十四話
やっぱり繋ぎの話は書きづらいですね・・・
「なるほどな・・・神官長が、そうか・・・」
エーベルト達の襲来が終わってからアーロン達はギルドの個室にガレスと再び膝をつき合わせていた。ガレスは一通りの話を聞いてどこか難しそうな顔を浮かべたまま腕を組み、頭を下げてしまう。
「まぁ、仕方ないか。むしろエーベルト本人が攻め込んできて神官長と冒険者、兵士少数の被害で済んだのは幸運だ。国が滅んだわけでもないからな」
カロールは兵士等の数は元々多くなく、ほとんどがマグマゴーレムと火山の流星群に頼っていたため、その2つが突破されてしまったことで士気が崩壊。そして追い打ちのように英雄が単騎で突っ込んできたために一気に敗走してしまった。辛うじて残った勇敢な者も居たがエーベルトに勝てるはずもなく、あっけなく退けられた。幸いだったのはエーベルトに殲滅の意志が無かったおかげで重くても骨折程度の怪我で済んだことだ。つまり死亡者は神官長エイダンのみとなる。そのお蔭で神殿は今、上から下へと大騒ぎになっている物の住民の大半は落ち着きを見せている。
「・・・それで俺たちはどうすればいい?可能なら薄情だが次に向かいたい」
どこか申し訳なさそうな顔は浮かべるがそれはそれとしてアーロンは要望を述べる。実際、カロールの防衛を担ったわけでもなければエイダンと仲が良かったわけでもない。であればあれこれと面倒が来る前に国を発ちたいと思うのは自然な事だろう。
「あぁ、そうだな・・・取りあえず、なんだ、神器だったか?それはもう持っててくれて構わん。神殿もそれを探してはいないだろうし、それがある事でまた攻めてこられるのも勘弁だからな」
流れを説明する中でガレスには全てではないが目的と物についての説明をした。ガレス自体は驚きこそすれどもあまり興味は無いようで、むしろ攻め込まれる要因ともなれば厄介な物、位の印象しかないらしい。
「わかった。あぁそうだ、一度エイダンの自室を見れないか?このままだと余計な面倒事に巻き込まれかねない」
アーロンは自身の荷物、神器が入っている辺りを軽く叩きながら無理だろうなという予想はあれど一縷の望みを賭けて聞く。エイダンが神器を保管していた箱、あれがあればこのまま次の目的地に向かう時に余計な物事を避けやすくなるだろうと言う思いがそこには有った。
「あぁ・・・それはどうだろうな・・・まぁ、聞いてみよう。確かにこう近くにいるとゾワゾワするものもあるからな」
言わんとすることが分かるのかガレスもスッと理解して同意してくれる。
「よし、兎に角一旦俺が神殿に行って探して来よう。お前が行くのは混乱の元に成りかねないからな。そうだな、今度は俺がそっちに出向くから明日以降、出来るだけ宿で待っていてくれ」
「分かった。ありがとうガレス」
良いって事よ、そう言って笑う彼に頭を軽く下げたアーロンはエンリータを引き連れてギルドを出た。
「なんか目的は達成したけど、釈然としないね・・・」
暗くなった空を見上げたエンリータが呟く。
「仕方あるまい、何事も都合よくはいかない。良くも悪くも」
視線に釣られ、足を止めてアーロンも空を見上げる。アーロンの心の中では今日の事は全て決着が付いた話だ。過去に戻れない以上、それも他人の出来事、引きずるつもりは毛頭ない。
「そうだけどさ、いくら強くなっても、有名になっても、権力があったってみんな理不尽の前には一緒なんだなぁって、ちょっと思っただけ。うん、ねぇアーロン!今日はちょっと美味しいものが食べたいね!」
エンリータはそう言うと少しだけ、彼女らしくない笑顔を浮かべた。
2日後、2人が宿でのんびりとしていると扉を叩く音が部屋に響く。
「おーい、俺だ、居るか?」
続いてガレスが呼ぶ声、アーロンは一度エンリータに目を配るとすぐに返事を返して中に招き入れる。
「ふぅ、疲れたぜ」
部屋に入って来たガレスは目の下に隈を作っており、声にもいつもの覇気が足りない。どうやらかなり振りまわされているらしい。
「はぁ・・・ここまで忙しくなるとはな。たかが人が1人死んだってだけなんだが、権力がある奴だけがいなくなるのは逆に面倒だ」
ガレスはブツクサと文句を言いながら手に持ったケースを空ける。
「ほらよ、お前が頼んでたやつだ」
そう言って投げ渡されたのはエイダンが持っていた箱に酷似した箱だった。
「ん?そこまでやってくれたのか・・・助かる」
許可さえ貰えたならば自分で何とかしてみようと考えていたがガレスが代わりにやってくれたらしい。相も変わらず良い奴だと思うと同時に苦労を背負い込む奴だと呆れも混じる。
「まぁ、な。お前が探すよりかは俺の方がスムーズだからな。あぁ、代わりと言ったらなんだが水でも貰えるか?」
そう言って、ガレスは締めていたシャツの首回りを緩めた。
「あ、はい、どうぞ」
それに反応したエンリータが水差しからコップに注いだ水を手渡す。それをガレスは手で礼をすると一息に呑み干した。
「カァー!生き返る!そうだ、兎に角渡した箱、試してくれよ」
人心地着いたのだろう、少しばかり気力の戻った声でガレスが促す。
「そうだな・・・これで・・・あぁ、大丈夫みたいだな」
渡された箱に首輪を収めると一気に神器の気配が薄れ、分からなくなる。どういう造りなのかは分からないがこれは本当にありがたいとアーロンは思う。
「なら、良かった。頑張ったかいがある。で、どうする直ぐにでも出て行くのか?」
追加で入れた水をもう一度飲みながらガレスがそう聞いてくる。
「そうだな、長居する理由が無くなったからな。明日にでも出よう」
そういってエンリータの方をチラリと見れば問題ないとでも言いたげに頷きが返って来た。
「そうか、確か、次は霊峰カエルムだったか・・・まぁ、俺に出来ることはないが頑張ってくれ。あぁ、また落ち着いた頃に会おう」
そう言ってガレスは薄く笑う。
「そうだな、お互いに、な」
それにアーロンも微笑を浮かべて返す。
「よし、ならお前たちも旅立ちの準備があるだろうから俺も行くわ!水、ありがとうな嬢ちゃん!」
「ううん、こっちこそありがとう!頑張ってね!」
そう言って去るガレスにエンリータが満面の笑みで手を振った。
「さて、まずは作戦会議だ。その後に別れて調達だ」
「うん、問題ないよ!」
ニコニコと笑いながらエンリータはベッドに腰かける。その顔には既に憂いはない。
「まずは状況を整理する。ひとまずここまでに起こったことはイリシィオ小国とその周辺の陥落、続いてカロールが実質陥落だ」
これでエーベルト率いるエテルニタス帝国は大陸の東側を早々に攻略したことと同義だ。それも瞬きの間と言っても良い速度、今後これほどの速度で国が落ちることはないと言えるほどだ。
「ホントにびっくりだよ・・・改めて聞くと帝国って本当に強いんだね」
なにせ東だけでこれなのだ。実際には南、アウローラと西のフォスト・アギオース、両大国にも大軍を送っているのだ、潤沢な兵の数に資材、それを扱える優秀な人材、間違いなくエーベルトだけでは無いと改めて大陸の国々にその力を示しただろう。
「そうだな、まぁ、此方については俺たちにはどうしようもない。気にするだけ無駄だ。それよりも俺たちが気にするのは神器だろう。これさえ押さえられれば多少は交渉の余地が生まれる。もっともその辺りはヘンドリーナ任せだがな」
現状神器はアーロン達が3つ、エーベルトが1つ、その他が6だ。若干こちらがリードはしているが簡単にひっくり返る差であり、それでいてどちらかの手に集める必要がある。そう考えればやはりあまり時間は無と言える。
「んー最後の目的は一緒だから何とか被害は減らしたいよねぇ・・・難しいなぁ。エーベルトさんが意見を易々変えるとは思わないし、力を示すのが必ずしも悪くないってのもあるし」
そう言ってエンリータは考え込むように顎に手をやる。
「そうだな、最終的には手を取る事にはなるだろうが・・・まぁ、政治は俺たちには出来ない。それよりも今は霊峰とそこの神器を探すことに注視する」
そう言ってアーロンは話を一度切り、水を飲む。
「エンリータ、まずはカエルムの事はどれだけ知っている?」
「んーワタシは寒いってことぐらいかなぁ・・・後は近くにエグレイジ大聖堂があることぐらいしか知らないや」
「そうか、まぁ俺も登ったことはないからな、正確な事は分からないがあそこは半分から上は常に雲に覆われ、吹雪が絶えない場所だ。今までとは全く違う環境に身を置く。その為、まずは麓、大聖堂の市場で防寒を揃える。それから調査をはじめる事になるだろう」
北は平地ならともかく、標高が高い山脈たちは全て極寒の地だ。その厳しさと人の手が全く入らない故の自然は人々の畏怖から生まれる信仰を一心に集めて来た。それゆえ、登る者は少なくそもそも情報が少ないのがネックだった。
「てことはすごく時間かかりそうだね・・・探せるかな?」
山を駆け回る事を想像したのかゲンナリとした表情をエンリータは浮かべる。
「いや、ある程度目星は付いている。カエルムは確かに情報が少ない山だ。だが全くないわけでは無い。その中で山頂付近、そこに遺跡がある事が分かっている。恐らく神器があるとすればそこだろう」
日々、休むことなく雲に覆われた山ではあるが時折、山頂付近が晴れ、その姿を遠目に見ることが出来る。そしてそこには遺跡らしきものがあり、過去に多数の被害を出しながら調査隊が向かった際の報告書に確かに遺跡がある事が記載されている。
「へぇーそうなんだ!じゃあ、ちょっとは希望があるね!・・・因みに見つからなかったら?」
「その時は諦めだ。ヘンドリーナもそこまでは言うまいよ」
そう言えばそれもそうだね、とエンリータは苦笑いを浮かべる。
「良し、また、カエルムに到着次第詳細を詰める。だから今日はそこまでの物資を集めろ。そうだなここからは・・・10日も行けば着くはずだ」
「了解!それじゃ、またあとでね!」
そう言うとエンリータは意気揚々と準備のために宿を出て行き、アーロンもそれに続いた。
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