お呼ばれ
洗濯物を干し終わると、メールが来ていた。
差出人は橘だ。珍しい。
メールの内容は至ってシンプル。
『今日お暇だったりしないかな?』
それだけ。
「……うーん」
暇ではある。
暇ではあるけど、何の用事かわからない以上どう返信して良いものか困る。
『なんかあった?』
質問に質問で返すのはズルいと思うけど、無難なとこだろう。
返事はすぐに来た。
『今日、うちにご飯食べに来ない?』
「ふむ」
ホントに珍しい。
橘とは会社の人間の中でも特に仲が良いし、仕事帰りに2人で食事に行ったりすることもあるけど、休日にまでプライベートで会うことは今までなかった。
しかも、家にお呼ばれ。
「あー、うーん……」
どうしよかなぁ。まぁ、断る理由はないし。
『行きます』と。
『ありがとう!』
橘はメールの返信が早い。ただし、プライベートに限る。
「あ、てか、妹さんもいるんかな……」
夕方17時、橘の家の最寄り駅で待ち合わせ。
「あ、千秋ちゃん、やっほー」
改札を出るとすでに橘がいた。
「コノタビハオマネキイタダキアリガトウゴザイマス」
「なんでそんなカタコトなの?」
橘はやんわり笑っている。
「ふーん……」
そしてなんかジロジロ見られる。
「何?」
「千秋ちゃんて、休みの日でも割りとちゃんとした格好なんだねー」
「そう?」
橘の基準がよくわからないが、チュニックの上にサマージャケット、クロップドパンツという出で立ち。
「そのまま会社行けそう」
「そういう基準かよ」
「似合ってるよー」
「ありがとさん」
一方の橘はというと、ワンピースにカーディガンという格好。
「橘はオフだと雰囲気変わるね」
「あー、仕事のときは基本パンツだからねー」
「そういう女の子っぽいのも似合うじゃん」
「あれ、普段は女の子っぽくないってこと?」
そんなことを喋りながら橘の家へ向かった。
「ここだよー」
綺麗なマンションだ。分譲かな、高そう。
「ただいまー」
「お邪魔します」
部屋に入ると、ちょっといい匂いがした。
これが、橘の匂いなんだな。
「おかえりー。あ、いらっしゃい」
奥から高校生ぐらいの女の子が出迎えに来てくれた。妹さん、やっぱいたか。
「あ、初めまして。上村と申します」
「妹の清香です。いつも姉がお世話になっております」
「いえいえ、こちらこそ」
そんな挨拶とともに、2人して深々とお辞儀をした。
橘はなんだかおかしそうに笑いをこらえていた。
顔を上げると妹さんと目が合った。
はて?
どこかで会ったことがあるような気がするけど、気のせいかな。