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地元  作者: 馬
9/12

3つの言葉


「・・・いけるだろ?ゲン?」

電話を切り終えて、ショウはゲンに確認を取った。

「わかんねぇよ、アイツ調子良いし・・・」

さっきはいつものやり取りだった、・・・そう、ジュンヤの調子に乗せられた。


「っま、なんかあったらさ、タケシ先輩に話せよ。 なんも無いだろうけど。 俺からも電話しとくし。」

ショウは気楽に考えろと言っている。

「そうだな、タケシ君に一応話しとく。 なんか嫌な予感するし・・・」

ゲンはジュンヤを信用しきれていない様子だが、なんとか行動するに至りそうだ。


「おし!ゲン! もう行ってくれ。 警察来る頃だろ?」

そう言いながら、ショウは公民館の時計を見た。 

(18時49分)


「まずいな、本当だ。 もう行くわ、後は頼むな・・・ショウ。」

そう言いながら、ゲンは車に向かって走り出した。

「OK、OK!・・・ジュンヤと仲良くなっ」

走っていくゲンの背中にそう言い放って、ショウはベンチに腰掛けた。


そしてポケットにあるタバコとライターはベンチ横のゴミ箱へ、

さらに携帯を手に取った。


トゥルルルルル・・・

トゥルルルルル・・・

トゥルルルルル・・・

トゥルルルルル・・・

ガチャ


「おう!ショウ!どうした?」

電話の向こうで低い声が響く。

「ちょっと、ややこしい事に巻き込まれたみたいで・・・。」

相手はタケシだ。

「ややこしい事??なんだ?そりゃ?」

いつもタケシの人望と存在は頼りになる。

問題解決や喧嘩の仲裁、なんでも相談に乗れる人間だ。

本人もお金の問題以外なら何でも俺に言えと豪語する。



「マコトと俺がひったくり犯の疑いかけられてるみたいで・・・・」



タケシは中学時代大川地区を牛耳る不良だった。

喧嘩の腕っ節はめっぽう強く、ショウ達が知る限り負けの歴史はない。

それでいて友人も多く、色んな人間に顔が利く。

ショウ達との接触はクミ(ゲンの姉)と付き合い始めた5年程前からだ。


溜まり場になっていたゲンの家にタケシもちょいちょい遊びに来ていた。

クミは高校に通っており、帰宅時間は18時から19時。

タケシは自動車板金工場で働いており、その職場はゲンの家からすぐ近くにあった。

タケシは仕事が終わるとクミに逢うためにそのままゲンの家による事が多々あった。

で、クミが帰ってくるまでの30分~1時間はゲンの家族と話たり、

溜まっているショウ達と話したりする時間になっていた。


中学時代のショウ達にとって、タケシの話す世界は憧れであり、目標であった。

特にゲンは本当の兄のようにタケシを慕い、タケシの話に耳を傾けていた。

それはショウにとっても例外ではない。



・・・ショウは事の成り行きを全てタケシに話した。




「・・・わかった。 ショウ、3つ俺から言っとく事がある。 いいか?」

全てを把握してタケシはそう切り出した。

「え?・・・うん、何?」


「ジュンヤは俺が預かる。 そんな状況でドライブってのは無しだ。 クミの車だし、

何かあったらマズイだろう。」


「うん・・・・そっか、そうだね。 わかった。」

素直にショウは一つ目を聞き入れた。


「2つ目は真犯人探しはするな、お前たちは被害者でいろ。」


これは意外だった。

タケシの事だから、てっきり真犯人を探してくれるものだと信じていたのに・・・。


「なんで?ゲンなんか相当苛立ってたよ・・・マコトだって黙ってられないだろうし・・・」

スネたようにショウは呟いた。



その時だ。

グラウンドの駐車場へ向かう一台のパトカーが現れた。

ショウを迎えに来たのだ。


「タケシくん! 3つ目は? パトカー来たから時間がない」

ショウは焦りがちに聞いた。


「ジュンヤに悪い噂がある、後から本人から聞くが、どうやらクスリにまだ手を出してるらしい・・・」


「!!」

ショウは何も言えず絶句した。


「3つ目は、例えやってたとしてもアイツを信じてやれってことだ。 アイツは意思が弱いだけなんだからな、いいな?」

タケシはその低い声で、命令するように言い放った。



2人の警察官がまたガチャガチャとこちらに歩いてくる。


「タケシくん、3つ目は俺自身で判断するよ。 たぶんゲンだってマコトだってそうする・・・。」

ショックを隠せないまま、ショウは本心を告げ、電話を切った。


時計は18時54分を指していた。



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