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桜の花が咲いている

作者: 沙希

何気ない日常の中のわすれられない一コマ。

拙い文章です。

桜の花が咲いている。

まだ肌寒い3月終わり。

私はまだ小さい赤ん坊を抱き、近くの神社に散歩に行った。

赤ん坊は見た目3ヶ月だけども本当は1歳3ヶ月になる。病気のせいで身体も心も成長は遅く、病気にも弱い。

余計な病気を貰わないよう、人混みを避けて来た。

春先の神社は人気もなく静かで寂しい。

誰もいないのは、ここが過疎地であるせいでもあるだろう。

夫の里であるこの土地は山里だ。

赤ん坊に話しかけながら、歩く。階段を上がり、誰もいない境内の片隅に腰を下ろす。もうすぐ4月だというのにまだ桜は1分咲きだ。

早く暖かくなるといいねーと赤ん坊に話しかける。

あーうーと、意味のなさない返事があり微笑んだ。

その時、あら先客?と老女の声。

振り返ると老女が孫らしき女児2人を連れて来ていた。

こんにちはと笑顔で返し、挨拶をする。

たわいもない話をしてきた。

女児はやはり老女の孫で上の子は5歳下は1歳半だという。

あぁ、下の子はうちの子と同い年なのねと心の中で思う。

1歳半の子供はとてとてと歩き、老女の服の裾を持ちあっちに行くのだと主張する。まぁまぁと言いながら、老女は赤ちゃん、かわいいね、何ヶ月?3ヶ月くらいかしら?と聞く。はぁ、と曖昧に答えながらどこかに行ってくれないだろうかと考える。

赤ん坊の病気を、恥じることはないけるど、見ず知らずの人の同情を買うのもいたたまれない。赤ん坊の本当の月齢や病気を知った時のなんとも言えない表情が本当に苦手だったのだ。


その日からそう遠くない日に赤ん坊は急に呼吸困難となり、救急搬送された。

そして半年の闘病を経て、自宅に帰ることなくその生を終えた。


春先に入院したが赤ん坊は秋口にやっと冷たくなって帰ってきた。

思い出すのは帰ってきた時ではなく、初めて一緒に見た1分咲の桜。


あの子の短すぎる人生のように1分咲の桜の花を。

読んでくださってありがとうございました。

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