四
夏の初め、星祭りに合わせて通行税の徴収がはじまった。その頃にはペリジーからのを含め、二段目の税の金額や徴収条件の情報が集まっていた。
それを基に運送料金と経路を決定する。出発地と経由地と目的地、予算はどのくらい? 望みは最速か最安か、荷の混載は可能か、また、できるだけ荷馬車が空荷で移動しないようにする。考えられる組み合わせは無限にあるように思えたし、答えを導き出すやり方なんかないんじゃないかと運送業者たちは天を仰いだ。
だが、助けが来た。エランデューア家お抱えの数学技術者と魔法使いたちがその演算を自動で行う呪文を開発し、埋めこんだ荷札を有償で提供することになった。必要事項を書き込めば費用と経路が自動的に浮き出して完成する。
「すげぇな、これ」
実地試験を見てペリジーは感心している。ほかの三人も自動演算荷札を手に取って驚いている。
「これを王室に認めさせようと動いています。この荷札そのものを役人に提出できる公式書類扱いとしてもらう予定です。そうなればもっと効率よくなりますよ」
ニキタ・エランデューアは得意気だった。この荷札の権利料から得られる利益、それと、うまくすれば帝国の公式書類の提供という栄誉。エランデューア家の隆盛はまちがいないだろう。
クロウはおそるおそる自動演算荷札をつまみ上げ、裏表を見ている。その様子はまるで火傷を怖がっているようだった。
「なんだ、大砲。おかしなところでもあるのか。そいつは噛みつきゃしないよ」
マールがからかうように言った。
「いや、な。急にこいつが恐ろしくなってさ。だって、いま説明してもらった呪文は、人間が頭を使って割り出す組み合わせを演算するんだろ? そういうの突き詰めていけばこいつ、考えてるって言えるんじゃないかって思ったらちょっと震えがきた」
みんな笑ったが、ニキタだけはぎゅっと唇を結んだ。
「クロウさん。それは家の数学技術者が言ったこととおなじです。演算呪文が人間並み、またはそれ以上の思考を行えるようになる可能性はあります。ただし、あくまで理論上は、です。それだけの複雑な呪文を破綻なくどう組み上げるか、それを駆動するための大量の霊力なり魔力なりをどう集めるか。たとえ規制条約がなかったとしても見当もつきません。なのでその点については心配せず忘れてください」
「そうします。エランデューア様。わたしにはついていけない話みたいだ」
「さあ、最初の仕事の段取りは? その荷札に教えてもらおうじゃないか」
ディガンが明るく言い、マダム・マリーが手元の台帳から書き込んで渡した。
「よし、行こう。まずはここで郵便と荷を受け取って、オウルーク山を超えてローテンブレードの飛び領地だな。それからぐるっと大陸を回って中央近辺、と」
荷札を回し、みんな目を通す。クロウはまだおっかなびっくり不思議そうにしていた。




