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 ケラトゥス・ウイングの尋問を任せていた兵士の一人が駆け上ってきた。没収した書き付けを隊長に示す。うなずくと隊の魔法使いに見せた。

「クロウさん、あなたも見てください」

 急いで書かれたと思われる薬品名がならんでいた。初歩の初歩だ。

「呪術文様だな。なら絞りこめる」

 二人は呪術文様の気に絞って探り始め、すぐに方向を定めた。

「あっちだが、あんな所になにがあるんだ?」

 魔法使いはいぶかしげに露出した岩肌を透かすように見た。

「とにかく行きましょう。二人とも感じたんだ。あそこから気が出てるならなにかあるはずだ」

 さらに足場の悪いところを登り、岩塊を探る。

「小さい穴があります。奥に洞窟が続いてます」

 兵が報告した。隊長が即座に命令する。

「灯りを。おまえとおまえ、行け」

 かがんで入っていく。時間をおいてまた二人入っていった。

 指一本ほどで一人戻ってきた

「洞窟はゆるやかに曲がっていて、奥の突き当りに部屋があります。物資が蓄えてありました。ただ、だれもいません」

 隊長は魔法使いとクロウを見た。

「ここです。気はこの洞窟から出ています。行きます」

 魔法使いが言い、クロウも行くと言った。

「いや、クロウさんはここに残ってください。これは我らの任務です」

 しかし、と言いかけたが隊長は手で制した。

「言い争っている時間はありません。あなたがたは協力者です。それには感謝しますが、トリーンは我が隊の隊員です」

 クロウの肩をディガンが叩いて首を振った。魔法使いが入っていくのを見送るが、黒い目の周りのしわが一段と深くなった。

 指一、二本分だが、じりじりする時間が経った後、魔法使いが首を振って出てきた。

「確かに気は感じるんですが絞れません。もっと人数が必要です」

 隊長が決断し、外に二名残して全員入った。さすがに奇襲はないだろうとの推測だったが、もしまちがっていたら全滅もあり得る。それほど焦っていた。

「こうなったら手探りだ」

 ペリジーが自棄になったが、ディガンが賛成した。

「それがいい。隠してあるものを探すには手が一番いい」

 全員の手が泥だらけになるのにそれほど時間はかからなかった。一人が声を上げる。

「ここ、ちょっと灯りを! 岩がずれて隙間がある。通れるかも」

 隊長が奥に向かって呼びかける。

「おい、だれかいるのか! おとなしく出てこい!」

 反響がおさまってもなんの反応もなかった。もっと大声を出したがおなじだった。

「行きましょう」

 クロウが言うが、隊長は首を振った。

「こんな狭い割れ目、待ち構えていたら決死になる。部下は送れん」

「わたしは部下ではありません」

「民間人ならなおさらだ。そのくらい分かれ!」

 思わず声を荒げた隊長に兵士たちが目を伏せた。だれも行きたくはない。

 クロウが口を開く。前にも使ったが、すぐ答えられる質問で気をそらせるつもりだった。

「ほかの気は? どうです。わたしは感じませんが」

「わたしもです。しかし、気を消していることもあり得ます。と言うか確実にそうでしょう。この向こうに何人いるか分からない。それでも行きますか」

 そう答えた魔法使いは、自分が行く、と目で訴えていた。クロウはその目を見た瞬間、考えずに体が動いていた。

「待ちなさい!」

 身をひるがえし、割れ目に滑り込んだ。


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