学園一の美少女が缶コーヒーを渡しながら「勘違いしないで」と言ってきた
平凡な日常だ。毎日が平凡。普通が一番。
僕は普通の高校生だ。成績もスポーツも平均。顔立ちだって普通。だと思いたい。
普通に青春を送って普通の結婚をすると思ってたけど、なぜか僕の前には学園一の美少女と言われるユイさんが立っていた。
彼女はこちらとは視線を合わさずに缶コーヒーを突き出していた。
「か、勘違いしないでよ。当たったの。そしたらたまたまあなたが偶然通ったからだから」
と言ってきたのだ。僕は渡されるままそれを受け取った。すると彼女は赤い顔をしてさっさと行ってしまった。
お礼も言わないから怒ったのかも知れない。
「見ちゃった。お前がユイさんとねぇ」
振り向くと友人だった。いや彼女は偶然来た僕にくれただけだって言ってたぞ? 友人が先なら友人に渡しただろう。
そう言いながらコーヒーを飲む。
「あっ」
友人が缶の底を指差した。そこには電話番号が書いてあった。なんでだろ?
「はあ。かけてこいってことだろうが」
友人は呆れ気味に言ってきたが、そんなはずはない。視線も合わさずに怒ってるみたいだったし。缶は家に帰ってから速攻捨てた。
それから彼女は僕の近くを通る度に咳払いをするようになっていた。アレルギーなのかもしれないので、意識して彼女から離れるようにしていた。
そんな日々が続いてバレンタイン。僕には無縁の日だが、当日ユイさんは男子一人一人にチョコを手渡ししていた。20円ほどで買えるヤツを「義理よ」といいながら振る舞ったのだ。
それでも渡された男子たちはポーとしながらユイさんを目で追いかけていた。
そして彼女は僕の前に立って、大きなハート型のチョコを渡しながら言った。
「か、か、勘違いしないで。義理だから。みんなにも渡したんだからね!」
ビックリしている僕の机に早々に叩きつけて彼女は去っていった。
そこに友人が近づいて来た。
「はー。明らかにお前と俺のチョコには差がありすぎるんだけど?」
そう言われたが、義理だって言われたしなあ……。
◇
そしてある日。廊下でユイさんに呼び止められた。
「ちょっとあなた。志望大はどこなの?」
「え? M大ですけど……」
「M大……?」
「ユイさんは?」
「あ、あーら偶然ね。私もM大なのよ」
「へー。すごいですね」
「でもちょっと難しいから誰か教えてくれないかなー?」
「あ、僕でよかったら」
「え? ホント? でも勘違いしないでね? 勉強だけだから」
「うん」
図書館でやろうと思ってたけど、家に押し掛けて来た。なぜ?