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 別れはあっさりしたものだった。もう風景を覚えてしまったオウルーク山の峠。いつものように干し肉をふるまうクロウ。ディガンは密かに酒を持ってきていた。仕事中だがいいだろう。

 今夜の宿は路上だがどうせだれも来ない。それに鬼は退治したし、祠もある。ここでは街中のように安心していられた。


「いよいよか」

「別に今生の別れってんじゃない。隊長、しんみりしなさんなって」

「そう言うおやじこそ山に入ってからずっと黙ってたね」

「まあな。で、クロウ。大魔法使い、まだいるのか」

 木々の奥の方を親指で指した。

「いる。通信で確かめた。呪術文様の最後の調査と後始末してる。再利用されないようにな」

 みんな肉をあぶっている。マールのやり方がうつっていた。ディガンが聞く。

「会えるのか」

「ああ、それどころか紹介状書いてくれる」

「すごいじゃないか」

 ペリジーが感心したように言った。

「つまり、おまえの懸念、大魔法使いも認めたんだな……」

 ディガンはもう赤くなった鼻をこすった。

「……だがな、その謎、解いたところでなんの得になるんだ。おまえにとって」

 三人はクロウの顔を見る。だれも口を開かない。細かい傷だらけの手が動いて小枝をくべた。

「もう戦争はごめんだ。死ぬのは嫌だし、死んでこいって命令するのもまっぴらだ。それでも理がある戦いなら無理にでも自分を納得させるが、呪文の親玉なんかに引っかきまわされたくない。二度とな。だからどこかのだれかがまたあんなのを作ろうってんなら事前に阻止してやる。それがこれからの俺の闘いだ」


 ディガンが火の一部を灰で覆って小さくした。


「もう寝よう」


 翌朝、肩を抱き合う。昨夜の話を蒸し返す者はいなかった。

 クロウは荷馬車の準備を手伝った。


「世話になった」

「体に気をつけてな。それと、首を突っ込み過ぎるなよ」

「説教か。変わらないな。隊長こそ飲み過ぎるなよ。それと、本できたら知らせてくれ」


「謎解きもいいが、落ち着くことも考えろ。大砲さんよ」

「そのまま返すぜ。おやじ。あんたこそいい人探せよ。家と畑持ってんだから、次は家族だ」


「ほんとに魔王の正体しらべる気? やばくなったらすぐ逃げなよ」

「ありがとう、小僧。逃げろってのは役に立つ忠告だ。それと、修行終わって商売始めたら教えろよ。ひいきにするから」


 荷馬車がきしみを上げて動き出す。クロウは見えなくなるまで道の真ん中に立っていた。最後に万事順調の手信号を送り、それから山の中に入っていった。


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