女子力に関する考察
ベッドに横たわったまま時計に目をやる。
「……9時か」
今日は休日だ。
予定はない。
寝起きで喉が渇いている。けど、キッチンまで行くのが面倒くさい。
「んんー……、しゃあない、か」
溜め息をつきながらベッドから這い出す。
何か飲み物あったかな。
冷蔵庫を開ける。
ちょうどよく瓶入りのビタミン飲料が冷えていたので一気に飲み干す。
「んー、酸っぱ……」
美味しい。
さて、今日は何をしようかな。
外はいい天気だというのがカーテンを開けなくてもわかる。
天気がいいと出掛けたくなる、という人の感覚は出不精の私にはあいにくわからない。
「ふむ」
そうだな、とりあえず洗濯かな。
1人暮らしを始めてから、洗濯は週末にまとめてする癖がついてしまった。
洗濯機を回している間、手持ち無沙汰になる。
あと2時間ぐらい暇だな。
カーテンと窓を開ける。
初夏のまだ爽やかな風が部屋に吹き込んできた。
少し気持ちいい。
風を浴びたくて開けたわけではないけど。
ベッド脇に置いてあるタバコを手に取り火をつけた。
タバコはなるべく人前では吸わないようにしている。
会社でも吸わないし、吸わなくてもツラいと思ったこともない。
会社で私が喫煙者だと知ってるのはいないんじゃないかな。
ああ、橘には言ったことがあったかな。
どのみち、いつか結婚して子供が出来たら、そのときはきっぱりやめるつもりでいる。
逆に言えば、その予定ができなければ、タバコをやめることはないかもしれない。
「ハハ、私タバコやめれるんかなぁ……」
少し自嘲気味になってしまった。
いいよね、タバコぐらいの贅沢したって。
なんとなく部屋を見渡してみる。
我ながら女子力に欠ける部屋だなと思う。
なんというか、可愛げがないというか……。
だって、多分この部屋にあるもので一番高かった買い物って、めったに動かさないゲーム機だし。
そのゲームのラインナップも女子力に欠ける気がする。
レースゲームだったり、アクションRPGだったり、格ゲーもある。
一番女の子っぽいのといえば、恋愛シミュレーションゲームだろうか。
やっぱり、それも男向けなわけだが。
洗濯が終わるまで、まだあと1時間ぐらいはある。
「女の子の部屋、で画像検索」
スマホに私の部屋と女の子らしい部屋の違いを尋ねてみた。
「なるほど」
女の子の部屋は全体的にピンク色をしていた。
可愛い、と思う。
でも、多分私には似合わないんだろうなぁ。
今の方が落ち着くし。
窓を開け、2本目のタバコに火をつける。
さっきより少し生ぬるい風が、吐いた煙を掻き消した。
「あ、柔軟剤入れるの忘れてた」
んー……。
「ま、いっか」