罪
トゥルルルル・・・ トゥルルルル・・・ ガチャ
「もしもし?」
電話の向こうでジュンヤが少しショウの様子を伺うような声だった。
「さっきはすまんかった・・・ジュンヤ。 ちょっと俺も落ち着いた。」
それを察して、謝りの言葉からショウは話始めた。
「いや・・・いいって、俺がやらかしたんだから・・・。」
ジュンヤもその言葉を聴いて安心した様子だ。
「時間が無いから、早速聞くけど・・・、さっき警察はひったくり犯を捜してたんだ・・・。」
「お前・・・んなことやってないよな?」
ショウはハッキリとした口調で、言い寄った。
「はぁ?ひったくり?・・・・なんで俺が?」
さすがにジュンヤも混乱している。
「じゃ・・・何やったんだ?」
さらに言い寄る
「・・・・コンビニでライター・・・パクった。」
言い辛そうにジュンヤは呟いた。
「・・・そうか・・・そんだけか?」
さらに言い寄る。
「それだけ・・・。 それだけだって!」
ジュンヤはちょっと興奮気味に言い返してきた。
「わかった、ジュンヤ。 ゲンが今からそっち行くから、ちょっと二人で行動してくれ。 なんならこの辺りにはいない方がいい・・・。」
これは本心だ・・・事がややこしくなるぐらいなら、逃げてる間に解決する自信がショウにはあった。
「なんで?」
素直にジュンヤは聞く
「マコトが捕まったんだよ、ひったくり犯に間違えられて・・・。 で、ここにも警察がまた来る、俺を捕まえにな。」
「はぁ? なんでよ?」
「理由は今はどうでもいい・・・。疑いを晴らさないとな。」
ジュンヤに説明している時間はない、しかし目的だけは伝えなければならない。
「なら俺も疑いを晴らしにいくべきじゃないの?」
「いや、(万引き)やらかしたんだろ? ボロが出ると困るわ。」
言い聞かせるようにショウは言う。
「そうか・・・そうだな・・・。 うん・・・、やめとくわ。」
言葉に詰まりながら、ショウの言う事を飲み込んだ。
「じゃぁ、とりあえずゲンの車で・・・適当に出かけてくれるか?」
「適当って・・・。」
「あぁ・・・すまん。 じゃあ、港区の大関ラーメンいってラーメン食べてこいよ。」
「それ・・・いいなw」
電話の向こうでジュンヤがヒネた笑いを浮かべているのが分かる。
「OK?」
それを感じて、ショウは明るい声色で聞き返す。
「OK! すまんね、ショウちゃん、奢ってもらって!」
もう、ジュンヤはいつもの調子だ。
「アホか!金は出さねぇわ!!」
笑いながら、ショウも思わず突っ込んでしまった。
「じゃー家で待ってろよ、ジュンヤ。 ゲンの初ドライブの相手は頼んだぜ、じゃあな。」
ジュンヤを持ち上げるようにそう言って、ショウは地元から遠ざける確信を得た。
「ちょっと待った。」
ゲンが電話を切ろうとするショウに詰め寄り、電話を取上げた。
「お前、家でじっとしてろよ! 家の前についたらワンギリすっからよ。」
ゲンは疑いと、憤りを持って、強い口調でそう言った。
「ゲン・・・・」
ジュンヤもゲンの言い方に事の重大さを感じているのか・・・。
「良かったな、ゲン。 初ドライブの相手が俺みたいなカワイ子ちゃんでww」
「殴るぞ!お前ww」
ゲンも思わず笑ってしまいそうになった。
「じゃあ、お化粧しながら待ってるわよ、ゲンちゃん!」
そう明るい雰囲気を振りまきながらジュンヤは電話を切った。
18時48分・・・後8分