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9章:陽炎残る秋季大会

長く厳しい夏休みが終わり、二学期が始まってから数週間。グラウンドの土はまだ夏の熱を帯び、9月に入っても朝晩の暑さは残っていた。日中の強い日差しが照りつける中、球児たちの意識は、すでに夏の大会で果たせなかった甲子園への新たな一歩、秋季大会へと向かっていた。練習の熱気は夏にも増して高まり、誰もが自身の成長をアピールしようと必死だった。

そんな中、ついに秋季大会のベンチ入りメンバーが発表される日が来た。

グラウンドに向かう途中、友生は飯田と小高と顔を合わせた。

「はぁ〜、緊張するな。前回は本当に悔しかったからな。今度こそはベンチ入りしてやる!」

飯田が大きく息を吐きながら言った。その表情には、夏の悔しさと、秋にかける強い決意が滲んでいる。

「お前は、いつも口だけは達者だよな。ピッチャーは武藤先輩だけじゃなくて毛受先輩もいるぞ」

小高が冷静に、しかし少し挑発的に返す。飯田と小高は、普段からこんな軽口を叩き合う仲だ。友生もその輪に入ろうと

「俺もいるぞ」

と一言言うと飯田と小高が顔を合わせる。

「お前、なんか変わったよな。自信に溢れてるというか……前までそんなこと言わなかったろ」

飯田が目を丸くして言う。

「いや、良い傾向じゃないか?ピッチャーをやるならそれくらい我が強くないとな。俺も元ピッチャーだからわかる」

小高が感心したように話す。友生は少し顔が熱くなったのを感じた。

監督が部員全員をグラウンドに集め、その場に張り詰めた空気が漂う。

「今から秋季大会のメンバー発表を行う。新チームの編成としては夏期間中に試行錯誤していたがこれが現状のベストメンバーと言える。だが今回名前が呼ばれなかった者も決して実力がなかったわけではない。各自心得て聞くように!」

更に空気が張り詰める。

「背番号1、武藤!」

絶対的エースの名前が最初に呼ばれる。当然の結果に、武藤は淡々と前へ進み出る。

「背番号2、神野裕生!」

友生は思わず目を見開いた。兄の裕生が、堂々と正捕手の背番号2を勝ち取ったのだ。裕生の顔には、苦労が報われた安堵と、新たな責任感が入り混じった表情が浮かんでいた。

「背番号3、加藤!」

絶対的な4番バッター。身長こそそこまで大きくないもののどっしりとした身体からはオーラを感じる。

「背番号4、竹内!」

2年生で守備が安定した選手。今年の夏の大会はベンチ入りすらしていなかったので大躍進だ。

「背番号5、小林!」

東海西高校の野球部にいるだけで相当野球が上手いはずだが、その実力者達が口を揃えて天才だという片鱗は友生もしっかり感じ取っていた。4番バッターはこの小林が座るのか、加藤が座るのか。友生は既に気になっていた。

「背番号6、毛受!」

夏はセカンドを守っていたユーティリティプレイヤー。全ての水準で評価が高く、この秋の大会は内野の要を務める。

「背番号7、山内!」

夏はセンターを守っていた俊足の2年生。打撃アベレージも高いので主軸を任されそうだ。

「背番号8、清水!」

何とここで1年生の清水の名前が呼ばれる。見守る他の1年生の雰囲気が少し変わるのを感じた。

「背番号9、芳山!」

強肩強打の外野手。守備に少し難があるがそれを補うだけの打撃力がある。

ここまででレギュラーの発表が終わる。友生が選ばれるとしたらこの10から20の間の番号だと発表前からわかっていた。自分の名前が呼ばれないかと更に監督の声に耳を傾ける。

「背番号10、飯田!」

2番手投手の番号10番に飯田の名前が呼ばれる。左投げの速球派。最近最高球速が142を出した、と本人が喜んでいた。

その後次々にレギュラー陣や主力選手の名前が呼ばれていく。控えキャッチャーの12番に以前二軍で友生ともバッテリーを組んだ下地が選ばれていた。友生は、自分の名前が呼ばれるかどうかに集中しながらも、仲間たちの喜びに静かに胸を熱くしていた。特に、裕生が2、清水が8、飯田が10を勝ち取ったことに、友生は同期の活躍を誇らしく感じつつも、内心では「自分も負けていられない」という闘志を燃やした。

そして、ついに番号の発表も後半に近づいてきた。友生の緊張感はマックスになっていた。

「背番号18、小高!」

二軍の小高が背番号18としてベンチ入りした。小高が隣で小さくガッツポーズをしているのが見えた。ピッチャーを下され、外野、内野に回され半年。ここで背番号を手にして感動に震えているのがわかる。

「背番号19、秋本!」

なんとあの秋本までもがメンバーに選ばれた。本人は飄々としているが、喜びが隠しきれていないように見える。

そして最後残された番号が一つ。友生の心臓は高鳴る。メンバーの中に自分の名前はまだない。呼吸を整え、監督の次の言葉を待った。

「背番号20、神野友生!」

その瞬間、友生の胸に、熱いものがこみ上げた。名前が呼ばれた! 憧れの背番号。甲子園に繋がる秋季大会のメンバーに、ついに名を連ねることができた。友生は、一歩前へ進み出ると、監督の顔を見上げた。監督は無表情のまま、しかしその目に微かな期待の色を宿しているように見えた。友生の横では、小高も背番号18を手に、控えめながらも喜びを噛み締めているようだった。20の背番号から顔を上げると、ベンチ入りを果たせなかった者たちの悔しそうな表情が目に入る。彼らの分まで、自分は全力で戦わなければならない。友生は、ユニフォームに縫い付けられた「20」の数字を指先でなぞり、改めて決意を固めた。


ベンチ入りメンバーが発表され、秋季大会への期待が高まる中、友生は日課の自主練習を続けていた。夕食を食べ終わり、時間は21時近く。ブルペンで投球フォームの感覚を確かめるように黙々とシャドーピッチングを続けていると、そんな友生の背後から、珍しく声がかけられた。

「おい、友生」

振り返ると、そこにいたのは秋本だった。いつもは周囲を寄せ付けないような独特のオーラを放っており、必要最低限の会話しかしない秋本が、自分から話しかけてくること自体がまず驚きだった。友生は、思わず手に持っていたタオルを落としそうになる。

「……秋本?」

「お前、チェンジアップ投げるだろ」

秋本は単刀直入に尋ねた。普段の彼なら、他人に興味を持つような発言は一切しない。ましてや、格下であるはずの友生に、だ。

「ああ、まあ、一応は」

友生は警戒しながら答えた。秋本の真っ直ぐな視線に、少し居心地の悪さを感じる。

「ちょっと、教えてくんねえか」

友生の予想を裏切り、秋本は真剣な眼差しでそう言った。その声には、僅かながら焦りのような響きも感じられた。夏の練習での彼の苛立ちを友生は思い出していた。あの豪速球を誇る天才が、まさか自分に教えを請うとは。友生は、秋本の変化に驚きを隠せない。

「……いいけど。俺のでよければ」

友生がそう答えると、秋本の表情がわずかに緩んだように見えた。その日から数日、二人は人目を避けるようにブルペンでチェンジアップの練習を重ねるようになった。友生は、握る感覚やリリース時に意識していることを伝え、秋本は時折不機嫌になりながらも、しかし必死に吸収しようとしていた。秋本の投球からは、以前のような気だるさが消え、野球に対する純粋な向上心が垣間見えた。


秋季大会開幕まであと数日。チームは最後の調整と実戦経験を積むため、地元の中堅校との練習試合を組んでいた。この試合は、秋季大会での登板機会を得るための重要なアピールの場だ。

試合は序盤から東海西高校が優位に進め、打線が繋がり次々と点を重ねていく。先発のマウンドにはエース武藤が上がり、相手打線を圧倒していた。そして、試合の中盤、監督はブルペンから戻ってきた秋本に声をかけた。

「秋本、次からマウンドに上がれ」

「うっす」

秋本は頷くとマウンドへと向かった。その表情は、いつもの気だるさはなく、引き締まっていた。友生が教えたチェンジアップが、彼の投球をどう変えたのか。友生はベンチで固唾を飲んで見守った。

スラっと背が高く手足も長い秋本がマウンドに上がるとその容貌に相手高校も目を丸くする。それはそうだ、なんて言ったって名門校に一人茶髪の球児がマウンドにいるのだから。ゆったりと振りかぶって投げ込んだ一球目は、唸るような剛速球。相手打者はバットを振ることすらできない。ミットに収まる乾いた音が、グラウンドに響き渡る。

「ストライク!」

その後の秋本の投球は、まさしく圧巻だった。これまで同様の怪物のようなストレートはもちろんだが、友生が教えたチェンジアップが豪速球との緩急で相手打者を幻惑し、面白いように的を絞らせない。コントロールも元々良いので危なげなく三振の山を築き、打者を打ち取っていく。友生はベンチから、その完璧なピッチングにただただ見惚れていた。

「すげえな、秋本」

隣にいた飯田が、感嘆の声を漏らした。清水も、腕を組みながら真剣な眼差しでマウンドを見つめている。秋本は、たった一球種で劇的な変化を遂げた。しかもその球種も苦戦しながらもなんとか使いこなしているように見える。彼の投球からは、以前のような苛立ちや焦りはなく、自信と冷静さが感じられた。友生は、秋本の成長を目の当たりにし、自分ももっと上を目指さなければならないと強く思った。


練習試合で秋本が盤石な投球を見せ、チームの士気は最高潮に達していた。そして、待ちに待った秋季大会が開幕した。

東海西高校の初戦は、夏の大会での悔しい敗戦を経て、背水の陣で臨む一戦となった。相手は、かつて甲子園の常連だった古豪、聖徳学園。近年は低迷しているものの、その野球に対する姿勢と伝統は健在で、侮れない相手だ。球場外では、円陣を組み監督の言葉を待つように静寂が訪れた。

「夏は残念な結果だった。だがお前らの実力はあの程度ではない。この秋の大会で優勝し、春の甲子園に行く為に各自やることをしっかりやるんだ」

「はい!」

100人を超える部員の返事が響き渡る。

「オーダー発表!1番センター清水」

「はい!」

1年の核弾頭。小柄ながらパンチ力も秘めた特待生。噂では体力テスト全国1位らしい。

「2番レフト山内」

「はい!」

俊足巧打の左投げ左打ち。清水と同様小柄だがヒットメーカーでもある。

「3番キャッチャー神野裕生」

「はい!」

堂々のクリーンアップ。打撃面でもかなり期待されているのがわかる。

「4番ファースト加藤」

「はい!」

小林がメンバーに入ったので4番かどうかは友生も気になっていたが今日は4番のようだ。

「5番サード小林」

「はい!」

帰ってきた天才。二軍でも大暴れをしていたのでそれを買われての5番なのだろう。

「6番ライト芳山」

「はい!」

体重100キロを超えた巨躯。その見た目とは裏腹に意外と柔らかい打撃をするのが特徴だ。

「7番ショート毛受」

「はい!」

何でも屋という言葉はこの男の為にある言葉だろう。守備はどこでもこなし、エンドラン、バント、盗塁、はたまた投手までこなす器用さを持つ。

「8番セカンド竹内」

「はい!」

2年生で唯一公式戦出場なしの選手。だいぶ顔にも緊張の色が見えるが実力はもちろん申し分ない。

「9番ピッチャー武藤」

「はい!」

早々に終えてしまった夏の大会から2ヶ月強、元々の持ち球であるスライダー、チェンジアップ、シュートの他に新しくカーブを習得したと聞いた。

「ベンチの者もいつでも行けるように準備は怠るな!」

「はい!」

ベンチ入りしているメンバーは球場に、選ばれなかった者はスタンドに各々別れる。その時、ユニフォームを着た大きな男がこちらにゆっくりと近づいていくる。

「久しぶりだな、大野」

低い声が響いた。大野は、その声に気づき、振り返る。

「……久野(くの)か。お前でかくなりすぎだろ」

大野は、どこか懐かしむような、しかし複雑な表情で言った。久野と呼ばれた男は笑顔を作る。

「お前こそ、まだ野球やってたのか。てっきりもう辞めたかと思ってたぜ」

その言葉を聞いて元チームメイトなのだと友生は察した。大野は以前左肩を痛めたと話していた。

「ああ、まあな。色々あって、な」

大野は多くを語らなかった。久野はそんな大野の様子をじっと見つめ、やがて視線を球場に向けた。

「お前が故障してチームを辞めた後、シニアでもしっかりエースを任されたよ。その後背も伸びたし筋肉もモリモリついてな。……正直俺はお前からエースを実力で奪いたかった。もし俺がもう少し早く力をつけてたら、お前を無理させずに済んだかもしれない。まあ、今さら言ってもしょうがないけどな。その後高校入って、まだ1年だけどこのチームのエースも任されるようになった。今日は頑張ろうな」

久野の言葉に、大野は見上げる。

「俺はあいにくベンチ入りしてないんでね。ただ、今日はお前、ボコボコだろうよ」

その言葉にフッと久野は笑う。

「やっぱ変わんねーな。そういや神野もいるだろ?」

その言葉と同時に裕生が近づいてくる。

「久野じゃねーか。U-15以来か。聖徳に入ってたんだな。今日はよろしくな」

「噂をしたらなんとやらだな。今日は俺の球を受けるんじゃなくてバッターとして勝負だな。負けねーぞ」

握手を互いにすると久野が手を挙げて走り去っていく。大野が少し苦い表情をした後スタンドに走って行った。


友生は、この東海西高校のユニフォームに袖を通し、初めて公式戦の球場に足を踏み入れた。スタンドから聞こえる独特のざわめき、土の匂い、そして青々とした芝生のコントラスト。中学、高校を通じて、これまでテレビや雑誌でしか見たことのなかった光景が、今、目の前に広がっている。練習試合とは全く違う、張り詰めた空気。その緊張感に、友生の心臓は高鳴る。

試合前のシートノックが始まり、友生はキャッチボール相手の下地とグラウンドの隅へ向かった。この日も、以前と変わらず表情は冷静そのものだったが、友生には彼なりの緊張感が伝わってきた。

「……緊張してるか?」

下地が、普段より少しだけ声を張り上げて言った。友生は大きく息を吸い込む。

「はい。でもどちらかというとゾクゾクする方が強いです」

友生が言うと、下地は友生をちらりと見て、わずかに口元を緩めた。

「友生、意外と図太いな。ピッチャーには必要な資質だ」

そう言って、下地は淡々とキャッチボールを続ける。グラウンド整備の間に、スタンドからは応援団の太鼓の音が響き始める。東海西高校の応援席からは、力強いブラスバンドの音と、生徒たちの大きな声援が降り注ぐ。その応援の勢いに、友生の体の中に熱いものが込み上げてくるのを感じた。


聖徳学園のマウンドには先ほどの男、久野が立った。背も横もある大きな体格から投げ下ろされるボール。中学時代は130キロ超えない程度の速球だったと大野は言っていたが今投げている投球練習では140キロ程度に見える。もともと鋭く落ちるフォークボールを決め球にするオーバーハンド右腕だったらしい。その堂々としたマウンドさばきからは、古豪のエースとしての風格が漂っていた。

「聖徳学園は、粘り強い野球をしてくる。序盤で主導権を握り、絶対に流れを渡すな」

早速攻撃では、3番に入った裕生が鋭い打球でチャンスメイクし、4番加藤が持ち前のパワーでタイムリーを放つ。そして、5番の小林もそれに続き、軽々と外野の頭を越える長打で続く。東海西打線は序盤から繋がりを見せ、久野を攻め立てた。初回で2点を取るとチームも盛り上がる。そして東海西の先発マウンドにはもちろん、絶対的エースの武藤が上がる。初回からエンジン全開のピッチングで相手打線をねじ伏せた。

しかし、古豪の看板は伊達ではない。東海西打線に得点を許しながらも、要所では自慢のフォークで三振を奪い、粘り強く耐える。試合は中盤に差し掛かり、東海西高校がリードはしているものの、点差はなかなか開かない。

ベンチでは、友生が静かに試合の行方を見守っていた。投手陣の中で、武藤の次にいつ出番が来るかは常に意識していることだった。ただ、大差で勝っている場合ならともかく現状2-0。この展開で自分の出番はないと思っていた。

「飯田、友生、ブルペンで肩作っとけ」

「は、はい!」

友生は飯田、キャッチャーの下地、そしてキャッチボール相手の小高と共にブルペンへと向かった。飯田は顔こそ真剣そのものだがこの状況を楽しんでいるようにも見える。友生は今のこの段階でマウンドに上がると考えると身震いした。

試合はその後、東海西の猛打が爆発し6-0まで点差がついた。何球かブルペンで投げていると監督の視線がちらりとこちらに向いたような気がした。友生はさらに集中を高める。この試合展開なら1イニング投げられるかもしれない。

2年生の控え選手である上野がブルペンに来る。

「飯田、次の回から行くって」

友生は自分の名前が呼ばれると思ったが呼ばれたのは隣の飯田だった。

「よっしゃ!俺の高校デビュー戦だぜ!派手に行くぞ!」

舌なめずりをして腕を回しながらベンチに戻る。その後飯田は2回無失点と上々のピッチングを見せた。そして飯田の打席に回ると

カキーン!

インコースのボールを上手く腕をたたみライトスタンドに運んだ。高校初打席がホームラン。ガッツポーズをベンチとスタンドに向けて盛り上げた。

結局8回コールド、8-0で東海西高校は聖徳学園を破り、初戦突破を果たした。

試合終了のサイレンが鳴り響き、聖徳学園の選手たちが悔しさを滲ませながらベンチ裏に消えていく。そんな中久野だけはスコアボードに刻まれた点数をしばらく眺め続けていた。


迎えた2回戦。今日のスタメンは先日ホームランを打った飯田をファーストに置き、セカンドに毛受、ショートに小高、ライトに加藤が入った。相手は、無名の公立校だが1回戦を勝ち上がってきたのだから油断はしない。東海西高校は序盤から圧倒し、打線が爆発する。

カキーン

快音を響かせた打球は、あっという間に外野の頭を越え、次々と得点を重ねていく。試合は完全に東海西高校ペースで進み、じわじわと点差が広がっていく。

そして、試合の中盤、監督は友生に目を向けた。

「友生、準備しておけ。次からマウンドだ」

その言葉に、友生の心臓が高鳴った。ついに、公式戦のマウンド。夏の練習試合で得た自信を、ここで見せる時が来たのだ。友生は緊張しながらも

「はい!」

と返事をしてブルペンへと向かった。ブルペンで身体を温めながらも、心臓の鼓動はどんどん速くなっていくのがわかった。公式戦のマウンド。夢見た場所が、いま目の前にある。ついに公式戦初登板のマウンドが近づいてきた。

「やってやる」

そう呟いた声は、自分でも驚くほど落ち着いていた。

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