女子会
「あー……」
あのときの女の子が清香ちゃんだったのか?
見覚えある気がしたのもそれで、だったのかな。
「え? 千秋ちゃんが電車で見かけた子ってのが清香だったってこと?」
「そう、なのかな? さすがに顔までははっきり覚えてないけど」
「えぇ、まさかあんな話聞かれてたなんて……。ちょっと、いや割りと恥ずかしいですね」
「へー、すごい! 世間て案外狭いもんだねー。でも千秋ちゃん、よく覚えてるね。私電車で聞こえてきた話とかすぐ忘れちゃうけど」
「あぁ、まぁ、そうね……」
聞き耳立ててたみたいで、ちょっとバツが悪い。
でも、私にはなぜかその会話の内容が強く印象に残っていた。
「やっぱ、清香ちゃんも彼氏欲しいとか思うんだ?」
「え、そりゃあ、まぁ……思いますけど」
清香ちゃんは照れたようにうつむく。
「上村さんは彼氏さんいないんですか?」
「え、私?」
まさかの反撃。
「えっと……。いない、けど……」
「え、意外! 上村さんモテそうなのに」
社交辞令で言ってくれてるのかな?
「彼氏作らないんですか?」
「清香、微妙な年齢のレディーにそういうこと聞くもんじゃないよ!」
「……橘、それ割りとブーメランだからね?」
「てへっ」
うーん。
彼氏、かぁ。
今は彼氏より彼女がほしい、なんちゃって。
「社会人て出会い多そうでいいですよね」
「あー……」
「んー……」
橘と目を見合わせる。
「清香、残念ながらそれは幻想なんだよ」
「うん……」
「もうちょい正確に言えば、出会いがあっても恋愛に発展するようなイベントがない」
「まさしく」
仕事関係の人はどうしても気が引けるしね。
「でも私も女子高だから、どうすればいいんですかねー」
「彼女作れば?」
そう答えたのは私ではない。
橘だ。
「女子高って女の子同士のカップル多そうじゃん。ほら、『ごきげんよう、お姉さま』みたいな」
「そんな言葉遣いはしないけど……」
「けど?」
「いるのは、いる、かな……」
へぇ、いるんだ。
「え、なにそれ詳しく!」
橘食い付きいいな。
まぁ、私も内心興味津々なんだけど。
「手つないだりしていちゃいちゃしてるのはよく見かけるし、交際宣言してる子もいるしって感じ。でもガチで好き同士というより、そういうシチュエーションを楽しんでるだけに見えるのも多いけどね」
まぁ、そんなもんだよね。
「あ、やば。千秋ちゃん時間大丈夫?」
「え?」
時計を見ると23時を回っていた。
「あー、そろそろやばいね」
「え、上村さん帰っちゃうんですか?」
「そうだね。もう遅いし千秋ちゃん泊まってく?」
「いや、さすがにそれは悪いよ」
今から帰ればまだ電車あるし。
「まぁ、そう言わずにさ。お酒も入ってるし、夜に一人歩きさせるの心配だし、もし明日予定なければ泊まってってよ。パジャマなら私の貸すよ」
「え、うーん……」
初めてのお呼ばれでそこまで甘えるのはさすがに悪いような気もするけど、どうしよう。
一応、歯ブラシとか化粧品とかは持ち歩いてるし、ついでに急に生理来たとき用にショーツもある。
ぶっちゃけ帰るのめんどくさいし、2人ともう少し話したいとも思うけど。
「そうですよ、上村さん。もう今日は泊まってってください。私もっと上村さんとお話したいし」
「う……」
上目遣いに訴えてくる清香ちゃんが可愛いかった。
「じゃあ、泊めてもらおうかな……」