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アーロン  作者: ラー
五章 下

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六話

翌日、交代で休憩を取ることで何とか体調を万全に限りなく戻すことが出来た2人は探索を続け、正確な時間こそ分からないが大よそ昼過ぎ辺りには足で行ける範囲の探索を終えていた。

「結局そこまで目ぼしい物は無かったね。今の所襲撃とかもないし」

市場と仮称した場所で軽食を齧りながらエンリータがぼやく様に呟く。前日に行くことが叶わなかった他の2つの内1つは転移装置が1つだけ置かれた小部屋で尚且つ壊れているのか乗ってみてもなんの反応も無かった。最後の1つは保管庫と大きな食堂の様で食堂の方は元の形は既に分からない程に壊れてしまった家具と思わしき残骸が散らばっていた。キッチンらしき設備も概ね壊れており、調べてみたが何れも役目を果たせそうにはなかった。保管庫の方も腐敗をとうの昔に過ぎ去った食材や何に使うのか分からない物品に溢れており、とてもアーロン達では解析できそうには無かった。もし、古代の事に詳しい学者や頭の良い連中であれば何かしらの発見があったかもしれないがいない以上は無用の長物たちだった。

「そうだな・・・此処がどれほどの規模か正確には分からないが何一つアクションが無いのは不気味だ。もっとも、保管庫の規模と転移装置だらけであることを思えばもしかしたら俺たちには届いていないだけ、という可能性もあるがな」

保管庫はそれこそ大商人の倉庫よりもはるかに広い。下手をすれば中都市国家レベルの広さがあった。前日に見た畑たちもかなりの規模であった事を思えばここが遺産という次元では無く国家そのものと言われても納得がいくほどである。

「あぁ、なるほどね・・・じゃぁ兎に角転移してみるしかないね」

「そうなるな、今の休憩が終わり次第、向こうの転移部屋から続きだ」

そう言うアーロンに軽い返事をエンリータはする。当初は場所や敵の存在から気を張っていたが一晩経って大分解れてきたようだ。これならばいつも通りのパフォーマンスを発揮できるだろう。


それから2人は転移装置が並ぶ転移室へと戻って来た。部屋は相変わらず薄緑色でうっすらと染め上げられており、幻想的な雰囲気を湛えている。そして生きていそうな3つの装置へとアーロンは目を向ける。

(右から2番目、中央、左から4番目、どれがいいか・・・)

10本の柱はアーロン達の正面に一際太いものを中心に右に4本、左に5本というアシンメトリーになっている。欠けている1本分はアーロン達が最初にやって来た通路分、ということだろう。

「どうする?生きているのは3本しかなさそうだけど、一応踏んでみる?」

エンリータがこちらを振り返りながら聞いてくる。

「いや、余計な事はやめておけ。それよりも転移できそうなところからだ。そうだな、一番可能性がありそうなのは中央か」

生きている物だけでなく、全部を含めて最も大きい装置へと近づく。尤も装置は弄れそうにも無く、面についている何かしらのボタンの様なものの見た目は全て一緒だ。今も一番大きな赤色が薄っすら光っている。

「まぁ、なんか一番重要そうには見えるよね。あ、ワタシはどこでもいいよ」

ついて来たエンリータが同じように眺めながらそう言う。実際、アーロンもこだわりがある訳でもない。であれば余計な事に体力を奪われるよりも先に本命と対面できそうな場所から行くのが良いだろうとアーロンは判断した。

「なら、正面からだ。いつも通り俺から、お前は5数えた後、初手は左だ。最悪目当てと鉢合わせすることも想定しておけ」

そうエンリータ言づけ、無言の頷きを見てからアーロン自身もグレートソードを引きぬき、一呼吸入れてから転移装置に足を掛けた。


転移直後、きちんと武器を盾のようにしてから左に軽く跳ぶ。左程跳ばなかったお蔭か直ぐに足が地面に着くと同時に足底に小石の様な破片を大量に踏んだ様な感触を覚える。靴底を破る様な事は流石にないが少しばかり地面を滑る様にして横にスライドする。そして止まるか否かという所で視界が戻り、周囲の情報が次々と目に入る。

(なんだ・・・魔道具か?)

戻った視界に映りこんだのは壁一面に張り巡らされた板状の何かとそれらを繋ぐ無数の管だった。壁に設置された板は大きい物から小さい物まで様々で、下にあるものの方が小さいだろうか。そしてそれらの下には小さな四角が集まった板が在り、四角には見たことも無い文字が羅列されている。また、それらに付随する様に転移装置でも見た様な数種類の色のボタンが付いている様だった。これらは同じ規格の物が十数個あり、これも壁に突き刺さる様な形で埋め込まれている。そして管もまたそれらと繋がっているようだ。部屋の中央には錆びてくすんだ様な色をした球体が器の上に乗っており、その前にもまた壁の物と同じような装置が1つ設置されている。

何れも此処に来るまでに使用した物とは違って明かりが点いておらず、床にある板が転移室と同じような光で部屋を朧げに照らしているだけだ。

(敵はいないか・・・いや、奥に繋がる部屋があるな)

入って来た正面にトンネルの様な通路がある為に行き止まりでは無いらしい。とはいえ、床の埃や周囲の良く分からない物達の様子を見る限り、ここも使われてはいないように見えた。

軽くアーロンが観察していると直ぐに転移特有の光が部屋に零れ、エンリータが姿を現す。

「んん・・・大丈夫みたいだね?」

周囲を見渡した彼女は弓を下し、先程のアーロンと同じように周囲の良く分からない魔道具らしき存在に興味を引かれている。

「すごいなぁ・・・一体何に使うんだろうね?」

駆け寄り、目を皿にして眺めては恐る恐るエンリータは周囲の魔道具らしき物体に手を触れる。一瞬止めようかとも思ったが見る限り全て死んでいるように見えたアーロンは声を掛けなかった。加えて用途は分からないが少なくともどこかに跳ばされたりはしないだろうと思える見た目であったこともある。

「文字も見た事ないし・・・でもどっかで見たこともある様な・・・」

小さな四角が集まった盤を眺めながらエンリータがぼやいているのを近寄ったアーロンも背中越しに眺める。

「・・・確かに見たことがある様にも思えるが覚えが無いな」

今、大陸で使われている文字によく似ている気がするのは大陸の古代語だからだとは思うがどの地方であるかまでは分からない。ここが砂漠であることを鑑みれば南寄りなのだろうがそこまでの学はない。

「まぁいい、先に行くぞ。あまり時間はかけられん」

タイムリミットが分からない以上、探索は急ぎたい。少なくとも前日はほぼ収穫が無かったのだ、今日中に何かしらの進展が欲しい。

「あ、そうだね。うん、行こう!」

意識を冒険者側にしっかりと戻したエンリータはアーロンの背後に入り、直ぐに先頭に入れるように構えた。


後ろにエンリータを引き連れながらアーロンは奥に進む。暫く歩いて行くと闇の先から光が見えはじめ、近づくにつれてその全貌が見え始める。

入った部屋は先程よりも明確に大きい部屋だ。壁一面に広がっていたような魔道具はなく、何かしらの破片の様なものも散らばっていない為にこざっぱりとした印象を受ける。しかし、それらよりも遥かに目を引き寄せられる物体が3つ、部屋の中央に並ぶようにして鎮座している。

「ワァ・・・すっごい大きいね。何なんだろう?さっきの部屋にも似たのがあったけど」

そこにあったのは3つの球体だった。そしてさっきは器の上に乗っていたようだがこちらはいずれも宙に浮いている。右から青、赤、黄の色を帯びており、所々白やクリームの様な色が混じった模様が付いている。パッと見は球体に整えられた瑪瑙のようにも見えるがその大きさと自ら発光していることから宝石の様なものでは無く、何かしらの道具である事が想像できる。

「さぁな・・・だがこっちは生きてそうだな。ん、足元に装置が在りそうだな」

球体の下の器、それに附属する様にして先程も見た様な盤が見える。おまけにこちらも薄っすらと明かりを湛えている為に生きているようだ。

「あ、ホントだね。ねぇ、見に行ってみようよ」

そう言ってエンリータはアーロンの袖を引く。どうやらミクロスとしての本能が刺激されてしまったらしい。とはいえ、アーロンとしても気になるのは事実。もしかしたら何かここに関する情報が得られる可能性があるかと思えば見ない理由はない。

「そうだな、ただ気を付けろ」

そう言えば元気よく返事するのが速いか軽い足取りで装置に近づくエンリータを追う。その瞬間だった。球体の上部、何も無い空中から黒い靄と紫の電流が走るのが視界の隅に映る。それと同時に背中に悪寒が走り、直感が警鐘を鳴らす。まだ気付いていないエンリータの襟を掴み、即座に魔力を回した体で後方へと跳ぶ。

着地と同時に後方へエンリータを回すとグレートソードを引きぬき、黒い靄の方へと剣先を向けて構えた。

(この黒い靄と紫の雷、それにこのプレッシャーは間違いない!!)

ニィス、嘗てマルヴァース戦の時にも感じた圧力はどんどん強まり、空間が彼の存在で埋め尽くされていくような感覚すらするようだった。

「来るぞ」

誰に聞かせる訳でもない様にアーロンが呟くと同時に不気味な靄がどんどん晴れていく。そして晴れた先、其処にはもう見慣れた笑みを浮かべたニィスの姿があった。

「やぁ、お兄さん。まさかここまで来るなんてね。天龍の仕業かな?」

そう言いながらクスクスと笑う彼の姿はやはりどこか妖しい。しかし彼の事をある程度知った今となってはもはや不気味さが残るだけだ。

「フフ、そんなに怖い顔をしないでよ。目的は巫女でしょ?安心して、彼女たちはまだ生きてるよ」

「そうか、で、返しくれるのか?」

視線を一切ずらさず、気の1つも揺るがさずにアーロンは問いかける。

「フフ、分かってて聞くなんて変なの!まぁ、招いても無い客人に返すわけも教える訳も無いよね」

「なら叩きのめしてから聞くとしよう」

そう言うとアーロンは一気に戦意を高め、魔力をより、全身に回す。もとより期待もしていなかった結果故になんの感慨もわかない。

「フフ、そうだね。僕も邪魔はされたくないからお帰り願おうかな。さぁ、アーロン、少しだけ遊んであげる!」

そう言うとニィスはどこからともなく両刃の剣を取り出すと自身の横に浮遊させた。それと同時に元から強かった彼の気配がさらに膨らむ。それこそマルヴァースよりは明確に格上である事がヒシヒシと伝わる。

「さぁ、行くよ!お兄さん!」

その言葉と同時にアーロン達を目掛けてニィスは急降下を始めるのだった。

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