三
結局少女は警備員や所員に引きずられるように連れていかれ、話はできなかった。その上抗議集会は不意の闖入者に水をかけられたようになり、熱気は冷めてしまった。
エップネンはとりあえず主張をまとめたが、始めたときの盛り上がりは戻ってこず、生焼けのように終わってしまった。
「じゃあ、あの子がトリーンなんだな。超越能力者の」
食堂に仲間たちが集まった。腕を組んで黙っているエップネンのまわりであれこれ話している。
「まあ、終わり方を除けばあんなものだろう。言うべきことは言ったし、学長に抗議もした。あそこまで言われて無視はできまい。なんらかの反応はあるはず」
まるで茶菓子を囲んだ雑談のような口調だった。その真剣みの無さに組んだ腕に力が入った。
「どうした? ヨウハー。むっとして」
友人が声をかけた。
「話を聞きたいって言われたが、なにを知りたかったんだろうって思ってな」
「あの子か。気にするなよ。紋無しだ」
民草を紋無しと言うのは貴族の若者の流行り言葉だった。あまり良い意味合いではないが、それゆえに学生たちはわざと使っていた。
「それはそうだが、魔王大戦じゃ貴族だろうと紋無しだろうとかまわず被害が出た。なのに紋無しには真相がふせられてる。おかしくないか」
「おかしくないさ。行動の責任をとれるのは貴族だけだからな。紋無しは無責任でいられるし、考えなくていいんだから知る必要もない。だろ?」
返事をしないエップネンをのぞきこんでささやく。
「おまえ、まさか平等なんて言い出すんじゃないだろうな」
「まさか。この世には階梯ってもんがある」
「ならいい。俺たちの抗議はあくまで貴族として行ってるんだ。学外の紋無しは知らなくていい」
その学生はエップネンの肩を叩いた。
「今日の演説は始めとしては大成功さ。な、ヨウハー、学長の出方を待とう」




