先入観
暇な大学生2人が学生食堂のテラス席で話している。
「汚い尻のおっさんが10人並んでるって聞くとどんなイメージが浮かぶ? 今脳内になにが浮かんだか言ってみてよ」
食堂には似つかわしくない話題だが、周りには誰もいないのでそんな配慮も必要ないのであろう。
「そんなの普通に10人のおっさんが汚いお尻を出してあっち向いて並んでるだけだよ。お前が今説明したまんまのイメージだよ」
呆れたように答える友人。
「さっき俺はおっさんが尻を出してるなんてひとことも言ってないんだぜ。不思議だよなぁ思い込みって。叙述トリックってやつか? これ」
「叙述トリックなのかどうかは知らないけど、じゃあお前はなんで出してもいないおっさん達の尻が汚いって言いきれるの?」
些細なことから喧嘩は起きるのだ。
「そりゃ図鑑で見たからだよ」
喧嘩どころではなさそうである。
「変なことばっか言ってるな。お前やばいわ」
また呆れた様子の友人。
「変でけっこう! みんな違ってみんないい よしこ」
「よしこって誰?」
友人はこの男にだいぶ振り回されているようだ。
「まあ存在しない人間の話は置いといて。あなたは今、幸せですか?」
「宗教勧誘しだしたよ」
『ガハハハハハ!』
2人は笑いながらタコスを平らげた。