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星使い アルタイル  作者: とりうみ しんや
第一章 アルタイルの旅
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第07話 『合体線術』

 

 ベガが剣の聖哲体を具現する。

 鍔の部分が琴の形をしていて、弦もある。

 刀身は両刃で、長さは1メートル強。

 

 アルタイルは杖を、ベガは剣をそれぞれ自身の前に掲げる。

 それを空中で交差させ、金属音を響かせる。

「二つの星を、一つの力に」

 二人の声が重なる。

 そして、それぞれの背面に星座図が浮かび上がる。

 二つの星が強く輝く。

 鷲座の星座図の星アルタイルと、琴座の星座図の星ベガが、線で結ばれる。

 二人が桃色と青色の二色の明るい光に包まれた。 

 

 双子座のカストルとポルックスはそれに気づき、アルタイル達の方へ邪魔にならないように端から走って近づく。

 魔獣も気が付き、アルタイルとベガの方を向く。

 杖と剣の先端から、二色の一つの光線が放たれる。

 

 魔獣は両腕を前に交差させ防御する。

 光線はその腕を粉砕し、体も貫き、背後の壁をえぐる。

 洞窟に風穴を開けた。

 魔獣は体の穴からぼろぼろと崩れ、風に乗ってさらさらと消えていった。

 アルタイル達は、魔獣を撃破した。


「す、凄いな。これが地上で腕を磨いた、三賢者の合体線術」

 と、カストルが驚きの表情でつぶやく。

 ポルックスはすぐに駆け寄り喜ぶ。

 アルタイルとベガは目を合わせ、笑った。


 4人は元来た道を戻り洞窟を脱出した。

 空は晴れていた。

 日差しがベガの肌を優しく温める。

 約一ヵ月ぶりの外の空気をベガはゆっくりと吸い込んだ。

 

 その後、タイタ山のふもと近くの村へとやってきた。

 タイタ山は活火山で、ここタイタ村にはいくつもの温泉が湧き出ている。

 タイタ村の村長の元に訪れると、カストル達は旅館に案内された。

 この旅館は女王ミザールの命令により、貸し切りとなっている。

 

 旅館にある温泉は広く、綺麗だった。

 4人は早速温泉に入り、疲れを癒し談笑する。

 ふいにアルタイルがベガに聞く。

「そういえばベガはさ、食べ物とかどうしてたの?」

「ん……コケとか」

「こっ!」

「水は湧水があったから飲めた。おいしくはなかったけど」

「コケも?」

「……ええ。おいしくはなかった」 

 ポルックスはそれを聞いてくすくすと笑った。

 

 間を置いて、次にカストルが質問する。

「魔女の姿は見なかったのか?」

「はい。背後からなにか近づいていたのは、なんとなく憶えていますが」

「気が付いたらあそこに閉じ込められていたと?」

「はい。そうです」

「……結局、魔女を見た者は未だにいないということか」

 

 温泉を出ると、4人にはそれぞれ部屋が用意された。

 アルタイルは部屋でゆっくりとくつろぎ、日誌をつけていたがカストルに呼び出される。

 部屋を出て玄関近くの待合室まで来ると、そこにはベガとポルックスもいた。

「お待たせしました」

 と、伝令隊の隊員が待合室に来た。

 女王陛下からの書状を預かりこの村に待機していたとのこと。

「ベガ様がご無事で何よりです。では、こちらが書状となります」

 そう言うと隊員は4人の前に軽く頭を下げ、両手で封筒を差し出す。

 カストルが代表して封筒を受け取り、すぐに中身を確認する。


「ベガと私達二人は一度城に戻れ、と。アルタイルはこのまま西に向かえとの事だ」

「西、ですか」 

 カストルが読み上げ、アルタイルは反応し、書状を改めて見た。

 

 西の古都にて魔獣の出現が多発している。またその道中にある港町アリオンにて、海を歩く巨大な魔獣が目撃されたとの情報もある。その調査及び、魔獣の撃破を命じる。本来は西の管轄は琴座のベガに一任されているが、アルタイルに任せる。また十二星座の星使いも一部援軍として、地上に下ろす。と、書状には書いてあった。


 ポルックスはベガの不安そうな顔を見て話しかける。

「ベガは疲れてるだろうからー、ゆっくり休んでなさいってことだよ」

「そ、そういう訳にもいきません。陛下に報告を終えたら、すぐにでもアルタイルに合流して……」

「そんなに張り切らなくてもさ、十二星座の援軍もあるって書いてあるし。私たちも地上と空はよく行き来してるから」

「いや、でも」

 ベガは少し苦笑いし、アルタイルを見る。

「大丈夫。ベガの分は、私がなんとかするから」

 アルタイルが頼もしく言う。

 ベガは一瞬、真顔になるが、すぐに笑顔に変わる。

 4人はそれぞれ部屋に戻り、眠りについた。


 翌朝、アルタイルは早起きして、一人で村を散歩していた。

 見慣れない温泉街の景色に興味深々でいた。

 しばらく歩き回っていると、泊まっていた旅館の方からベガが歩いてくるのが見えた。

 アルタイルは小さく手を振り、ベガもそれに気づく。

 今度は二人で歩いた。

 緩やかな坂をゆっくりと下る。 

 

「それにしても、地底の魔女って何者なんだろう?」

 と、アルタイルが聞く。

 ベガは少し間を開けて言葉を返す。

「私たちと同じ、星使いかもしれない。連合体以外の生き残り?……でもそれとは違う、なにか別の雰囲気をあの魔獣からは感じるよね」

 アルタイルは同感し、さらに会話する。

「そうだね。調星機関ちょうせいきかんの人たちのような全く違う力を持っているのかも」

「まあ、ああいう事ができるのは星使いだけとは限らないからね」 

「そうそう」

「結局のところ、私を捕まえてどうするつもりだったんだろう?」

「それは、たしか女王陛下が言うには」

 

 街中に湯煙が立ち込めている。

 早朝の為、人通りは少なく、静かだ。

「ちょっと待って」

 と、急にベガがアルタイルの言葉を遮る。

 二人の足が止まる。

「なにか聴こえる」

 ベガはそういうと振り向き、坂道の上を見る。 

 

 そこには紫色の四足歩行の何かがいた。

 一匹。大きさは馬より大きく、見た目は狼か、あるいは犬。

 牙をむき出しにしているが、その口の中も牙も同色に発光している。

「あれは犬型の魔獣!?」

 アルタイルがそう気づき身構える。

 すると犬型のその魔獣は坂道を突っ走って来た。

 気づいた時には、アルタイルは攻撃態勢も防御もする暇もなく、それに激突された。

「ぐっ!!!!?」 

 更には道沿いの建物にこすりつけられ、アルタイルごと外壁を押し破り、室内に吹っ飛 ばされる。魔獣は勢いに乗ってそのまま坂を下って行った。

 あっけに取られたベガは、魔獣を目で追ったが、すぐにアルタイルが気になり近寄る。

「私は大丈夫!結界は教え通り張ってるから!それよりも魔獣を!」 

 瓦礫と壊れた家具の隙間からアルタイルが叫ぶ。

 幸い、巻き込まれた人はいなかった。

「また来る」

 ベガが敵に目線を戻した。

 今度は坂の下から猛進してくる犬型の魔獣。 

 ベガが聖哲体を右手に具現する。

 その剣は先日洞窟で魔獣を倒した時の物と同じ。

 鍔の部分の小さな琴を左手の指で奏でる。

 魔獣が高速で迫った。 

 

 

 刹那、音速で両断する。


 

 魔獣がバラバラに自壊していく。

 ベガの特異能力は音速の斬撃と移動。

 聖哲体を持った状態でのみ使える必殺技である。

 

 建物が壊れた音を聞き、村長を含め村人たちが集まってきた。

 アルタイルとベガは事情を説明し、家主には謝った。

 その頃、双子座の二人はまだ寝ていた。


 数時間後、星使いの4人は馬車に乗って村の外に出た。

「ほんとにここから歩いてくの?」

 と、ポルックスはアルタイルに心配そうに話しかける。

「次の目的地はそう遠くありませんし、これも賢者の務めみたいなものですからね。じゃあ、すみませんがこの辺で」

 アルタイルがそう言うと、カストルが馬車を止める。 


「アルタイルが危ない時は、音よりも速く助けに行くから」   

 と、ベガは別れ際に言った。

 馬車から一人降りたアルタイル。

「うん!頼りにしてるよ」

 と、笑顔で返す。   

 

 鷲座のアルタイルはここから徒歩で西へ。

 双子座のカストル、ポルックスと琴座のベガは王城を目指し馬車で北へ進んだ。 

 

 


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