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アーロン  作者: ラー
五章 上

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十一話

中途半端だとは思うんですけど多分年内最後です。 

良いお年を

ギルドでの話し合いが終わってから数日、2人は再び神殿へガレスと共に向かっていた。依頼は無事、完遂扱いとなり、神殿からも追加の報酬をもらった。その上、それほど余裕がある訳ではないが短い時間であれば面会を受けてくれる方向へと上手く話が転がり、今日、2人はそのために神殿に向かっているのだった。勿論、未確認の魔物や一緒にいた男の情報などを改めて聞きたいという相手の意向もあったが会えるのならばアーロン達にとっては問題がない。

「ねぇねぇ、神官長様ってどういう人なの?そう言えば聞いたことないなって」

アーロンを中央に、反対側にいるガレスに向かってエンリータが疑問を投げつける。それを聞いて、アーロンも確かにどういった人間かは聞いたことが無かったために興味を惹かれる。それにこれから話し合いをするときに活用できる情報が貰える可能性があるならば尚の事だ。

「神官長か・・・つっても俺もそこまで詳しい訳じゃないからなぁ・・・それでもいいか?」

顎に手をやりながらガレスは上を向く。どうやらカロールで名を馳せ、信頼もあるはずのガレスでも情報が少ないらしい。もっとも上手く隠そうとしているのならば話は別だが。

「うん!せっかくのチャンスだし、少しでも活かせそうな事があればなぁって思っただけだからね」

そう言うエンリータはどこかワクワクした様子だ。純粋な興味由来かも知れないがこういった情報を集め、使おうとする姿勢は冒険者にとって重要な事だ。

「そうか、んーそうだなぁ、まず名前はエイダン、年は確か80過ぎだな。因みに種族はアーラ族だ」

「アーラ族ってあれだよね?背中とかに羽根の生えた種族だよね?あんまり見ないけど」

アーラ族、背中や後頭部、ないしは腰等に羽根の生えた種族だ。羽根の色は基本的に白か黒で大きさは個人差がある。古くから大陸に住んでいた種族でもあり、嘗ては神の使いとして崇められ、アーラ族の国を持つほどに人口が多かった。しかし、エルフ等と同じで長寿の種族であるが故かアーロン等のヒューマンと比べて繁殖能力には難があり、他種族が繁栄していくと共に徐々に数を減らし、幾多の戦争などで更に減ったアーラ族はついには国すら無くなってしまった。数が少なくなり、国も無いアーラ族の減少は歯止めがかからず、しまいにはその羽根を狙う人間まで出てくる始末で今や希少種と呼ばれるほどに人口を減らしてしまった、という歴史を持つ。今はエテルニタスを筆頭に他種族国家が増え、羽根を狙うような密猟者に対しての対応も進んでいる為に減少は少しずつ緩やかに放っている。生き残ったほとんどはポツリポツリと大陸で冒険者として流離うか大都市などで生活をしていることが多い。

「あぁ、で、カロールの神殿は嘗てアーラ族の手が入っていたこともあって今もまだアーラ族が上層部に生き残ってるのさ。ま、長命種の方が神殿なんかは箔が付きやすいし、伝統ってのは歴史が必要だからな。そうゆう意味ではぴったりなのかもな」

そう言ってガレスはおどけた様に肩を寄せる。もっとも、不満がある訳ではなさそうだ。

「へぇ、そうなんだ。因みにどんな性格なの?」

「そうだな・・・基本的には物静かな人だな。淡々と物事をこなすって言うのかねぇ。あぁ、でも冒険者はあまり好きではなさそうだな」

「そうなの?なんで?」

「そりゃお嬢ちゃん、冒険者は実質無法者だからな。辛うじて金を代価に危険な仕事をしてるから見逃されてるだけでお行儀が良い奴の方が少ないだろ?それに冒険を理由に入って欲しくない所まで無断で入る奴もいるからな。ギリギリ踏み外してないだけで実質山賊と変わらないって見方も普通に出来るってわけだ」

耳が痛い、いや、どれも事実なだけに否定することが出来ないうえ、似た様な経験が無いとは言えないアーロンは思わず眉間に皺を寄せて無意識に視線を何も無い方に向ける。

「で、神殿なんかは行っちゃいけない所は山ほどある。そこに何度も冒険者に入られたことがあるのさ。だから冒険者はあまり好かれてないってわけだ。ま、冒険者が危険を冒して仕事をしてるってのも理解してくれてるが真面目に生きるってんなら冒険者じゃなくて軍人になるもんだしな」

もはやグゥの音も出ない正論だった。それでも今回アーロン達と会ってくれると言うのだからもしかした良い人ではあるのかもしれないとアーロンは思った。

「あー、そう言われるとそうだね・・・ん~ワタシみたいなミクロスは相性が悪そう・・・」

好奇心と浪漫に生きるミクロスは今の話を聞く限り、確かに相性が悪いかもしれない。

「まぁ、安心しろよ。今回はちゃんと手順を踏んでるし、向こうが許可を出したんだからよ。よっぽどじゃなきゃ怒るようなことはないさ」

そう言って励ましてくれるガレスだが場合によっては騒動になりそうな事を聞きに行くのだからアーロン達の顔色が晴れることはなかった。


ガレスに引っ張られるままに神殿に入り、途中でガレスは別件で別れて交代した神官に導かれるままに個室に入れられる。中は本当に待つためだけに使われているのか、それとも歓迎されていない事の裏返しなのか無機質な白い部屋だった。窓は付いている為、何とか部屋としての機能を保っていると言っても良い雰囲気で木製の椅子と机がどこか寂しそうに見えた。

それから暫くエンリータと雑談に興じていると控えめなノック音が響き、返事をすれば神官長の準備が整ったらしく、先程と同じ神官が案内に来ていた。再び、神官に導かれるままに神殿内をウロウロと回り道でもするかのように練り歩く。しかし、間違いなく上に向かっているらしいことだけは分かる。道中、簡単なマナーや注意ごとを付けられはするが難しいものは無く、殆ど当たり前の事の確認、と言った印象を受けた。恐らくは平民等の教育を一切受けたことが無い人用のものなのだろう。実際、アーロンも上級の冒険者になるまで似た様なものであったし、納得がいくものだ。試しにいくつか質問を投げかけてみれば快く、といった雰囲気で答えをくれるのだからこの考えは間違っていなさそうである。

そうして、神殿のほぼ最上階に近い階層まで来ると内装のランクが上がり、どこか上品な雰囲気が漂う。すれ違う神官も下で忙しそうにしている者と比べ、身なりが良く、年かさがいっているように思う。

アーロン達が敷かれた質の良いカーペットを踏みしめながら歩いていると前を歩いていた神官が1つに扉の前で立ち止まり、アーロン達に向かって待つように声を掛けて来る。そして一際品の良い白い扉を4回叩くと名前と要件を告げる。しかし、返事が返ってくることはなく、アーロンが胡乱な目を扉に向けた時、中から返事と共に扉が開けられる。そして、ここまで連れて来てくれた神官の手招きに導かれて、アーロン達は扉の中に入った。

入った室内は意外にも生活感があり、荘厳な印象は受けない。両端には本棚があり、そこには年代物のものから真新しそうなものまで本がびっしりと置かれている。部屋の中央にはソファと幅広の長机が鎮座している。机の上には灰皿と家主の趣味だろうか、控えめな、しかし、思わず目に入る様な花束が花瓶に活けられている。そして部屋の奥に置かれた執務机に目当ての人物がどこか仏頂面でこちらを見ていた。

「良く参られた、私はエイダン。御目にかかれて幸いだ、龍殺し殿」

ヒューマンであれば20代前半だろうか、兎に角アーロンよりも遥かに若く、精悍な顔つきをした有翼の男性が座っていた。しかし、声は低く、どこか年の重みを感じさせる声色で人によっては威圧感を、または安心を感じるかもしれない、とアーロンは思った。

「あぁ、今回は時間をとってくれて助かる。俺はアーロン、で、こっちがエンリータだ」

「よろしくね!エイダンさん」

兎に角、談笑をしに来たわけでは無い。が、突然切り出すのも機嫌を思いっきり損ねる可能性がある。よってあくまで友好的に話を進めたいとアーロンは思う。尤も、表情が硬い上にどこか睨まれているような印象も受けるためにもしかしたら既に難しいかもしれないとアーロンはひっそりと思う。

「あぁ、まずは依頼だがご苦労だった。謎の男を取り逃がしたのは残念だが危険を早期に取り除けたのは喜ばしい。外も騒がしいゆえにな、余計な事に気は取られたくない。さて、ある程度ギルドからも報告は受けているが直接話が聞きたい。その後に其方らからの話を聞こう。構わんね?あぁ、茶位は出そう。座りたまえ」

そう言われアーロン達は向かい合う形で座り、フラルゴ山であった事を一から丁寧に話していく。話を聞いている間、エイダンはジッとこちらを見ながら時折頷き、質問を投げてはメモを取っており、彼の几帳面さと生真面目さが良く感じ取れる。そして、一通りの話が終わった後、エイダンは顎に右手をやりながら目を閉じ、何やら考え事に耽ってしまった。

(ねぇアーロン、どうしよう、突然固まっちゃったんだけど・・・寝てないよね?)

小声とは言え、間に机しかないと言うのにエンリータが突然、失礼にもほどがある事を耳打ちしてくる。そういう事は思っても表に出さないものだがどうやら我慢が効かなかったらしい。まぁ、黙り始めてからゆったりと紅茶を一杯飲めるほどの時間が経ったのだから飽き症のミクロスには難しかったかもしれない。アーロンは此処を出たら一回エンリータの頭を叩いておこうと心に留める。

「なる程な・・・よくわかった」

そんな2人を後目にエイダンはようやくと言った感じで口を開く。

「恐らく、其方らが遭遇したのは魔物の神、パルトゥスの子だろう」

聴こえていたであろうエンリータの小声も気にした様子も無く、エイダンは聞き覚えのない事を口にする。

「パルトゥスの子?それは魔物とどう違うんだ?」

魔物の神なのだから魔物は全部子供と言えるのではないだろうか?アーロンは今一つ掴み切れない。

「ふむ、古い話だ。そもそもパルトゥスは魔物の神、生みの親だ。しかし、今、一般的に魔物と呼ばれているのはパルトゥスの神威から生まれたに過ぎない。『パルトゥスの子』とあえて表現する場合はかの神が直接生み出した古代の魔物を指す」

「なるほどな。で、何で今回の魔物がパルトゥスの子だと思ったんだ?」

確かに変な魔物ではあったがこれと言った差別化があったかと言われるとアーロンには難しかった。

「あぁ、言ってみれば彼らは今の魔物たちの前身、要は今の魔物程洗練はされておらず、どこか欠陥の様な物が見られる。今回であれば自爆だな。そしてその反面、時には想像もつかない程強い力を持っていることもある」

なるほど、とも思う。思い返せばいくら攻撃をされても死なないと言う異常性と最大火力を出せば死ぬ、という形はあまりに歪だ。確かに改めて説明を聞いて思い返せば納得がいく部分は多い。

「幸い、此度は其方らのお蔭もあってそれほどの脅威では無かった。故に問題は横にいた謎の人物だろう。私も正確な事は分からないがその人物が今回の魔物を起こした可能性がある」

疑問に思って聞いてみればパルトゥスの子は自然に発生することはなく、特定の手順を特定の場所で行う必要があるらしい。それ故に今回の魔物はフラルゴ山に封じ込められていたその場に特化したパルトゥスの子だったという事なのだろう。

「とはいえ、行方を掴むのは難しい故な、気にするだけ無駄だろう」

そう言うとエイダンは深く息を吐いた。


「さて、話が長くなったな。次は其方らの話を聞こう」

今後、アーロン自身が旅を続けるうえで必要になるかもしれないと思いパルトゥスの子についていくつか質問し終えた後、ひと段落付いたエイダンがそう切り出した。それなりに時間も経ち、人物相もある程度掴めた段階、確かに切り出すにはタイミングも悪くはない。

「あぁ、そうだな」

そう言うとアーロンは一度目を閉じ、息を吐いた後に本命を切り出す。

「俺たちは今回、アンタが持っている破壊神の神器、潤沢の首輪に付いて話に来た」

酷く生真面目で、自身よりも長く生きているエイダンに対して余計な遠回りは不要と踏んだアーロンは真っすぐ用件を切り出した。

良ければ評価、ブクマ等していただければ幸いです。

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