デカ乳女
「『アースエッジ!』」
アシュキーの魔法により迫りくる蜘蛛の群れがその数を半分に減らす。
魔法を受けていない後続の蜘蛛が壁や天井を這い後に続く。
「リパル、いくぞ」
「『ヘイスト、プロテス!』」
シルの開戦の合図と共に、リパルは魔法を発動する。
一瞬で加速したシルは十数匹の蜘蛛に近づくと、一刀の下に斬り伏せていく。
「オルフィ、そっちに行った個体は任せる」
「余裕です♪」
「『ヘイスト』」
天井からシルを躱し、後衛を狙う蜘蛛に大剣を構えるオルフィ。
ヘイストによって強化されたオルフィの一撃は、三体の蜘蛛を紙切れのようにミンチにする。
「戦闘終了。ずいぶん慣れてきたな、これなら明日から中層に行っても問題なさそうだ」
「四〇層は毒対策が必須ですが、リパル様は状態異常治療も行えるのです?」
「ああ、それは私がやる。――これは後々の話だが、全員魔導書で基礎的な治療魔法は覚えてもらうつもりだ」
「流石は古の英雄ね、全部できて一人前ってことかしら」
「ふっ、深層では戦略的に分断されたりすることもあるからな。そういうときに自分で対処できれば生存率は全く違う」
おー、と感心したように声を上げる三人。
全員から尊敬の眼差しを向けられてシルは照れくさそうに苦笑いする。英雄でもそういった仕草はとても人間臭い。
「リパル、今のは悪くなかったわ。今後もその調子でやりなさい」
「う、うん。ありがとう」
「アシュキーがデレました」
「は? ぶっ飛ばされたいの? オルフィ、アンタはその馬鹿みたいな乳をもう少し隠しなさい!」
「やん♡」
「変な声出すな、アナタは口に食べ物詰めてた方がまだマシだったわね!」
「酷いですぅ♡」
女子二人が乳繰り合っているのをリパルは顔を真っ赤にして眺め、それをシルが弄る地獄の光景が繰り広げられた。まるで迷宮攻略中とは思えない喧しい行軍である。
その声に敵が寄ってくるまで諍いは続くのだった。