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アーロン  作者: ラー
三章

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三話

 面倒を感じながらも一通りの始末を終えた後、村の広場から一際大きな歓声が聞こえてくる。2人が離れてからそれなりに時間が経ち、夜もかなり更けているにも関わらず、祭は続行しているらしい。

 「なにかあったのかなぁ?行ってみようよ」

多少疲れが顔に滲んでいるがミクロスらしく好奇心が勝ってしまうのかアーロンの手を引きながら広場を指さす。

 「・・・そうだな、ここまで来て確認しないのも気になるからな」

正直な事を言えば早くに寝て、早朝には村を出ておきたかった。しかし、アーロンの直感が向かった方が良いと今更になって告げて来る。ここまでの流れ的には良くない出来事の可能性は高いが逃げられないのならば自身から立ち向かった方がよほど良い結果になる。そう自身をなだめながら引かれる手を追っていくのだった。


 広場の端まで来ればそこは少しばかり異質な状況だった。中央にある台座を取り囲むようにして村人たちが騒いでいる。そして台座の上にはかなり緊張しているのだろう先程の少女が大剣の柄を握りしめながら目を閉じて集中している姿が見える。村人たちは少女を励ますような言葉を引っ切り無しにかけていることから確かな期待と興奮が熱気となって渦巻いているようだった。

「え、あれ引き抜くのかなぁ?なんか凄い空気だけど」

「まぁ、引き抜くんじゃないか?俺はあまり知らないが何かいわくつきなのかもな」

昔の英雄が刺しこんだ剣だとか残された所持品と言うのはシンボルとして展示されることもある。恐らくこの村も何かしらの言い伝えがあり、今日がたまたまその日だったのだろう。しかし、それにしても異様な熱気であることだけが疑問だった。

 そして今日一番の歓声が上がるとともに少女が目を開き、腕に力を入れる。すると半分ほど刺さっていた剣が腕の震えに応える様に少しずつ引き抜かれていく。それを見た観衆のボルテージは更に上がり、まるで新たな英雄の生誕を祝っているようにも見えた。

そうして最後にまだ声に若さが溢れる少女の叫びと共に大剣は台座から引き抜かれた。

 大剣はやはりかなりの大きさをしており、柄から剣先まで含めれば少女の背丈とほぼ同等の長さをしている。刃もかなり幅広で身を隠すことも容易いと思えるほどあり、フラーがあるとはいえかなりの重量だろうという事は想像に難しくない。しかし、少女はまだ呆然としているのか柄を両手で握りしめているが重さで身体が振られも落とすこともしていない為に何か特殊な素材で出来ているのかも知れないと思わせる。観客は興奮が冷めやらないようで少女を讃える言葉を投げる。

「んーよくありがちな感じなのかなぁて思ってたけどこの反応はもしかして今まで誰も抜けなかったのかなぁ?だとするとなんか凄い場面に出くわしちゃったね!」

「・・・かもな」

「ん?どうしたの?そんな浮かない顔して」

アーロンは剣が抜かれた瞬間、とても嫌な空気が台座から吹き抜けたようにも感じた。同時にそれまで喧騒に紛れて小動物の声もしていたが今はすべてが聴こえなくなった。そして脳裏に嫌な予感が駆け巡る。

「すこし覚悟しておけ」

不思議そうな顔をするエンリータにそう声をかけると背のグレートソードを引きぬいて周囲を見渡す。それを見て彼女も異常だと理解したのか顔を一気に引きしめる。

 そうして台座の上で呆然としていた少女に意識がしっかりと戻って来たのか目をぱちぱちとさせて引きぬいた剣と村人たちに交互に目を配り、状況を完全に理解して、達成感に溢れた表情で歓声を上げようとした時だった。突然、彼女の背後の空間が歪み黒い霧が吹きだす。

現れたのはなんとも形容し難い物だった。全身を漆黒の霧に包まれているためにはっきりとした姿を見せていない。それは龍のようにも見える羽に長い蛇の様な胴体、人はおろか家でも掴めるだろうと思わせる大きな鉤爪のついた足。やや尖り気味の頭部にこの世のすべてを憎むような巨大な目が光る。間違いなく悪性の物だと見た人は全員が叫ぶに違いない凶悪な雰囲気を垂れ流す何かが宙に現れた。

歓声を上げていた村人は時が止まったかのようにその化け物を見つめ、歓声はすべてが闇に飲まれてしまったかの様だった。唯一、背後の化け物に気付いていない少女だけが突然の変化に怪訝そうに首を傾げているのが何とも滑稽に見えた。

「なんだ、あの魔物は?」

その異様な雰囲気を持つ魔物に怪訝な顔を浮かべてしまう。少なくともまともな魔物ではないだろう。そして同時に一つの仮説が頭をよぎる。

(恐らく、あの台座に突き立てられた剣は封印の為で、本当に運が悪い事にマジもんだったって事だろうな・・・本当に最近、運が悪い出来事に巻き込まれる)

思わず神器の回収依頼を受けてから碌な出会いと冒険が無い事に悪態をつきたくなる気持ちが湧きあがる。確かに興味があって受けた依頼だが何度も死に瀕するのだけは勘弁願いたい、そう思わずには居られない。

(もっとも流石に関係ない事だと思うが・・・さて、どうするか)

アーロンがそう悩む間にも状況が動き始めてしまう。

「���������� 鐚�鐚�鐚�鐚�」

聞くに堪えない叫びをあげながら魔物はやや上に上昇する。その金切音にも似た声に少女は勿論、近くの村人たちも全員が怯んでしまい、ただただ自分たちの上を飛ぶ魔物を見上げる他ない。

「不味いな、離れるぞ!」

本音を言えば助けに行くべきなのかもしれないが、間に合うようには見えず、ましてや何をしてくるかも検討が付かない。それこそ封印するしかなかった存在ならどうしようもない可能性すら存在する。アーロンはせめて自身とエンリータだけは守ろうと彼女の襟首をつかみながら全力で下がる。幸いにもこちらに敵意の様なものは感じない。その直感を信じるしかなかった。

そうして、魔物が宙から村人たち全員を見下ろせる位置に来た瞬間に首をもたげ、何かを吸い込むような動作を始める。

「なんだ・・・あれは?」

それから起きたことをアーロンは一回で信じることは出来なかった。魔物が吸い込む動作をすると同時にちょうどその下の辺りに居た人間から円形に広がる様にして人の体が光の玉に分解され、魔物に吸い込まれていくのである。ようやく現実に意識が追い付き、逃げ惑う村人たちもまるで豪快にスープでもすする様にして吸われていく様は筆舌に尽くしがたい。アーロンに抱え込まれ、一緒に身を隠しているエンリータも思わず絶句し、その表情には恐怖が張り付いている。また吸われていくたびに全貌には程遠いが魔物の姿が少しずつハッキリと姿を現し始めているのが見て取れると同時にその存在感までもが増している。

そして魔物が解き放たれてほんの数十秒程度の時間で村人たちはその姿を一人残さず消し去った。唯一、剣を抱きしめる様にして座り込む少女を除いて。

魔物はそんな少女など目につかないのか1つ咆哮を天に放つと現れた時と同じように黒い霧に全身を包みながら虚空に消えて行ってしまった。

「ふう・・・危機一髪だな」

消えてからも暫くは警戒していたが何もない事が分かり、アーロンは大きめに息を吐いて、懐に居たエンリータも手放す。

「ねぇ、あれって何だったのかなぁ・・・?」

彼女も大分異常事態には慣れてきたのか既に冷静さを取り戻しており、首を傾げながら聞いてくる。

「さぁな、流石に検討が付かない。だがあの台座と大剣はあいつを封印していたってことだな」

遠目に見える広場はたき火が爆ぜる音以外が消え去り、今だに一歩も動けない少女だけがポツリと残されている。

「取りあえず詳しい話でも聞いてみるか」

そう呟くと引きぬいていた剣を背に戻して広場に向かうのだった。

「おい、無事か・・・と言うのもあれか。生きているか?」

「いや、アーロン。それはそれでどうかと思う」

元々口が上手い訳でもない為、どう声をかけたものかと思いながら声をかければエンリータにバッサリと切られてしまう。

声をかけられた少女は茫然とした表情に顎の下まで涙の跡が伝っている顔を少しずつこちらに向ける。

「あぁ~すまないが話を聞きたい。俺はアーロン、冒険者だ。こっちはエンリータ。でだ、話を聞きたいが」

「アーロンはちょっと黙ってて」

流石に、突然同郷の人間すべてが消し飛ばされ、何一つ頭の回っていない少女に話しかけるにはアーロンが無遠慮すぎて直ぐに聞いていられなくなったのかエンリータはアーロンの話をぶった切り、座り込む少女に寄り添い、話を始める。間違いなく彼女の成長を感じられるがなんだかとてつもない疎外感にアーロンは襲われるのだった。

それから足元もおぼつかない彼女を支えながら1つの家に入り、彼女を休ませることになった。今夜は何が有るか分からない為にエンリータは彼女と同じ部屋に泊まり、アーロンは1人別室であの魔物について考える。

(あの魔物は一体なんだ?少なくとも人をあの様な形で攻撃するのは見聞きしたことが無い)

魔力を使う、持っている爪や牙で攻撃をするのが魔物の基本だ。それを超えるようなことは通常ありえない。だがあの魔物は人を光球に変えて吸い上げた。それこそ食事のように。だとすればあれは人を何か別のもの、魔力そのものかソウル等に変えて自身の糧にした可能性があるという事だ。だが魔力には思えなかったためにソウルの可能性が高い。アーロンはその可能性に身震いする。

(もし、この仮説が正しいならばあの魔物は相当古く、格が高い。少なくとも一生物にソウルへの干渉は出来ない)

ソウルはそれぞれの生物が持つ可能性であり、過去で今で未来であり、全ての力の源でもある。容易に弄られて良い物ではない。

アーロンが思考をまわしていると部屋の扉が小さく叩かれる。

「入って良いぞ」

ノックする相手はほぼ1人しかいない。特に気にすることなく扉越しに声をかける。

「お邪魔するね、さ、入って」

来たのはやはりエンリータでどうやら件の少女も連れてきたらしい。今夜はどうせ無理だろうと思っていただけに少し驚く。

「お、お邪魔します・・・あの、ありがとうございました」

連れられた少女はまだ声に力はないがそれでも礼儀正しい子なのだろう、わざわざ頭を下げて礼を口にする。

「いや、俺は何もしていないから気にしなくていい。それより大丈夫なのか?」

流石に一度怒られている手前、無理に聞き出すことはしない。

「はい、大分落ち着きましたから。それで・・・少しだけお時間貰ってもいいでしょうか」

うつむき加減な顔を上げて少女が聞いてくるのを小さく頷いて先を促す。

「ありがとうございます、私はマリアベルと言います。それで・・・」

そこから少女、マリアベルが語ったのはこの村に伝わる伝承だった。

この村は嘗て英雄の最後の戦いに使われた地であり、その後興された村である。かの魔物が暴れていた所に討伐に来た英雄が死闘を繰り広げ、討伐したとされている。しかし、通常の魔物と違い仕留めきることは難しく大剣を媒介に封印し、台座で周囲を囲み、それを監視する目的で村を興してその生涯を終わらせたこと。しかし、死に際にも倒しきれなかった魔物の事を悔み、自身の大剣が引きぬける者にその討伐を任せる事を言い伝えさせた。それからこの村では成人を迎えた者が居ればその日の最初の夜には村人が総出で簡単な祭りを開いて大剣に挑戦するのが習わしだったようだ。そして今回の祭が嫌に大規模だった理由がマリアベルの容姿に理由が有った。英雄もマリアベルと同じく真っ赤な夕日が溶け込んだ様な髪色だったらしく、また、血筋もほぼ直系、彼女自身も身体は幼いが剣の才が有ったことでこの盛り上がりだったらしい。そして実際に今まで誰も引きぬけなかった大剣が引きぬけてしまったことでこの悲劇は起こってしまったという事だった。

「なるほどな、それであの魔物に対してなにか言い伝えは有るのか?」

彼女が語った言い伝え自体は珍しいものではない。権力者が力を誇示するために似た様な事をすることは有るし、地方を探せばそう言った伝承を子守唄に聞くことも多いだろう。ただ、悲劇だったのはこの村の物は本物で魔物はかなり長い時間封印されても生きていたという事である。実際、この村人もすべてが本当だったとは思っていなかったのかもしれない。特にあの魔物はかなり異質だ。脚色されたと感じてしまっても不思議ではないだろう。

「魔物はソウルコレクターと言う名前くらいしか残っていないです・・・」

「そうか、ならいい。・・・それでお前はどうする?」

あの移動方法では追う事も難しい。それに名前の通りソウルに干渉できることも発覚したようなものだ。ただ村人のソウルを吸収した時、僅かだが身体がハッキリとし始めていた事を思えば完全体にはまだほど遠い。ならば時間があり、最悪現代の英雄、エーベルトが出張る可能性も残っているなら焦りすぎることはない。

「・・・どうするべきなのでしょう?」

また頭を下げて項垂れてしまう。彼女はたった一瞬で今までのすべてを奪われたに近しい。項垂れる姿は行く当てを無くしてしまった子供だった。

「さぁな、それはお前が決めることだ。だがな、憶えておくと良い、お前が今不幸と思っているならそれはお前が全部悪い。お前が弱く、覚悟もなく、流れに身を任せて行動したその結果だ。だからもてはやした村人はその命で代価を支払った。さて、お前はどうするべきだろうな?」

少なくともアーロンが決めて良い事ではない。そう考えてやや冷たく突っぱねる。マリアベルの横にいるエンリータがややジトっとした目を向けて来るが無視する。

「私がどうしたいか・・・」

うつむいたまま考え込み始めてしまう。

「取りあえず今日は寝ろ、少なくとも今のままではまともな思考も出来ん」

そう言うとアーロンは手を振り追い出すようにエンリータに合図して朝を迎える事になった。


 そうして迎えた朝、もういないとは言え多少の申し訳なさを感じながら食材や水を回収し朝食の準備を進める。2人はまだ起きておらず、姿はない。精神的な疲れも強いのだろうと放置して先に食べているとバタバタと足音がし始め、直ぐに寝起きの2人が起きて来る。

「お、おはようアーロン。寝すぎちゃった」

着替えはしたようだがまだ寝癖が付いたままのエンリータが慌てた様に声をかけて来る。

「おはようございます。すみません、遅くなってしまいました」

覇気はないがそれでも寝たことで少しばかり整理がついたのだろう落ち着いた声色でマリアベルも挨拶をしてくる。

「あぁ、構わん。疲れているだろうからな。取りあえず座って飯でも食え。勝手に使ったものだが」

そう言うと2人も座り食事を取り始める。


食事を済ませて一息を付いた頃、ずっと難しそうな顔をしていたマリアベルは顔をやや強張らせながら姿勢を正して喋りだす。

「あ、あの!私、旅に出ようと思います!どうすればいいのかまだ分からないですけど・・・それでも私が選んだ結果で起こった事なら私が終わらせるべきだって思うから・・・だから、私、ソウルコレクターを倒せるように強くなってみようと思います!」

そう力強く、彼女はアーロンに宣言した。

「そうか。なら、そうしろ。行く先はどうする?」

「そうですね・・・あの、アーロンさんたちはリーベタース連邦に行くんですよね?なら、そこまで着いて行っても良いでしょうか?そしたらそこで仲間を集めて冒険者としてやっていこうと思います。幸い、あそこなら人が沢山集まりますし」と提案される。

「そうだな・・・まぁ良いだろう、エンリータも良いか?」

「うん!もちろんだよ!」

どうやら昨夜の内に聞いたのかもしれない。即答でかえってくる。

「なら、旅の支度を済ませろ。昼までなら待ってやる」

そう言うとアーロンは身体を動かすために外に出る。


それから各々が時間を好きに使い、昼食を済ませた後、村の入り口に集合する。

「行くぞ、忘れ物はないな?」

最後に2人に向かってそう問いかけると「少しだけ待ってください」とマリアベルに言われ彼女を見やる。

「最後に祈りだけあげさせてください」

そういうと彼女は膝を付き無人となった村に祈りを捧げる。

そして僅かな祈りを終わらせ、立ち上がった彼女の目は未だに悲しみが眠っているがそれでも進もうとする確かな意思を滲ませていた。


 それから3人は再びリーベタース連邦に向かって歩を進める。少しばかりマリアベルが旅に着いて来られるか不安だったがそこは思ったよりも体力があるのか多少は息を切らせるものの文句の1つも言わずに着いて来る。ただ、そこまで旅については詳しくないのかあれこれと迷う事は多かったがそこはアーロンが教え、また、少しばかり先輩風を吹かすエンリータが積極的に講習をしていた。エンリータ自身人当たりも良い子である為にすぐさま2人は仲良くなり、旅の中でも楽しそうに話す声が先を行くアーロンの耳にも入る。

「そう言えばマリアの鎧と剣って重くないの?なんか普通にしてたから気が付かなかったけど実質重騎士みたいな装備だし」

休憩中にエンリータが不思議そうに尋ねる。確かにマリアベルは祭の際に着ていたプレートアーマーを着込んだままで顔以外に露出が無い。ましてやその背には身の丈程の大剣を携えているのだ、大の大人でも厳しいと感じるのが普通でましてや彼女の様な身体が出来ていない子には無理難題である。しかし、実際は旅の間もそこまで重さを感じさせない動きであったし、遭遇した魔物との戦闘ではそれなりの速さで動き、しっかりと大剣を振るっていた。

「え、考えた事もなかったですけど・・・そう言われてみればそうですね」

とどこか抜けた返事が返ってくる。

「そんなことある?でも、どうゆう事なんだろ?ちょっと持ってみてもいい?」

エンリータはそう言うと立て掛けられた大剣を指さす。

「えぇ、どうぞ」

そう言われエンリータは駆けよると柄に手を掛けてグイッと両手で持ち上げようとするが大剣は予想に反してビクとも動かない。

「ググッ!全然動かないぃぃ!」

顔を真っ赤にして両手で彼女は剣を握るが持ち上げられないどころか横に倒れる素振りすら見せないのは不思議な光景だ。彼女自身前衛では無いゆえに筋力は低いがそれでもいっぱしの冒険者だ、持てなくとも動かすぐらいは出来るはずだった。

「だ、大丈夫ですか」

どこか慌てた様にマリアベルが駆け寄る。エンリータは膝に手を着き、息を切らす。

「はぁはぁ、え、全然動かないんだけど・・・もしかしてワタシ呪われてる?」

真っ赤になった手を見ながらエンリータは茫然とする。

「いえ、そんな様子はないですけど・・・でもどうゆう事なんでしょう?」

そう首を傾げながらマリアベルが右手で柄を握ると不思議な位簡単に大剣は持ちあがる。

「アーティファクトか・・・」

それを見ていたアーロンはポツリと独り言を漏らす。

「アーティファクト?」

聴こえたのかエンリータが聞き返してくる。

「古代の武器の中には何かしらの曰くが付いている場合がある。それらをまとめてそう呼んでいるだけだ。それもその一部って事だろう」

「そうなんだ。ってことはこれが持てないのはそう言う何かがあるって事かぁ」

そう言いながら改めて彼女は持ち上げられた大剣を繁々と見る。

「恐らく血筋と、鎧、大剣が1セットになっているんだろう。だから俺でも持てないはずだ」

専門家では無いゆえに細かい事は分からないが状況的にはそういう事だろう。

「・・・・」

何やら真剣な顔でマリアベルは剣を見つめる。どんな思いがあるのかは想像がつかないこともないがわざわざ口にすることでもないだろうとアーロンは視線を切って立ち上がる。

「さて、行くぞ」

そう言うと2人は慌てて荷物をまとめて既に歩き出しているアーロンの背に続く。



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