自己紹介です
ただいま僕は教室にいる。
ケモコは先生といるらしい。…ボロを出していないことを願う。
「はーい、みんな座ってー」
担任の南先生が入ってくる。それに続いて…ケモコ。
ケモコは僕を見つけると、ほっとした様子だった。
「あ、さっきのケモコちゃんか」
斜め後ろから、圭祐がささやいてくる。僕は軽く頷くと、ケモコに笑いかけた。
「はいはい、転校生ですよー」
教室全体が沈黙する。みんな、ケモコの容姿にいろいろ疑問があるようなので、一言も聞き漏らしたくないのだろう。
「が、がおう、けもこです。よろしくです」
ぺこっとおじぎする姿も可愛い。
みんな、次に来るであろう自己紹介を待つ。が、それが分からなかったケモコは、沈黙する教室に居心地の悪さを感じ―そして―
「じゅう、こわいです、しずかですー!」
僕の胸に飛び込んできた。
ざわつく教室。まぁ、当然だよね。
「ケ、ケモコ。落ち着いて」
僕は、頭から落ちそうな帽子を慌てて直してあげると、ケモコを体からはがした。
目は真っ赤で、本当に泣いちゃったようだ。
「じゅーうー…」
「みんな、ケモコの自己紹介を待ってるんだよ」
「じこしょうかいです?」
「好きな物とか、ほら」
ケモコはこくりと頷くと、教室の前に戻った。これで大丈夫だろう。
改めて、教室が静かになる。
「す、すきなものはじゅうです」
全然大丈夫じゃなかった。
「えー、どうして、ちっちゃいんですかー」
質問が飛ぶ。誰もが思っていたらしい。うんうんという声が聞こえる。
「ち、ちいさいです…?」
ケモコがおろおろしていると…
「みんな、可愛いからいいじゃないか!合法ロリだ!しかもリアルだ!」
そう言ったのは、圭祐。
そうだな…という空気が、全体に広がる。
我ながら、この学校大丈夫か、と思う。
「ついでに、十をフルボッコにするのもやめてあげよう!」
する気満々だったな…。
おー!我々は寛大だ!と、野太い声も聞こえる。舌打ちを添えて。
しかしどうやら、圭祐は僕を庇ってくれたらしい。あとで礼を言っておこう。
「ん…まあ、ケモコと仲良くしてやってくれ」
僕がそう加え、ケモコの自己紹介はやっと終わったのだった…。
~けもこにっき④~
△がつ□にち かようび はれ
あしたから、がっこうにかようことになりましたです。
ひとがいっぱいで、べんきょうするばしょらしいです。
こわいです。でも、じゅうといっしょならがんばれるです。
けもこはひとりじゃないです。
じゅうのおかあさんから、すこしべんきょうを、おしえてもらったです。
おぼえるのはやいね、とほめられて、うれしかったです。
これで、けもこのあたまは、こうこうせいなみになったらしいです。
じゅうとおなじ、です。うれしいです。
おともだち、たくさんつくりますです。