お弁当です
次の日の学校。ケモコは会う人全員に、頭を撫でられていた。
男性教師が息を乱しながら来た時は…ああ、さすがに逃げたさ。
ケモコはいつの間にか、学校のマスコットキャラクターにまでなっていたらしい。二日目で。
それはさておき、今日の昼ごはんは、異色のメンツとなった。
「けもこはおべんとう、もってきたです」
「俺もだぜ。て、手作りなんだけどよ」
「どうしよ…ロリと弁当食う日が来るなんて…おい、じっちゃん!」
「なんなんだよっ!」
ご覧の通り、ケモコ、羽帆、圭祐、そして僕である。
「じゅう、どうしたです?おべんとう、わすれたです?」
「あ、そうじゃなくて…何でもない」
このにゃー高では、お弁当を持ってきても、購買で買っても、いいことになっている。
ケモコの健康のため、毎日お弁当にしよう。そう思っていたのだが…。
「ケモコの弁当、見せてくれよ」
羽帆がケモコをつつく。
ケモコは少し得意げに、蓋を開けた。中身は…
「あぶらげしかねぇよ!?」
健康もクソもなかった。
「けもこがなかみを、つめたです」
「ケモコちゃん、あぶらげ好きなの?」
「です!」
ああ、もちろん、ヘルシーなのにしようとしたさ。僕は。
サラダを入れて、ご飯もつめて。
そこでやってきたケモコの絶望した顔は、一生忘れられないだろう…。
「お…お願いで、す…。あぶらげ…を、です…」
常々僕は、ケモコに弱いと思う。
「まつきのも、みせてほしいです」
「お、おう…」
羽帆が戸惑いながらも、お弁当を開ける。
「わぁ…!」
そこにあったのは、綺麗に並んだ野菜、魚、デザート…
「すごいな…本当に自分で?」
「ああ、この卵焼きが自信作なんだ」
人は見かけによらない、とはよく言ったものだ。ほとほと感心する。
「ケ、ケモコ。卵焼き、食べろよ。あぶらげだけじゃあ…な?」
羽帆の言葉に、僕もこくこくと頷いて同意を示す。
「じゃあ…一口だけ…です」
しぶしぶとそれを受け入れたケモコは、目を硬く瞑って、口を開けた。
羽帆が卵焼きを、ケモコの口に放り込む。
「…おいしいです!」
ケモコは目をきらきらさせながら、残りの卵焼きを見つめる。
「ほっ…残りのも食べるか?」
「本当です!?食べるです!!」
僕と羽帆は安堵のため息を吐き、ケモコはむしゃむしゃと卵焼きを頬張る。
圭祐はといえば、ケモコという小動物を愛くるしそうに眺めていた。
~けもこにっき⑦~
△がつ△にち もくようび はれ
きょうはみんなで、おべんとうです。
けもこのはあぶらげたくさんで、とてもおいしかったです。
でもまつきのも、たまごやき、というのがあって、おいしかったです。
ふわふわで、あまくて、だいすきになったです。
あしたのおべんとうは、はんぶんたまごやき、はんぶんあぶらげにするです。
あれ?はじめてあぶらげをたべたのは、いつです?
いつからけもこは、あぶらげすきです?
おぼえてないです。
あしたもみんなで、たのしくおべんきょうです。