十とケモコです
ケモコはよてよてとこちらに来ると、僕の服を引っ張った。
「おなか、すいたです」
そう一言だけ言うと、ケモコは僕をじっと見つめる。
吸い込まれそうなエメラルドの瞳に、僕は笑いかけた。
「なにがいい?」
「あぶらげです」
「食生活が偏っちゃうから…な?あぶらげばっかじゃなくて…」
「あぶらげです」
いつもならここで、僕は負けてしまう。
しかし、今日こそは引かない。ケモコのためだし。ケモコのこと思ってるし。
「ケモコ、米とか魚も、おいしいぞ?」
「あぶ…らげ…です…」
ケモコは僕の服をさらに強く引っ張ると…うるうるの瞳+耳ぺたん、のコンボ技。
…僕は負けました。
ここで説明しておこう。
僕は賀桜 十。いたって普通の高校生。
変身もできなければ、目からビームも出ない。ぼっちじゃないし、リア充なんてものでもない。
ザ・モブってかんじ。
…ええ、ケモコがいなければですよ。
ケモコ。
ちっこくて可愛くて、そしてケモ耳がはえている。真っ白で三角形のキツネ耳。
…シラフですよ?大体高校生は酒飲めないし。
愛くるしい容姿、舌足らずなしゃべり方。僕は翻弄されまくりです。
いつだったか、僕はケモコを拾いました。そしたらいつの間にか、家に居着いていて…はい。
僕は動物が好きだ。一男子高校生として、可愛い女の子も好きだ。
ケモコはその両方にあたるのです。Yes, clean hit.
…まぁその話はまたいつかするとして。
今日もゆるふわな毎日です。
~けもこにっき①~
○がつ○にち にちようび はれ
きょう、じゅうに、にっきをもらいましたです。
おもしろかったこととか、わすれないように、かくといいといわれたです。
だから、わすれないように、じゅうとであったときのこと、かくです。
きがついたら、けもこは、だんぼーるのなかに、いましたです。
あめのひで、さむくて、ひとりはさみしでした。
みちをとおるひとは、けもこのみみをみて、おどろいてから、めをそらしてしまいますです。
そのとき、じゅうがきて、けもこをだきあげましたです。あたたかかったです。
「おまえひとりか?さむくないか?」
といってくれましたです。
「だいじょうぶです。でも、すこしさみしです」
そういったら、じゅうはすこしおどろいてから、だきしめてくれましたです。
「ぼくのいえにくるか?なまえは?」
けもこは、さいしょのしつもんにはうなづいて、にこめのには、くびをふりましたです。
「じゃあけもみみだから、けもこだ」
けもみみ、というのはわからなかったけど、なまえはとてもきにいりましたです。
にっきに、はいらないので、きょうはここまでにするです。
あしたもかくです。