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ゲーム実況

―――聖歴1317年


 その日クエストから帰ってきた私たちがパーティハウスで休んでいると、ノックされた扉から「やぁやぁ」と狂信者が訪れた。そして自分ちのようにソファにくつろがり、こう言った。


「ギャルゲ作りたいだけどさぁー」

「ギャルゲ」


 その特殊用語に、私は思わず反応してしまう。


「偶像的なのをゲームから作っていこうと思って」

「うーん?」

「反発にあったわけよ……」

「なにそれちょっと気になる」


 ギャルゲそのものも、反発も。


「貴族の子女たちの学園生活なんて……ハシタナイってさぁ……」

「あー」

「時代はまだ早いのかなぁ」

「そんなこと言ったら乙女ゲームも無理そうだね」

「勇者とか聖女ならいけるかもしれないけど……」


 う、狂信者がまた何か期待を込めた瞳で私を見ている。


「いやですよ」

「そこをなんとか」

「え、なんの話にゃ?」

「面白いこと?」


 姫と王子が会話に入ってきた。あ、なんかまずい人に聞かれたような……嫌な予感がする。


「聖女ちゃん、アイドルに向いてると思わない?」

「にゃー!!!」

「なにそれいいじゃんいいじゃん」

「……」


 勇者が無言で私と狂信者の間に座ってくれた。お!珍しく気が利くじゃん。


「アイドルって美しい花みたいな人!って言ってたやつだよね?」

「いいにゃいいにゃ!!」

「絶対いいと思うんだけどなぁ」


 狂信者は、だってさ、と続ける。


「清廉潔白なイメージがあって、身分の壁のない、だけど高嶺の花のようなそんな女の子……キミ以外にいる?」


 知らんがな。


「でもほんとそれ難しそうだよね。身分の高いものだと反発が起きて、かと言って身分の低いものだと人気が出ないだろうってやつ」


 王子が言う。


「分かってくれる!?夢を見させてくれる憧れの子じゃないと難しいんだよね」


 皆んながじっと私を見ていた


「……うん。他にいないかもにゃ」


 姫が言った。え?







(どうしてこんなことになったんだろう。本当に分からない……)


 結局私は最大限に妥協して、やってるネトゲの実況ならいいよ、と言った。

 こう見えても、廃人ゲーマーなのだ。我ながらすごいプレイしてる時もある。誰かに見せられたら面白いのになって思うこともあった。そんな心の隙に、付け込まれたような気がしないでもない……。

 なので、ゲームのプレイを録画機能で撮って、そこに上からネトゲの声を当てて動画サイトに載せることにした。その辺のやり方は狂信者が教えてくれた。





「こんにちはーっ聖女です。今日はぁ私の大好きなゲームを紹介したいと思います」


 ヒクヒクと顔を引き攣らせながらどこかで聞いた様な言葉をはいていく。クソなんでこんなことに。


「私は白魔法使いなんですけど、こん棒だけでダンジョンボスを倒す様子を見てくださいね☆」


 載せた動画の再生数は結構伸びた。

 それからも、動画を載せる度に地味に視聴者数を増やしていく。


 こんなコメントが付くことがおおい。

『神プレイじゃね?うまくね?勇者って勇者?』『聖女ちゃぁぁぁぁん』


 勇者がたまに映り込んでしまい、勇者の神プレイも話題になってしまった。

 私の口の悪さはまだそんなに……バレてない。

 王子と姫は名前を載せない形なら出演することもあった。


 そんなある日、パーティでのボス戦の様子を初めての「ライブ配信」で動画サイトに載せた。

 そしたら、ライブ配信史上最大の視聴者数になったのだ。


(え、まさか私に、配信者としての素質が……!?)


 一瞬そんなことを思ったけれど、怒涛のコメントで理解した。


『勇者ぁぁぁぁ』『なにこれすごい』『人類越えの強さ』『本物の勇者がここにいた!』


 勇者の人気で見られてただけだった。






「……アイドルなんて無理です」

「なんかごめん。元気出して」


 とうとう狂信者に慰められてしまった。

 結局、配信は向いてなくて止めた。

(幽閉聖女ちゃんを探そうpart600)

ゲーム実況聖女ちゃん

可愛いよ聖女ちゃん

上手いよ聖女ちゃん

もう配信アカウント消えてね?

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