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キミに心臓をあげたい  作者: ニケ
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カタカタとキーボードを打つ音と

PCのファンのうるさい音が

6畳の狭い部屋に響き渡る。


「どれどれ…」

「再生数は…」

「27000か。結構伸びてるじゃん」


ボサボサの髪をクシャりと掻きながら

パソコンの画面を覗き込む。

ボクは、先月動画投稿サイトに投稿した自分の動画をクリックすると、コメント欄に目をやる


" めちゃカッコいい、好きな曲調 "

" なんでこの人が人気ないのか謎 "

" この歌うPの他の曲を教えてくれ "


「ふふふ…ふふ」


自分を肯定するコメントの多さに1人ニヤつく。

ボクが投稿したのは

音声制作ソフト、歌うロイドを使用したオリジナル楽曲だ。

この歌うロイドは、公式キャラクターのビジュアルが可愛く

うまく調律すれば、まるで人が歌っているかのような歌声を作ることもできることから、ネットで流行していた。

歌うロイドを使って曲を作るボクのような存在は、歌うPと呼ばれており、中にはメジャーデビューし、作曲活動だけで生計を立てている人もいる。

ボクも、自身の作った曲がヒットし彼らのように脚光を浴びる日が訪れる事を夢見て、作曲を続けていた。


" この人いつも同じ曲調じゃない? "

" ありきたりでつまらない "

" 単調すぎて盛り上がりに欠けるんだよなー "


「チッ…」


否定的なコメントにテンションが下がる。


「自分で曲を作ったこともないくせに」

「偉そうなこと言いやがって」


イライラしながらも、否定的なコメントに対する返信をしていると

いつのまにか、PCがフリーズしていたことに気がつく。

PCのファンがより一層騒がしい音を出す。


「なんだよ、もう!」


ボクは一人声を荒げながら、背もたれに寄りかかる。


(年季の入った、スペックの低いPCではもう限界かもな…)

(作曲だけである程度稼げるようになったら、新しいP Cを買おう)


それにしても


「曲が単調…か…」


確かにそうかもしれない。


「うーん、次はガラッと印象変えてみるかー?」


軽く伸びをしながら独り言を呟く。

すると…

突然、背後に違和感を覚えた。

先ほどまで耳障りで仕方がなかったPCの音が全く気にならない。

僅かだが、背後に置かれたベッドの軋む音が聞こえる。


(うそだろ…?) 


ボクは、少なくとも2週間は家を出ていない。

セキュリティの低いボロアパートだが

誰かが部屋に侵入すれば、さすがに気づくはずだ。


(いや…でも多分…これは気のせいなんかじゃない)

(後ろに誰かいるんだ)


背後に人の気配がしている。

そしてその人物は、言葉を発することもなく、こちらの出方を伺うようにじっとしている。

あまりにも現実離れした状況に眩暈がしてきた。

冷や汗が止めどなく溢れてくる。

恐怖からだろうか?

心臓の音はどんどん大きくなっていく。


(どうしよう…?)


このまま後ろを振り返らなければボクは怖い思いをしなくて済むのかもしれない。

けれどその選択は、見なくてはいけないものから目を逸らしている、今の自分自身そのもので。


(もうどうにでもなれ…!)


ボクは、勇気を振り絞る、勢いよく後ろを振り返った

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