中層ボス戦
中層への最後の砦となる29層のボスは中級パーティの難所としてとてもよく知られている。
再生能力を持つオーガの雌雄二体、これを同時に相手にしなければならない。
「作戦通りに行くぞ!」
「「「はい!」♪」」
扉を抜けた先、薄暗がりに緑と青緑の巨体がそれぞれこちらを見て睥睨している。
リパルからバフを受けたシルとオルフィがそれぞれ分かれ、敵のヘイトを受け持つ。
そして部屋内で互いに距離を取り、混戦にならないよう調整する。
再生力の高いオーガを複数体相手にする場合考えるべきことは一つ。
「一体ずつ確実に! 『スロウ、ストップ!』」
「潰れなさい畜生っ! 『テンダリゼーション!』」
アシュキーの詠唱と同時、シルが相手をしていたオーガの天井が崩落する。
オーガは一瞬で瓦礫に押し潰され、見えなくなる。
「よしっ、オルフィーに加勢する!」
「了解!」「分かってる!」
仕留めたと判断した三人はもう一体の方へ視線を向ける。
そこには両腕を失い頭を垂れるオーガと、首に大剣振り下ろすオルフィの姿があった。
「前から思ってたが、リパル以外は元々余裕で下層行ける実力があるな」
「オルフィも私も別のパーティで深層目指してたんだからこれくらい当然よ。シルさんは知らないかもしれないけど、この辺りの冒険者で私のこと知らない人なんていないくらいなんだから」
「雑魚でごめんなさい……」
「リパル君のバフのお陰で簡単に倒せたのですから、自信を持ってください♪」
リパルは現状の自分がまだ何の戦略性もない戦い方をしていることを理解していた。ただ、今所持している魔法は6種類のみで、他のメンバーのように応用力のある臨機応変な能力の使い方というのはあまりできない。精々が魔法攻撃を反射する『リフレク』と、行動を停止させる『ストップ』を効果的なタイミングで撃つことくらいだ。
「リパル、その単純な補助魔法でできることは限られている。今回の遠征で溜まった素材を売って、戦闘経験を元にしてまた新しい魔導書を買えばいい」
「そう、ですね。でも今の能力でももっと上手く使えるはずなんです、誤射が怖くてできてないだけで」
「ふっ、なら私からは何も言わん。頑張れよ」
「はい、ありがとうございます」
それから中層に降りるまでの間、リパルは補助魔法を手に浮かべながら操作の練習を繰り返したのだった。