04
人を守るのは、人を殺すよりも難しい。
その何倍もだ。
山本河勝の家系は、先祖代々暗殺を生業とする、いわゆる忍者の家系だった。
表現が過去形なのは、彼の父親の代で暗殺業を廃業したからだ。それは彼自身も巻き込まれた、ある事件がきっかけだった。
それから父親は彼に"人を守れる忍者になれ"という訳の分からない教えの下、彼に暗殺術を叩き込んだ。人を殺すためではなく、人を守るために。
実際、それは彼にとっては良かったのかもしれない。
思春期になると、彼の体格は縦にも横にも大きくなり、17歳現在で身長190cm、体重は90kgを超えているからだ。こうなると物陰に隠れるなんてことは容易ではない。人混みに紛れるなんてのも無理で、人混みの中では頭ひとつ跳び出てしまうのだった。
そういう訳で、現在自称"生かす忍者"として、日々高校生活を送っていた。
松尾義徳という護衛対象兼友人と共に。
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その日の放課後、義徳と一緒に帰路についていた。
河勝は口数が少ないが、それに構わず義徳はクラスメートの噂だったり、芸能関係の話だったり、ネットで拾ってきた情報だったりと、何だかんだと良く喋った。
いつもどこで仕入れてくるのか、といった疑問が思い浮かぶが、入手方法を聞いた所で自分がそれを活用できるとは思わないので、ただ聞き役に徹していた。
そしてその日は珍しく、義徳が喉が渇いたと言うので、チェーン店のカフェので一休みをし、店を出た。
その瞬間に、彼は面倒事に巻き込まれた。
「君だ!」
男の大きな声が聞こえて、河勝はその声の方を向いた。
すると、声の主であろう男が、早歩きでこちらに向かってきていた。一瞬、身構えたものの、殺気のようなものは感じられず、警戒を解く。
その男は、まっすぐ河勝たちの方へ向かってきて彼らの前で立ち止まると、義徳の両肩をガシっと掴み、こう言った。
「君、探偵助手にならないか?」
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山本 河勝。高校生忍者。17歳。男。身長192cm、体重93kg。筋肉質。緑色の髪で茶色の瞳。父子家庭。
父親の代までは、暗殺専門だったが、ある事件をきっかけに転向。
父親から、恩人の子供である松尾義徳を護衛するよう命じられ、護衛対象にはそれを知られることなく任務遂行中。
その体の大きさと口数の少なさから、怖がられることが多く、何かと苦労している。が、あまり気にしていない様子。
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久々に書けました。