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地元  作者: 馬
6/12

タバコ

電話を切り終えたショウはベンチに深く腰を掛け直した。


ポケットに手を伸ばし、タバコを取り出す・・。

ソフトケースのマイルドセブンライトは吸い始めた頃から変わっていない。

その端を掴んで上下に振り、タバコを一本取り出す。



「お・・・おいっ、何がどうなったんだ??マコトなんだって?」

電話のやり取りにおける異変にゲンも気づいている。


「ちょっと待った、俺も整理してる・・・。」

そう言いながら、タバコに火をつける。


「マコトは誰と居たんだ? 誰としゃべってた??」

ゲンが急かす。


「警察・・・」

ショウは煙を下に向けて吐きながら、そう呟くように答えた。


「はぁ? なんでよ? なんでマコトが警察といるんだよ?」

ゲンもマコトの性格を把握している。

喧嘩っぱやい所なんかを除けば、早々警察に世話になるような事をしないのも、

承知だ。


「アイツ自身も「なぜか」って言ってたな・・・。そんでもって警察も「ひったくりの容疑」って・・・。」

ショウはタバコを持った手で頭を抱えながら、思い返す。


「おいっ!! マコトまでやらかしたのかよ?」

ジュンヤに続いて、マコトまでも・・・? ゲンは信じられないといった疑問をそのままショウにぶつけた。

そして続けざまに言った。

「あいつが? そんなことする奴じゃねぇだろ?ジュンヤならまだしも・・・」


「なぁゲン・・・ちょっと落ち着け、・・・それとジュンヤならって言うのも無しな・・・」

ショウはさらに俯き加減になって頭を掻いた。


ショウも心ではジュンヤの事は不安があった、しかしそれは口にはしない。

(ジュンヤはチラっと盗った・・・誤って終いにする・・・そう言った。)

(いくらなんでもそれで済む訳がない、それぐらい誰にだって分かるはずだ。)


ショウは顔を上げ、吐いた煙の行く先を見つめながら、考えている。



「なんでよ? アイツ全然変わってねぇって!まだ万引きしやがるし、仕事だってまともにしてるようじゃないぜ?」


ゲンとジュンヤの付き合いは古い。 幼稚園からずっと一緒で、中学校時代は共に万引きしたり、

原付を盗んだり、カツアゲしたり、親の金くすねて遊んだり・・・と悪事を働いていた。


二人の大きな違いは一つ。

ゲンにはおっかない父親がいて、ジュンヤには父親すら居なかったことだ・・・。

中学卒業と同時に父親の命令ともいえる薦めで、ゲンは大工の修行に入った。

ジュンヤはなんとなく私立高校に入った、そして即中退・・・。


ゲンは父親の影響か、そういう教育の賜物か、仕事だけは真面目に取り組んでいた。

勉強はもちろん苦手で、運動は得意な方だった。

ジュンヤも勉強は苦手。、運動も苦手。


ゲンから見ればジュンヤはいつまでも成長しない奴。

ジュンヤから見ればゲンは良い子ブッたというか、裏切ったというか、眩しいというか。


「まぁ、お前だからそうやって言えるのかもな・・・アイツのこと。」


そういいながらショウが吹かすタバコも、最初に吸い始めたのはジュンヤだ。

ジュンヤは先輩の影響で、ゲンはジュンヤの影響で、そしてショウもジュンヤの影響で。


ショウもゲンの成長というか変化には一目置いていた。

社会人として立派に歩みだしたゲンと学生である自分では大きな差がある。

ショウにとって社会にでる時は大学を卒業してから、そう決めていた。

だから、社会に出るまでの5年間にその差は開くだろう。

しかし、長い目で見たときにその差は必ず埋まるし、

追い抜く事はできる。そう確信しているショウにとってゲンの存在は身近な目標であり、

よい関係であった。


タバコを吸い終えながら、ショウは立ち上がった。


「よし、それじゃーお前に任せるわ。」

ショウは整理がついたというより、結論を見出していた。


「はぁ?何を?」


タバコに火を着けようとしたゲンの手が止まった。

ゲンは検討もつかないといった様子だ。


公民館の横にある時計は18時43分を指していた。 警察が迎えに来るまで後12分。


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