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 休憩を早めにとって昼にする。そう決めたのはディガンだった。どうせ出発が遅れたので着くのは真夜中過ぎになる。子連れじゃ無理はできない。速度を落とす。もう一晩野宿すると言った。

 昼を過ぎた日差しの下、道端で車座になって昨夜とおなじ麦のどろどろを食べた。驚いたことに少女はおかわりをした。


「わたし、トリーン・トリストゥルムと言います」

 食後の湯を飲みながらぽつぽつと口を開いた。なにか言おうとしたペリジーをディガンが目で制した。その目をそのままクロウに向け、おまえが話せと合図した。

「家名があるんだね。なら安心だ。街についたらすぐ役人に探してもらおう」

 気休めを言ったが、トリストゥルムなどという家名は聞いたことがなかった。口から出まかせだろうか。

 じっと見ているクロウに少女は首を振った。

「いいえ。分からないと思います」

「そうかい。じゃ、そんな恰好で山にいたのはなぜかな」

 また首を振る。

「違うんです。わたし、みなさんと一緒に来たんです。箱、です」

 そうだろうな、とマールがうなずいた。クロウはさらに口調を穏やかにする。

「もし思い出すのが嫌じゃなかったら、あの箱に入る前から順に教えてくれるかな」


 トリーン・トリストゥルムはつっかえつっかえ話をした。四人にとっては信じられない内容ではあったが、とにかく口を挟まずに聞いた。


 もし作り話でなければ、この少女は物心ついて以来ずっとどこかで隔離されて育てられていた。ふつうの世話をされ、基本的な教育は受けていたようだが、一方で魔法か霊に関わるなんらかの実験か観察対象とされていたらしい。


「……石の部屋から出ると、クロウさんみたいな魔法使いがいつも三、四人いて、色んな魔法を使うんです。それを見てろって言われました。ほかにも人がいて、いつもなにか書きとめていました……」

 湯を一口飲む。咳き込んだので背中をさすった。

「……で、きのうの朝起きたら身体が動かなくて、真っ暗になって、気がついたら箱の中でひっくり返ってました。押したらすき間ができたので出たらみなさんと鬼が闘ってて、だから逃げて隠れたんです……」

 そこで言葉を切り、身震いした。すこし間が開いたところでクロウが話しかけた。

「お話をありがとう。怖かったね。でも大丈夫。おじさんたちがいるから。ちゃんと送り届けてあげるよ」

「クロウの言う通りだ。まかせておきなさい。さ、出発しよう。トリストゥルムさんは荷台に乗って。風が出るかも知れないから荷覆いにくるまってなさい。肌触りは悪いがないよりましだから」

「トリーンって呼んでください。トリーでもいいです。ううん、そっちの方がいい」

「じゃ、トリー、いっぱいお話して疲れただろ。お昼寝してもいいからね」


 ペリジーが道草を食っていた馬を引き、荷馬車はゆっくりと動き出した。


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