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 こんな真夜中にずっと森を進むのは無茶だ。マルゴットは脇街道を探した。確かこのあたりを並行して走っているはず。そこをたどり、途中でそれてオウルークの庵に向かう。そこでケラトゥスと合流してトリーンを引き渡す計画だった。

 しかし、月明りの中目を凝らしても道らしい筋は見つからなかった。記憶違いかと焦り始めた。いや、残った二人が隊を混乱させているし、時間は稼げているはずだ。焦るな。よく探すんだ

 何度目だろうか。木々の間に目を走らせたとき、明るい線を見つけた。踏み固められた細い脇街道だった。

 脇街道とはいえ道は道なので、山中の森林よりは楽になった。背のトリーンはかなりの揺れにもかかわらず麻痺したままだ。空を見上げ、木の間から月と星を見て方角を確かめると、早足で進み始めたが、すぐに立ち止まった。なんだ、あの音は。蹄? 馬か。野生ではない。複数で規則正しい。こっちに向かっている。

 考える時間はない。また森に飛びこむとしゃがんで気配を消した。


「待て」

「どうした。気でも感じたか」

「一瞬感じたんだが消えた」

「鬼か」

「おどかさないでよ」

「もういいだろ。消えたんなら先を急ごう」


 馬の荒い息と蹄の音が遠ざかって行った。静かになってから脇街道に戻る。

 なんだ、この臭いは? 汗臭い。馬?


 突然、気が現れ、火球が足元に落ちた。目がくらむ。同時に指笛。木の間から馬に乗っただれかが出てきた。

「気配を消せるのはおまえだけじゃないぞ……。なんだ、あんたか。なにしてる? 背負ってるのはトリーンか?」

 詰問するような口調だった。目が慣れてくると相手が見えた。治してやった魔法使いだった。クロウとかいう奴だ。

「鬼の襲撃だ。この子を避難させている」

「分かった。では護衛に当たる」

 声の調子はまったく変わらず厳しいままだった。戻ってくる蹄の音がする。

「護衛はいい。こっちは安全だ。それより隊の方に加勢してやってくれ。あっちの主街道だ」

 見なくても背後に奴らがそろったのに気づいた。じりじりと道の端に寄る。

「動くな。しかし妙だな。避難ならなぜ気配を消してやり過ごそうとした?」

「あわてていて分からなかったんだ。賊かもって」

「なら、いまは分かったな。トリーンを引き取ろう。馬の方が運びやすい。それにしても静かだな。ぐっすりおねんねか」

 クロウが近寄ってくる。背後の三人も詰めてきた。

「おまえたちこそ動くな」

 右手を上げ、人差し指に霊光をこめて青白く光らせ、背中のトリーンに突きつけた。ケラトゥスに一発分渡したのとおなじ氷の霊光だ。

「なんのつもりだ」

「おとなしく行かせろ。おまえたちはなにも見なかった。そうだな?」

「そっちこそよせ。いまなら間にあう。このことはだれにも言わない。避難も信じてやる。だからその子に手を出すな」

 老人の声だった。背後の方だ。

「下賤の民が貴族のやることにいちいち絡んでくるな。鬱陶しいんだ」

 マルゴットは言い放ち、森に駆け込んで気配を消した。


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