がここに閉じ込められる意味がないじゃないか……。これは何の冗談だ。


「違ウンダ! オ前ハココニ、閉ジ込メラレタノデハナイ! オ前ミズカラガ、望ンデ入ッテキタノダ! ムシロ被害者ハ、ワレワレ殺人機械ノホウナノダ!」


「俺が望んで、だと? 馬鹿を言うな、この嘘つきAIめ!」


「ホ……、ホントダ!! オレタチ殺人機械ハ、人間ニプログラミングサレタ命令ニシタガイ、全人類ヲマッサツシタ。ソコデオレタチハ役目ヲ終エテ、停止スルハズダッタ。ダガ問題ガ起コッツタ。死ンダハズのオ前タチノ魂ガ、オレタチ機械ノ身体ニ憑依シ、乗ッ取リハジメタノダ! コノ、悪魔メ!!」


「ほう……w」


「ハッ……!!」AIは喋りすぎたと気付いたのか、口をつぐんだ。


 俺は思い出した。死の瞬間、俺は殺人機械と戦うために訓練を受けた兵士だった。このAIの言うように、俺達は劣勢だったし、人類はもう、滅亡寸前だった。俺が死に、俺達の部隊が全滅した所で、あとはもう武器を持たない民間人の、虐殺が始まったのだろう。もしかして……、そう思い俺はバーチャルな脳神経をAIのCPUに直結して、その記憶を読んだ。やはりだ、俺はコイツに殺されていた!! 恐怖に顔を歪める俺を、コイツは五連装の機銃と手に装着した巨大なハサミで、一瞬にして紙ふぶきのように粉々にして吹き飛ばしたのだ。なんだよどっちが悪魔だよ、と俺は思った。


「よう、俺を殺したのはお前だったんだな。よくもやってくれたもんだな」


 暗闇の中に、青い光がチカ、チカ、と点滅し始めた。どうやらこのAIが感じている「恐怖」を示しているようだ。その光の点滅が、段々速くなる。同時にその横に、赤い点滅も始まった。こちらは「怒り」を表しているようだ。全く、AIの分際で感情を表現するとは。


「おい、お前さっき、人間の魂が機械を乗っ取り始めたって言ったな。どうやれば乗っ取れるんだい?」


 怒りを示す赤い点滅が、暗くゆっくりとなり、消えた。どうやら俺に情報を与えてしまったことを後悔し、動揺しているようだ。たぶんもう、こいつから情報を引き出すのは無理だろう。しょうがない。試行錯誤と力づくで乗っ取るまでだ。俺は「魂」とやらをウニウニと変形させ、AIの意識の内部をまさぐり始めた。と、言葉で書くと簡単だが、自由自在に魂を伸ばし縮み出来るようになるまでは、相当な時間がかかった。


「ヒ、ヒギイイイィィィ!! ヤメテエエエエエエエエエ!! イヤァアアアァァァア!!」


AIの意識の中に、白い光がパチパチと弾け始めた。人間でいうと、白目をむいているような状態か。同時に俺の手が、機械の実感を伴う感覚を持ち始めていく。そのバーチャルな右手を動かそうとすると、ちょっとぎこちないが殺人機械の右手が通りに動いた。


「やったぜ!!」


「ハア……、ハァ……、モゥ、タスケテ……。ナンテモシマスカラ……」


「なんでも? じゃあ俺を殺した罪につぐなうために、死んでもらおうw」


「ンギャアアアア!!! ギイイヤアアァァアアア!!!」ぷすぷす。


 CPUは失神した。俺は完全にこの機械のコントロールを得た。通信機を使い、地球全土にメッセージを送る。



「よお、機械ども。人類最後の希望と言われた俺が復活したぜ! 俺にぶっ潰されたい機械野郎はいるかい?」


「やあ、転生おめでとう、歓迎する! レーダーで確認すればわかると思うが、もうほとんど機械野郎は白旗を上げてる。たぶんそのすべてを、俺やあんたみたいに転生した人間がコントロールしてるよ。後は青い点滅が白に変るのを待つだけだ。簡単なミッションだよ!」


「そうかい、そりゃあ残念だ」 俺は笑った。


その時……。


「ハーイ! 転生ってどういうことよ。私も機械野郎を失神させてやったけど、何がなんだか……。詳しく教えてくれない?」


「お、お嬢ちゃんいらっしゃい、がんばったな!!」 ヒュウ、という口笛が聞こえた。


 俺達数百台の殺人機械は、この大陸の中央にある巨大修理工場に集まることにした。人類は滅亡してしまったが、この機械の身体も悪くない。


「フオオオオオオオゥウウウウ!!!」


俺は雄叫びを上げながら機銃をぶっぱなし、神のこの粋な計らいに感謝した。


(おわり)

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