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アーロン  作者: ラー
二章

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十三話

門の中を潜る。不思議な事に今までと違い、意識が切れることも無い。

(周囲を魔力で覆っているのか?)

自身の周囲が明らかに感じた事のない魔力に身を包まれている感覚を肌に覚える。周囲の景色はグニャグニャと流れていくのに対して自身は棒立ちをしており、これが転移中の景色なのかと少しばかり興味を惹かれてしまう。隣にいるエンリータも余裕があるのか物珍しそうに周囲を見渡している。

どれだけの時間が経ったかは分からない。一瞬だったような気もすれば、あれこれと考えていただけに途方もない時間が過ぎ去ったかのような感覚を覚えた後に突然、前方から来る強い光に目を焼かれて閉じる。そして、まぶたの外から感じる熱と光が収まるのを待ってから目を開けば行く時と変わらず自身はエーベルトの右肩に手を掛けており、エンリータは鎧の端を掴んでいる。しかし、目に映る景色はアーロンが想像していた景色とは大きな違いが有った。

当初、城の内部なのだから、それこそ玉座が設置されているような場所か、外から見た大きさからそれなりのエントランスの様な形だと想像していた。だが目の前に広がっているのは無数の瓦礫が散らばる荒野だった。夢の跡、とでも言えばいいのだろうか。それとも退廃した都市とでも言うべきか、それこそ街1つが戦争で砕け散らない限りはこうはならないだろうと思うほどに荒れ果てた場所であった。草木の1つ、息づくもの1匹感じられず、薄暗い明かりと相まって虚無と死の雰囲気すら感じるほどだ。

そして奥、ここからは走って幾分かかるだろうかと言った場所に血のように赤い球体が浮いている。しかし、内部は鏡の様にでもなっているのか先程までいた場所を上から見下ろしたような景色が映し出されている。下半分は木の枝、いやツタだろうか、それらが絡み合い球体を支えているようだった。下は泉になっているようで、球体から零れ落ちる液体が絶え間なく注がれている。周囲は砦の様に土が形を成して囲んでおり、厳かな祭壇を想起させる。だが神聖さなどはとても感じられずただただ悍ましさを身体だけでなく魂そのものにぶつけられるような感覚さえ覚える。今はまだエーベルトの魔力が身を覆っている為にもしかしたら守られているのかも知れない。しかし、そうだとすれば途切れた時にどうなってしまうのだろうとアーロンは思う。そして赤い球体の前、土塊の門の切れ目に1人の男が立っているのが目に映る。光源が少なく、遠目故に細かい容姿まで判別することは出来ないがその右手に握られている槍の形状からあれがウェルテクスなのだろうという事が推察できる。当然、こちらに気付いているのだろう、仁王立ちしたままこちらを見ているようだ。

「行くぞ」

呆けている2人を気に留めることなくエーベルトはやや速足で、されども雄大に歩き出す。


近づいて行くたびにウェルテクスの容姿がハッキリと見え始め、確かに入り口で見た絵と相違ない。強いて言うのならば眼光はより力強く、全身から溢れる気は今のアーロンでは勝てないと断言してしまう程であった。幸いにもエンリータは腰こそ引けてはいるが覚悟だけは決めているのか震える手足を何とか動かしている状態で呑まれ切ってはいないようだった。


「久しいな、エーベルト」

張らずとも声が届く位置まで来て止まった瞬間、不動を保っていたウェルテクスが口を開く。低く、底から響くような声ではあったが不思議と落ち着きが感じられ、まるで厳しい父親が悪ガキに説教でもするかのようにも思えた。

「100は過ぎたか、あの若造が随分と鍛え上げたものだ」

口の端を上に歪めながら、実に嬉しそうに言葉を続ける。

「さて、目的は私自身とこれ、と言った所かね」

そう言うと右手に持つ槍を掲げる。

「あぁ、貴様は俺が仕留めるべき相手、そしてその槍もまた、この俺が手にしなければならない」

そう言うとエーベルトは背の槍を引き抜き、腰を落として構えを取る。

「傲慢だな、英雄。だがそうで無くては面白くない」

ウェルテクスは構えこそまだとっていないがこちらに向かってくる殺気の重圧が増す。

「早速と言いたいが先に戦いの邪魔になる者には退場してもらおう」

そうウェルテクスが言葉を発した瞬間、アーロンとエンリータの後ろに黒い靄が青い雷光を纏って2人を飲み込む。

「な、エンリータ!」

痛みはない、そしてこの感覚は間違いなく転移だろう。ひとまず、エーベルトの事は意識から追いやり、エンリータに手を伸ばす。そして、彼女の手を握った感触を最後にアーロンの意識は再び途切れるのだった。


今度は極短い時間でドサリという地に叩きつけられた感触で目が覚める。

「ッ!」

アーロンはすぐさま意識を覚醒させると左手に握られた感触を引っ張り、立ち上がる。

「ここは・・・?」

周囲に目を配れば先程いた場所と景色が似ていることから同じ空間内ではあるようだがそれなりに遠い場所に飛ばされたらしくあの赤い球体を取り囲んでいた土塊たちがかなり小さく見える。

「アーロン、ちょっと離してもらってもいい!?」

その声に左側を見れば手を掴まれて宙に浮いているエンリータの姿がある。

「あ、あぁ、すまん」

一言謝り、彼女を下してやる。

「フゥーフゥー、突然引っ張るんだもん腕が抜けるかと思ったよ!」

掴まれた場所に息を吹きかけ、肩を回しながらエンリータは若干怒ったように抗議をする。

「すまん、流石に別々になる訳にも行かなかった」

彼女の態度に若干気を緩めながら宥める様に再び謝る。

「それは分かってるけどさぁ!まぁ、いいや。それよりどうする?」

彼女も遠目にもともと居た場所を確認してから周囲を眺めて困ったようにアーロンに目を向ける。かなり遠くだと言うのにも関わらず凄まじい轟音と様々な色の魔力が飛び交う戦場を見てあれには暫く近寄るべきではないとアーロンは思う。当然彼女も近づきたいわけでは無いだろう。

「そうだな・・・ひとまずあれが終わるまで生き延びる。これが現状出来る事だ」

あれこれと頭を回してみるが最適解など見つかる訳もない。力なく、そう告げる。

「まぁ、そうだよね」

その返事は分かっていたとばかりにエンリータもため息を吐きながら周囲を見渡す作業に戻る。

(それにしてもこれが英雄と使徒の闘いか)

詳細を知ることは出来ないが相も変わらず断続的に聴こえる轟音に恐怖を感じながらアーロンは遠くを見据える。

(それにしてもこの風景は何なのだろうか)

これまでアーロン達が通って来た道は少なからず街と城と言った光景で、魔物しか存在しなかったがそれでも形を成していた。それに比べてここはあまりにも荒廃が酷い。あれほどの景色をウェルテクスが作ったかは定かではないがもし、そうだとすればここだけがこんなに荒れている理由がアーロンには分からなかった。

(それに明らかに何らかの戦闘で壊れたようにも見える。それも巨大な生物だ)

壊れ、風化している瓦礫たちを眺めながらアーロンは思考を続けようとした時だった。

「なんだ・・・?」

突然、遠くの戦闘とは違う振動を足元に感じる。

「どうしたの?」

エンリータは何も感じてはいないのか突然呟いたアーロンの方を見て不思議そうに首を傾げる。

「なにか可笑しな揺れだ。警戒しろ」

そう言うと先程まで緩めていた気を引き締め、背のグレートソードを引き抜く。

「・・・了解!」

エンリータもただならぬ雰囲気を感じたのか弓を構え、周囲を見やる。足元から伝わる振動は少しずつ強くなり、間違いでなければこちらに向けて進んでいるようにもアーロンは感じた。

(姿が見えない?しかし気配だけは確実に強まっている)

頭には警鐘が鳴り響き、心臓が高鳴り、全身に血が勢いよく巡る感覚がする。その瞬間、地響きが一掃強くなり、自身の足元で止まった感覚がした瞬間、直感の導くままにエンリータの首元を掴むと後ろに跳ぶ。

「グエッ!」

突然引っ張られ、喉が潰れた様な声をエンリータが漏らしたが気に留める余裕はなかった。その時、先程までたっていた場所に4本の棒が跳びだす。同時に土塊が雨のように降り注ぎ、目に入らぬように武器を持った手で防ぐ。

地中から突き出したのは体格の良い成人男性ほどの太さを持った爪だった。先端に龍の様な爪に甲殻類の様な腕、そしてびっしりと生えた長細い毛に覆われている。それらが立っていた場所を囲むように現れ、先端を地に突き刺している。

「何だ、こいつは?」

見たことは当然ない。そもそも大地の下に住む魔物なぞ聞いたことも無かった。突き出された足は獲物を逃したことを把握したのか直ぐに土の中に潜り、再び大地を揺らす。

「とにかく走れ!」

降ろしたエンリータにそう声をかけるとアーロンは走り出す。

「コホッ、あ、あれ何!?」

若干咳込みながらアーロンの後ろを走るエンリータが慌てた様に聞いてくる。

「知らん、俺も見たことが無い。取りあえず今は走れ」

敵は正確に2人の後を追っており、少なくとも気を抜くことが出来ない。速度は相手の方が上である為に横や前からと爪が繰り出され、その度に土煙に目を奪われ、爪の回避に精一杯になってしまう。そして幾度もすれすれの攻撃を貰い、焦りが頭に湧き出る。

「チッ!仕方ない。掴むぞ『風精よ、願うは天翼、孤高の大鷲』」

今度はエンリータの胴体を荷物の様に小脇に抱えると魔術を唱え、空へ逃げる。

「埒が明かんな」

何とか宙に逃げることに成功はしたが状況は何一つとして解決はしていない。どうやら地面に居なければ攻撃は飛んでこないのかパタリと攻撃が止む。しかし、地響きもしない為、このままどこかに行ってくれる、という感じでもなさそうだ。

「な、何なの・・・あいつ?」

抱えられているエンリータは息を乱しながらアーロンに再度質問をする。

「分からん、少なくとも大陸の魔物と言う訳ではないだろう」

エーベルトなら知っているかもしれないがここに居ない存在には頼れない。

「ひとまず地上に居なければ追われることはないが、このままでは先に俺の魔力が尽きる」

せめて、地上に引っ張りだせればいいのだが、と付け加えながらぼやくが今一妙案は浮かばない。

「ねぇ、地上に有る物に反応するなら適当な物とかでも反応しないのかな?」

エンリータがこちらを見上げて提案してくる。

「やってみるか」

兎に角、今は相手の情報が欲しい。そう思いエンリータに弓で最後に立っていた場所に矢を放ってもらう。そして矢が刺さりトン、という音がした瞬間、再び四本の足が跳びだし、矢を貫く。

「音か」

そうアーロンが呟くと今度は足に囲まれた中央の地が裂け、今までで一番の土煙をあげて何かが跳びだす。真上から見ると奈落のようにも感じられるほどの裂け目が開き矢の刺さった部分を飲み込んでいく。

「ヒッ!なにアレ」

エンリータがビクリと振るえる。無理もないだろう、飲み込まれ、閉じられた口は言わずもがな造形が大陸の者とは大きく違う。背は硬そうな甲羅に覆われ、深いお椀の様な形をしている。腹部側は長い4本の足を筆頭に幾重もの足が無数に蠢いており、また胴体部分には触手が周囲を探る様にのたうち回る。全体的に平べったく、薄い茶色をして端々を赤く縁取っている。そしてそのまま呑み込んだがどうやら目当ての物では無かったのが分かるのか頻りに周囲に触手と手足を伸ばし探すような挙動を見せる。

「行くぞ」

アーロンはこれをチャンスであると捉えた。

「え」

なにか慌てるエンリータを抱えたまま魔術を切り、魔物の甲羅に目掛けて落下する。そして大剣を下に向け、両手で力強く持ち、手を離されたエンリータは未来を察してアーロンの背に張り付く。大剣の先が甲羅に落下の衝撃とアーロンの体重を合わせて轟音を掻き鳴らす。

「硬いか!」

円形のせいもあるのか垂直に刺さりきることはなかったが刃は甲羅をやや滑りながら切り裂いて行く。

「―――――ッ!!」

声は発せなくとも痛みは感じるのか傷つけられた身を逸らしながら魔物は暴れる。

流石に身の危険を感じたアーロンは即座に背を蹴りとばし、地面に飛び移る。

「そう上手くはいかんな」

地に足を滑らし、体勢を整えながらため息を吐く。

「――――」

暴れ、少し落ち着いたのか、それともこちらの音を聞きつけたのかアーロン達が居る方へと敵は向きを変える。しかし、未だに怒りが収まりはしないのか手足と触手を暴れさせ、甲羅を先程よりも赤く染めている。

「エンリータ、俺に速度上昇の魔術をかけろ。その後は離れたところから相手の腹部を目掛けて矢を放て」

一方的にそう言い放つともう土に潜る気はないのかこちらに向かって動きを見せ始める敵に駆け出す。すぐさま、振り上げられた爪が振り下ろされ、隙間を縫うようにして触手がアーロンの身体を捉えようと這い出す。それらを跳び、触手は切り捨てながら周囲を旋回する。どうやら触手はいくら切ってもすぐに生え変わるのか数が減る様子はない。爪も先端は酷く硬く、とても切れそうにはない。そうして一周程した頃、「行くよ、アーロン!」とエンリータの声が聞こえ、体が軽くなる。それに合わせて今度は逆に切りかえす。

頬をかすめる爪を掻い潜り、側面に回る。そしてようやく爪が間に合わない状態で攻勢に移ることが出来る。

「ハァァァァァァ!!」

加速した勢いをそのまま大剣に乗せ、体を弓の様に引き絞り、上から下へと振り下ろす。幾重もの触手が身を守る為かこちらを止めるためにか蠢くが一切の抵抗を許すことなく刃は敵の甲羅に向かってゆく。

ブチブチと千切れる音を聞きながら刃は敵の甲羅を切り裂き、大剣の半分程が敵の甲羅を切断する。しかし相手の身体も大きい為に肝心の胴体を切り裂くには至らない。むしろ身体からはみ出ている甲羅を切っただけの様だ。

「――――」

それでも身を守る甲羅が一度ならず二度も切られたことに苛立ちを押さえきれないのか敵は暴れ、旋回する。

「面倒な」

咄嗟に引き戻した大剣を盾にする。瞬間、回転した際に伸ばされた爪が横殴りにアーロンを襲う。流石に体重の差もあり、体を浮かされ、弾き飛ばされてしまう。

「フゥゥゥ」

着地と同時に大きく息を吐き、呼吸を整える。

(流石に簡単にはいかないか。せめて腹に当てなければ効果は薄そうだ)

肩に大剣を担ぎながら冷静に集めた情報を精査していく。

(甲羅は砕けないことはないがリスクがでかすぎる。しかし腹は触手に爪、口と攻撃手段が豊富と面倒だな。何より奴がまだ下半身を出していないのも気になる)

敵は潜ることはないようだが半身がまだ土の中に隠されている。それが弱点なら気にするほどではないが攻撃手段になるのならば一気に状況が傾ききってしまう可能性がある。

(前途多難、仕方ないか)

アーロンは思考を一旦打ち切ると次の攻撃に移る。敵は既にこちらに身体を向けて今にも何か仕掛けそうな気配が漂う。

『風精よ、願うは旋風、断ち切る風』

アーロンは先手を取る為に魔術を唱え、風の刃を飛ばし、追従する形で接近する。

「――――」

しかしそれは無情にも敵の爪に砕かれる。

(やはり効果は薄いか)

眉間に皺を寄せ、前方からこちらを貫こうと槍の様に振るわれる爪を避けながら正面に接近する。しかし

「チッ!」

近づくにはあまりにも抵抗が激しくなかなか射程に収める事は出来ない。時折、アーロンが離れる際にエンリータの矢が撃ち込まれるが触手を多少傷つけるに収まり敵の体内に取り込まれてしまう。そうして幾度か一進一退の攻防の後、エンリータの魔術が切れる。

「すまん!もう一度行けるか?」

速度が落ちたアーロンに襲い掛かる攻撃を何とかグレートソードで流しながら声を張る。エンリータはすぐさま呪文の詠唱に掛かるがそこであれほど執拗にアーロンを狙っていた敵が身体を回し、エンリータの方へと顔を向ける。

「不味い!」

攻めあぐねたことでアーロンの攻撃の脅威度が下がった為か敵は最初により手軽に殺せそうな方へとターゲットを変えたらしい。体を少し引くような動きをした後に腹の触手を蠢かして移動を開始する。

「こっちに来い!」

エンリータにそう呼びかけ、迂回するような形で自身も彼女の下へと駆けていく。

「わわ、やばいやばい!!」

流石に詠唱も切れてしまい、大慌てと言った様子でこちらに全力で向かってくる。敵は土を砕きながら進んでいるとは思えないほどの速度で迫る。

『炎精よ、願うは祭壇、裁かれる咎』

せめてもの足止めになれと魔術を緊急で行使する。威力は通常より減衰しているが敵の足元から数本の炎の柱が噴き出す。

「――――」

すると敵は今までで一番の反応を起こす。

(なんだ?もしかして火が弱点か?)

その反応を後目にひとまずエンリータの確保に移る。

「一旦飛ぶぞ『風精よ、願うは天翼、孤高の大鷲』」

そう声をかけて2人は再び宙に浮く。


「ひとまず休戦か」

宙から敵の姿を眺めながら息を吐く。

「全然、攻撃が通らなかったよ・・・」

抱えられたエンリータがしょぼくれる。

「それに関しては仕方あるまい。お前の適正を越している」

当然といった感じでアーロンは言葉を返す。

「むー、でも悔しいなぁ」

そこまで気にはしていないといった表情ではあるが悔しいのは事実なのだろう。

「お前の魔術は役に立っている。そもそも複数の闘いなどそんなものだ。やれることを全力でこなせばいい」

本人は不満だろうがエンリータが支援魔術を行使してくれているお蔭でアーロン自身は自由に魔術も近接戦闘もこなせる。現状においては充分な活躍と言えるだろう。

「さて、分かった事がある。お前も気付いただろうが奴の弱点は恐らく火だ」

先程の反応と今尚、触手が焼けただれた様な跡が残っているのがその証左と言えるだろう。

「でも致命傷ではなさそうだよ?」

こちらを見上げながらエンリータは疑問を返す。

「そうだろうな、だが火で触手が鈍るのならばそれで問題ない。後は俺が切れば良い」

実際、先程正面から攻めた際、確かに爪の方が威力と速度が高い為に目立ちにくかったが一番厄介だったのは触手の方だった。単純に壁の役割をこなし、また、再生力を生かしての物量で絡みに来られると純粋にその後に放たれる即死級の攻撃を受けかねない。それが高々火の魔術で多少なりとも抑え込めるのならばこれ以上なく有り難い話である。

「いいか、今から降りる際にお前は俺にもう一度魔術をかける。そして分かれて着地、お前は離れて無駄でも矢を放つ用意をしろ。俺は回り込みつつ隙を見て魔術をぶつけてから切り込む。1回では倒しきれないだろうから、お前は俺が撤退するときに矢を放て。いいな?」

あまり長々と飛び続けるわけにもいかない為に口早にエンリータに作戦を伝える。

「うん、わかった。でも無理しないでね!きっとエーベルトさんも来てくれるだろうしね」

その言葉に軽く返事を返し、アーロンは敵に目掛けて降下していくのだった。

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