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バレたです

「ケモコ…それは…本当なのか」

悲痛に叫ぶのは…羽帆。服を着崩したヤンキー女のことだ。

「ほんとうなのです…」


 ケモコは珍しく大きな声で、はっきりと言った。

「けもこは!にんげんじゃ!ないのです!」

 …どうしてこうなったのか、順に話さねばならないだろう。



 その日、ケモコと僕はいつも通りに学校に行った。

 そしていつも通り四人で昼ごはんを食べ…。

 いつも通り四人で帰ろうとした。その帰り道で、羽帆が気が付いたのだ。

「なぁ、ケモコ。お前、帽子は?」

僕もやっと気が付いた。ケモコの阪神帽が…ない!


 …そうだ。帰りの会で、ケモコが帽子の位置を調整していた。あの時きっと、机の上に置いたんだ。

 雨が降るって天気予報で言っていたから、急いで帰ろうってケモコを引っ張って。ああ…。


 そして最悪なのはこの後。あろうことか、圭祐がケモ耳を指差して言ったのだ。

「というかケモコちゃん。そのアクセサリー可愛いね」

 するとケモコも途端にあんぐりと口を開け、頭を隠し、全速力で走り出した。

「ちょっ、ケモコ!?」

慌てて追いかける、僕と羽帆。圭祐はぽかんと、立ち止まっていた。


「ケモコ!待て!」 

 羽帆は僕よりずっと、足が速かった。どんどんケモコに近づく。そして。

「やめてくださいです!みないでくださいです!」

ケモコが捕まった。顔を涙でぐっしょりと濡らし、それでも頭を抱えている。

「なんでだ。どうしたんだよ、ケモコ」

心底困った声の羽帆。まぁそうなるわな。

「…きっと…まつきも…けもこのこと…きらいになるです…うう…」

「はぁ?なんでだよ。何で俺がそんなこと…」

「なるですっ!…あ」


 ぽつり…ぽつり…。


 降ってきたのは、雨。たちまち雨脚は強まっていき、僕たちを濡らす。

「とりあえず…僕ん家で雨宿りする?」

ケモコは珍しい仏頂面で。羽帆は困った顔で。圭祐はクエスチョンマークをまき散らしながら、頷いたのだった。

 つづく。


~けもこにっき⑨~


○がつ□にち すいようび くもり 


けもこのふるいきおくに、あるです。ほんとうに、ふるいきおくです。ゆめかもしれないです。

おとこのひとが、けもこをわらうです。ゆびさして、わらうです。こわいです。さみしです。

けもこがなくと、おとこのひとはもっとわらうです。いやで、いやで、にげようとするです。

でも、けもこはにげられないです。まけちゃうです。つかまっちゃうです。

つかまったあと、けもこのきおくはないです。


おもいだすと、なんだかさむくなるです。こんなときはじゅうのところで、なでなでしてもらうです。

もう、あんなおもいはいやです。

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