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たかが一年されど一年

時が経つのは早いものだ

監禁され早一年もたった、相変わらずディーは側にいる

ディーは数少ない私と渡り合える人間ということで聖女の護衛から危険人物の監視になった、当然私付きのメイドは危険ということで外されとても残念だ、あの可愛らしい泣き顔を見れると思い心弾ませていたのに

この監禁生活の中、今まで発狂せずにいられるのはディーと適度な殺し合っているからだと思う。別に監禁されたことに関してストレスがあるわけでもないし食事に文句があるわけでもないが人を殺さないとどうしようもなく精神が不安定になるし自律神経がやられるのだ

欲求の一つに殺人衝動がある以上自分ではコントロールしきれないものなので仕方がない

ディーはそんな私を考慮して殺し合ってくれるし狩にも連れていってくれるし部屋の中ならかなり自由にさせてくれる

と、なに不自由ない生活を送っている私に対し林檎ちゃんはかなり魔性の女でほとんどの人間をメロメロにしているらしいしそれに聖女としての勤めをしっかりとこなしているようだ、所詮はディーに聞いたことでしかないのでどんな風になっているかは全く思いつかないしかし、そんなたくさんの人間をたぶらかす少女とは思ってなかったのでさらに楽しみが増えた

無意識のうちに相手を落としていくような少女を殺すことを想像するだけで楽しいし周辺のガードが固いほど萌えるし最高に興奮すると、素直にディーに伝えたら嫌そうな顔をされた

あくまでも聞いた情報でないので本当にそうなのかは疑わしくもあるがここは真実だと信じたい、監禁された私は全く外部の情報が入ってこない唯一の情報源はディーの話のみなので得れるのはあくまでも表向きのものでしかない、側にメイドの一人でもいれば状況は大分違っただろうなので林檎ちゃんのことだってそれは確かなことではなくディーの主観も入っているので疑わしいところだ

ディーの話でこの世界について確実に分かったことと言えば聖女は魔王が勇者に倒された後に世界に撒き散らされた穢れを祓うのが仕事だということくらいだ

私はそのことを聞いて涙を流しながら膝から崩れ落ちるしかなかった。遠回しにお前の殺人は受け入れられないと言われたのだ、殺人はこの世界では場合にもよるが大抵は死刑だそうだ

絶望が私を支配されてるとディーに普通に戻るいい機会だと肩を叩かれた

生まれつきこの性格な以上どうしようもないじゃないか、人を殺すことを生き甲斐とかてる私から殺人を取ったらなにも残らないどころか多分死んでしまうと思う


「殺す気ですかぁ、私のことぉ」


結構本気で言ったのにディーはお前が死ぬわけないだろと目から伝わってくる

殺人を忘れた私は生存本能がなくなり、防衛本能もなくなりなされるがままになる可能性が高い

一度もなったことがないので予想でしかないがそうなるとなんとなくわかる、いわゆる本能が私に告げている


「無理ですよぉ、わたしぃ人を殺さないと生きてけませぇん」


「難儀な性格だな、桐は。あ、そう言えば明日王子様が来るらしいぞ。君が大好きな林檎様を連れて」


「え、本当ですかぁ。林檎ちゃんはどんな風な綺麗になってるんでしょうねぇ。私的にはぁあのままでぇいてくれると殺しがいがあって興奮しますぅ」


自分で自分の体を抱き締め殺す瞬間を想像する

あの可愛らしい顔が痛みと恐怖で歪み、私の裏切りによって絶望に満ちる心、震えてまともに声が出ないくせに助けを呼ぼうと私を説得しようとする声

全てが私にとっての興奮材料でしかない

つい笑みが溢れる


「相変わらず気持ち悪い笑いかたするよな」


いまさら引く必要もないだろう

幾度となく見てきただろう

しかし王子様が私になんの用だというのだろうかここ一年の間一度も訪れたことなんてなかったのに、逆に裏がありそうで心が弾む、私の予想が正しければこれから楽しいことが始まるはずだ


「ねぇ、ディーそろそろですかねぇ」


「そろそろってなにがだ?」


「そんなの戦に決まってるじゃないですかぁ。魔王という人類共通の敵がいなくなってぇ、国が安定してきたけどぉ物資が足りなくてぇ他国を侵略してぇ物資を手にいれようとどの国も躍起になってることですよぉ」


「知ってたのか、戦が始まってることを」


予測程度で言っただけなのに殺気をださないで欲しい

どの世界、どの時間でも必ず起こることだ

それに前の世界とは違いほとんどの国に絶対的な交渉材料がないのだ、どの国も同等の技術力に軍事力、経済力しか持っていないゆえにお互いに優位に立とうと戦がおこるのだ

もちろんこの国も聖女がいるだけで他の軍事力だって技術力だって変わらない、ある意味当然の結果で驚くことでもない、それに聖女だってなにも魔王の穢れを祓うだけに召喚された訳でもないだろうどうせ我々の国には聖女がついているとか言って士気をあげる意味もあるのだろう

一応聖女というからにはそれ相応の神の加護があるわけでいちいち一つの呪文も派手らしくいいパフォーマンス提供者なわけだ


「ただの予測ですよぉ、どんな国でも優位に立ちたいだろうですしぃ。特に魔王のおかげで今まで出来ていたヒエラルキーも同列になってしまったら戦が起こるのも必然だと思いますよぉ」


「…桐も考えてるんだな。あぁ、言う通り今、近隣諸国との戦が起きてる。元々軍事力が低いこの国は半年前ほどから攻められてるんだ」


「で、私になにをして欲しいんですかぁ」


最初にかなり失礼なことを言われた気がするが今はそんなことはどうでもいい

もしかしたら合法的に人を殺せるかもしれないのだから


「兵士として戦場にでて欲しいんだ。明日、王子はそれを伝えるために来る」


兵士という言葉に私の心臓はドクドクと鼓動を速め、体が熱を帯びる

興奮のあまり壁に思いきりタックルをかますとディーが慌てて私を止める


「ちょ、ちょっと桐ここ一応俺の部屋でもあるんだから破壊するなよ」


そう、彼が言うように私はディーの私室に鎖で繋がれてるのだ。下手に牢獄に繋いで神のお怒りを買わないようにということらしい、正直鎖で繋いでいる時点で怒りを買わないのか疑問である

というわけか私には神の加護よりも悪魔の呪いがかかってそうだ

だが鎖は一応室内を自由に動ける程度長さなので生活面ではこれと言った不便はないので一度も気にしたことがない


「あぁ、そうでしたねぇ。すいませぇんつい興奮のあまり忘れてましたぁ」


「本当に反省してるのか?まぁ、いい今日はもう遅いから寝たらどうだ」


「それもそうですねぇ。明日は可愛らしい林檎ちゃんが会いに来てくれるんですからぁ、体調は万全にしとかないといけないですねぇ」


ディーの言う通り今は真夜中の2時でかなり遅い

ぶっちゃけ私のゴールデンタイムなので寝るのがもったいない気もするが、ここは林檎ちゃんとの感動の再会のため従っておこう

どうやら疲れているらしくいそいそとディーが横になり寝る体制へと入る、私に付き合って起きていてくれたようだ。やっぱり優しいなぁとか思いつつ同じベットに入りディーの腕の中でくるまる

最初は近くに人の気配があることにひどく戸惑ったが、今では側にいないと違和感を感じる

初めての生きている人の体温にほだされたのかもしれない

ディーはなにも言うことなく私を抱き締めて頭を撫でてくれる、それが嬉しくて私はディーの胸に頭をグリグリとすり付ける

もしかしたら私はディーなしでは生きてけないかもしれない、殺人鬼なのに殺せもしないかもしれない

今も生きている人間の体温が大嫌いで冷たくなったあの体温がたまらなく大好きだ

けど、ディーは特別だ

そのことは本人には言ってない

私はまだこの体温を手放す気はない

ディーの体温で温かくなり睡魔が襲ってくる

心地のよい温かさに身を任せて私は眠りにつく

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