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 謹慎中でも手紙は届く。病気を建前にしているので見舞いが多かった。

 しかし、内容は暖かくはない。大半の、家紋が押された公文書の形を取っているものは、今後は付き合いを考え直し、距離を置きたいということをごく丁寧に書いていた。そうでない場合も公的な場所での接触は控えたいとあった。

 一方で慰めになったのは、紋のない私文書ではあったが、ほんのわずかになってしまった友人たちの、今後も変わらず……、という手紙だった。


 オウルーク・ブレードはそうした手紙の束から一枚をつまみ上げた。ウィングの手。紋はないがすぐ分かった。

 いまさらなにを、と思ったがいつもの習慣で開封した。そして、読み終わるともう一度頭に戻って繰り返し目を走らせた。

 ウィングはぎりぎりのところで秘密を守ったようだ。基地の存在を隠し通したとある。だから時期を見て再起を図りましょうぞと意気盛んに書いていた。魔宝具化計画を再開するつもりなのか。秘密基地はその拠点とするつもりだともあった。

 オウルークは顎をなでた。秘密基地の件はたしかに不審に思っていた。当主も王室も動いている様子がない。だが、単に泳がされているだけとも考えられる。いや、その方があり得る。下手に関係がある証拠でも握られたらブレード家は再起不能なまでに潰されてしまう。

 そもそもこの手紙が罠では? ウィングはとっくにわたしを見限り、当主の方についてこれをよこしたのかも。うかうか乗ると穴に落ちるだろう。まさかブレード家を追い落として後釜でも狙っているのか。

 鏡を見る。どす黒い顔だった。疑心が暗鬼を生じ、なにを信じていいのか分からなくなっている。それとも病気かも知れない。


 しかし、と、顔をこすって血色を取り戻す。確かめるべきは確かめないと。それに秘密基地が使えるのであればウィングの書いた通り再起も夢ではない。

 ブレードは計画を練る。頭の中だけで。書いたものは残さない。

 しばらくの間、オウルークの世話をする者たちは、夢見るような表情で空を見つめている主人を見かけるようになった。

 考えの核ができ、その周りに細かい計画が降り積もるように積層する。山と秘密基地、邪法に覆われた土地。それと、魔宝具化計画。


 手紙を書く。当主宛、非公式。長男に家督を譲って隠居をお許し下さるか。その場合、隠居所としてローテンブレード家の領地を分断しているあの山に庵を結びたいがお認めいただけるか。そういう打診だった。これは賭けでもある。反応次第によっては亡命も考えていた。


 返事はかなり待たされるかと思っていたが、思ったより早かった。

 隠居は許される。隠居所については公式に願書が出てから検討となるが、ほぼ希望通り認められるだろう、とあった。

 オウルーク・ブレードはその回答文書の端をくわえて立ち、ズボンを直しながら笑った。まずは一勝。また若返った気分だった。


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