03
歯には右腕を。目には頭を。
暴力を生活の糧とする人たちは居なくならない。これからも居なくなることはないだろう。
「はい。取り急ぎお耳に入れておこうと思いまして。はい。それでは。」
イベントを中心に活動している会社"株式会社 二荒遊戯" 。その本当の姿は"二荒組"という。ヤクザ、筋者、ジャパニーズマフィア。名称は色々ある。その会社の社長であり、組のトップである神田梅の地域では、ここ最近事件が続発していた。
連続殺人。それも殺されているのはゴロツキやヤカラといった類の男たちだ。しかし、そのどれもが彼女の会社の社員ではないため、動きたくても中々動き難い状況だった。
自分の地域で事件が連続するのは、会社の面子に泥を塗られているようなものだ。だが、大手を振って動くためには、社員に何か起こらない限り難しい。
「こう、いい具合にウチのが襲われたりしないかね。死なない程度に。そうしたら大義名分が立つってのに」
そう言う彼女は、社員の前では見せないが、元来彼女はどちらかというと切った張ったが好きで、自分は組長になる器ではないと思い続けている。しかし、上に立ってしまったからには、その役目をしっかりと果たさねば。と自分に言い聞かせているのだ。
そして、最近は経済系の仕事ばかりで、彼女のストレスはマックスに近づいていた。
-中々に辛いです。先代。
そう考えながら、紫煙をくゆらせていると、通信が入った。
「姐さん、やられました! テツが! 例の連続殺人です!」
若頭の近藤からだった。
その瞬間、彼女の瞳が大きく輝く。
「近藤! 今回は私が直接動くよ! 皆にそう伝えな!」
「え!? 姐さん? ちょ…」
近藤の言葉を聞き終わる前に通信を切ると、隠し金庫から得物の準備を始める。
彼女にとって、楽しいパーティの始まりだった。
「あ、いけない。連絡だけ入れとこう」
そう言って、パピルスからあるアドレスにメッセージを送信した。
-動きます。お気をつけ下さい。
と。
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神田 梅。二荒組組長。32歳。女。身長156cm、体重48kg。日本人的特徴を有するが、瞳の色だけは深緑色。
先代組長の右腕として、長年その腕を大いに振るった。しかし、先代の引退に伴い、跡目を継ぐ。
本来は気が短く、口より先に手が出るタイプだが、今のとことはいい姐さんを演じている。が、若頭の近藤の前では割と地が出ており、それが彼のストレスの主な原因になっている。
肝の座った言動から、組員達からは絶対の信頼を得ている。
独身。
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ふぅ。何とか書けた。