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創造の神と八つの神々  作者: 猫丸
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一章:天界の使者と魔界の使者1-1


 早朝7時、息も白くしかし空は春の訪れを喜んでいるかのように澄んだ青が広がっていた。

 目尻に致命的な隈を抱え竜一はそんな空を眺めながら花散る坂道を見上げていた。

 そんな竜一に背後から狙うようにして突進してくる影が一つ、それは瞬間速度を増し数秒のうちに竜一の背中を捉える。

 竜一はその気配にもちろん気づいている、しかしそれを避けようとはしなかった。


「竜ちゃん発見!」

「はぁ……」

 

 少女のような女の声が聞こえた。その声に竜一は深い溜息と


「毎度毎度朝っぱらから張り付くのやめてもらえないかな? 俺これでも男でお前はどう見ても女、傍目から見れば

 朝からイチャイチャしてるバカップルに見える。俺はそんな馬鹿の類に入る気なんてさらさらないしお前のような天然小動物を

 彼女として、いや女として扱うことなどできない。従って俺から離れろ」

 

 胸のあたりに両手を絡ませナマケモノのようにして抱きつく女を竜一は埃でも払うかのように速やかに手際よく解いた。

 瞬間、竜一の前に長い桃色の髪をしたどこかどう見ても日本人には見えない少女が赤い瞳で、束ねた髪を桜の舞い散る風に揺らせながら

 こちらを睨み付きながら口を動かす光景が映り込む。その姿を見て竜一は再び深い溜息をついた。


「野神竜一! 我が妹にそのような態度をとるとはなんたる非道か、妹を貶めた報いこの場で払ってもらうぞ!」

 

 そう言って女はどこから取り出した大きな弓を手にしてこちらに構え矢をつがえる。

 もちろん矢の先端には鋭いやじりが備え付けられ当たれば即刻流血事件に繋がるような代物が備え付けられている。

 そんなモノを何故持っているのかそれは彼女が弓道部の部長で全国でも名高い弓の名手だからだ。

 しかしそんな名手だからこそ弓を人に向けるなどありえないことで許されないことなはずだ。

 竜一は一瞬表情を曇らせるとすぐに片手を前につき出した。


「待て待て、誰が誰を貶めたって?」

 

 説得するようにして一瞬いうが彼女は即答する。


「お前が我が妹を貶めたのだ」

 

 さらにつがえる手が強く後ろに引かれるのが見えた。彼女の表情からもただならぬ殺気と怒りが感じられた。

 普通ならここで周囲の人間が止めるのだろうが、今現在周囲には竜一と目の前にいる女、そしてその妹だけで前も後ろも

 人の子一人見当たらない。朝7時と言えばちょくちょく学校に人が入る時間帯だが、それは教師に限定される。この通路は車が通れる

 スペースがなく学生専用通路みたいなもので、今現在助けを求めても誰もいない状況だった。


「待て待てただ手を振り払っただけだぞ? それが貶めたことになるのか?」

 

 女は直ぐに頷いた。それを見て竜一は表情を歪める。

 理由は簡単だ、つがえた矢が勢いよくその手から離れこちらに数ミリのズレもなく容赦なく加速して

 向かってくる様が見えたからだ。


「ば、ばか! こんな場所でそれも人に向けて矢を打つやつがあるかぁ!!!!」

 

 竜一は瞬間左足と右足を強く地面に押しあててそのまま右へ転がりそれを避ける。数秒後数センチ先で矢が空を裂く音が聞こえてくる。


「チッ」

 

 同時に失敗を悔しがるような舌打ちが聞こえ竜一は深い溜息をふたたびついた。


「ふざけんなよ! 朝っぱらからお前は何考えてんだ! それでも天乃神社の巫女様かよ!」

「巫女の職務に人に優しくなんて項目はない従って私は私の意思でお前を滅することができる」

 

 再び背中から長く伸びた矢を取り出し弓に備え付ける様が見える。

 

「まだ打ってくる気かよ!」

 

「無論だ、昔からお前の事は気に食わなかった。ちょうどいいここでその妖怪臭い体共々滅してくれる」

「待て待て待て」

 

 竜一は必死に彼女の行動を止めようとするが距離がありどうもそれはかないそうにない。

 従って今竜一が取れる行動は一つだけとなる。


「逃げても無駄、二度目の失敗は私には無い」

 

 そう言って女は竜一めがけて再び矢をその手から手放した。 

 弓から放たれたそれは勢いよく加速し急速的に距離を詰めていく。

 竜一はその矢を一瞬見つめ体を右へ転がるようにして投げ出した。

 地面はもちろんコンクリート、竜一の体は勢いよくその硬い地面に叩きつけられ電流のように両手両膝に痛みが走る。

 しかしそんな痛みを気にしている暇は竜一には無かった。


「ちょ、な、連射とか勘弁してくれよ」

 

 竜一の目には再び装填される矢とそれを強くつがえる女の姿がはっきりと写りこんでいた。

 直ぐに体を竜一はお越しそのまま坂を下る。背中は無防備だがこのままここでなんの意味も無い戦いを

 繰り広げていいても埒があかない。そう思って竜一は一目散にその場から退室を試みる。

 しかし女も竜一を逃さまいと矢を次々と射ってくる。

 

 ……数分後

 

「はぁ、はぁ、はぁ、マジで勘弁してくれよ。俺は寝不足で死にそうって時に巫女の破魔の矢なんかに打たれたら俺の

 今日のやる気ゲージ全部ゼロになっちゃうってもんだろ。それに痛いし血も出るだろうしなんで今日に限ってあいつら

 こんなに来るの早いんだ? いつもはもっと遅いのに……」

 

 竜一は赤色の光と共に消えていく地面に突き刺さったままの矢を眺めながらそう言うと道の端から坂道の様子を伺うようにして

 覗き込んだ。額にはにじみ出た汗と砂埃がへばりついている。それを拭いながら彼は言う。


「どうやら諦めたみたいだな、ふぅーこれでやっと安心して学校に」

  

 そう竜一が言った途端に竜一の背後から聞きなれた声が響く。それに竜一は一瞬驚いて見せる。


「おぉぉー今日も天乃姉妹最高だった。あの豊満な胸に日本人ではないかのような美貌、姉は美人で気品があり学園一の美少女、

 妹もそれに続く美少女で男が憧れるお胸様を持つわれらがアイドル。あの天然さがもうたまんなぁーい!」

 

 その声に竜一は再び深い溜息を付いた。


「はぁ……真瀬お前か」

 

 竜一の声に背後にいた声の主は見事なトリプルアクセルを空中で成功させ地面に着地し颯爽さっそうと前へ現れる。

 若干パーマのかかった黒髪に男、手にはカメラが握られ赤白黒の眼鏡をした鼻の高いどちらかと言えば二枚目の男が竜一の声に反応する。


「おぉー我が共にしてラッキーマン。今日も恵ちゃんに突撃されてたな」

 

 目に痛い笑顔を見せる真瀬を見て竜一は眉間に皺を寄せる。


「お前なぁーやられる方はたまったもんじゃないぞ? お胸様かなんだおかしらんが、あの女には絶対と言っていいほど姉、天乃月咲つかさ

 まるで守護神のようにして現れる。それに姉はいつも俺に対して攻撃的で今日みたいなことが今まで何度あったことか……」

 

 額に手を押し当てそう言うと真瀬は頬を緩ませ不抜けた顔でぼそりと呟く。


「なんでお前なんだよ~俺がもしお前の立場なら俺は喜んでこの命あの方に捧げるぞ? はぁー神さまぁー今からでもいいので

 俺と竜一の中身入れ替えてくれませんか~お願いします~」

 

 両手を重ねて拝むようにして真瀬は言った。それを見て竜一は鼻で軽く笑う。

 

「そんなしょうもないことを神様にお願いしてんじゃねぇーよ。神様はいろいろと忙しんだよ。お前みたいなつまらん願いを叶えてる暇はない」

「えぇーなんでだよ~別にいいじゃん入れ替えるくらい」

「いやいや、もし仮に入れ替わったとして入れ替えられたこっちの身にもなれ一一生お前の体で生きてけって言われたら俺たぶん自害するぞ」

「ひっでぇー」

 

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