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アーロン  作者: ラー
二章

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27/255

十話

切りが言い訳では無いのですが書き溜めが切れたのでここ迄を2章の前半とします。

翌日、いつも通り交代で見張りをしながら夜を過ごした2人は朝食の後、最終確認を終えて2人は廃城へ進む。

「よっ、ほっ、はっ!」

現在、2人がいるのは大きな茸の上だった。

「おい、はしゃぐな。落ちるぞ」

安全な道を確保するため先導するアーロンは後ろで飛び跳ねるエンリータに注意を飛ばす。

「いや、結構飛ばないとワタシの身長だと厳しくて・・・」

足場にしている茸は一軒家よりも高く、傘も大人が5、6人乗ったとしても問題ないほどの幅がある。しかし、弾力があるうえ、物によっては滑り気があり、安全とは言い難い。当然、落ちてしまえば怪我をする恐れがあるうえにもう一度低い高さの茸を探すところに戻ってしまう。付け加えるならば道として生えているわけでは無く、勝手に群生している茸である為にルートにも気を付けなくてはならない。「それにしてもようやく見えてきたねぇ」アーロンの傍まで来たエンリータが手で庇を作りながら遠くを見やる。そこには廃城の一階の上部分が見えていた。遠目に見てもかなり風化が進んでいるのが見てとれ、かつて伝承で聞いた荘厳な城の面影はかけらもない。

「大戦からかなりの時間が流れているからな。長命種以外ではもはや知る者はいないだろう」

アーロンも足を止めて城跡を見る。

「さて、まずはこの茸の道を超えるぞ。そこで休憩だ」

そう言うとアーロンは再び茸の上を歩きだした。

そうして茸の上を通りぬけて地に足を着ける。

「ふう、やっぱり地面は安心するなぁ」

地面を右足で軽く叩きながらエンリータは息を吐く。

2人が下りたところはもともと居た場所よりも高所であり、周囲を見渡せばかなり遠くではあるがアウローラの城がうっすらと見える。空中には所々に黒い斑点の様なものが見え、恐らく何らかの魔物が空を闊歩しているのだろう。

「ひとまず身を隠して休むぞ」

そう言うとアーロンは手近にあった木の陰に隠れ、腰を下ろす。

「そう言えば、アーロン。廃城なんだけどさ、エーベルト様も来てるって噂があったけどもホントなのかなぁ?」

食事を取りながら思いついたかの様にエンリータが尋ねて来る。

「さぁな。実際、居るならこれほどなく有り難いがな」

かの英雄がいればそれこそどんな敵が出てきても問題はないだろう。それこそ神そのものか、代行者の龍が出てこない限りは。

「まぁ居れば儲けもの、その位に考えておけ。さて、休めたのならもう行くぞ」

後はほんの少しばかり坂を登りさえすれば入り口にはたどり着ける。2人は後片付けを終えると廃城まで周囲を警戒しながら進むのだった。


「これが廃城かぁ。ホントに『廃城』なんだね」

入り口に辿りついたエンリータがきょろきょろと城の外観を眺めながらぼそりと呟く。

城は2階以上が完全に壊れており、その残骸が周囲に散らばっている。辛うじて残っている壁たちも風化がかなり進んでおり、崩れて穴だらけだ。周囲の草も伸び放題でコケやツタが絡み、人工物が植物に呑み込まれている姿は何処か哀愁を漂わせる。2人が立っている正門も元々は大きな扉が有ったのだろうが今や扉ごと無くなってしまっている。

「さて、一度武器を確認しろ」

城を眺めるエンリータを後目にアーロンは自身が持っている武具たちを簡単に確認していく。ここに来るまでに幾度も戦闘を重ねたこともあり、これから向かう本番で問題が発生すれば最悪死に至る。刃に欠けなどはないか、防具が歪んでいないか、紐が切れてしまっていないかなど1つずつ手と目を凝らす。

そうして手早く確認を終えると装備の少ないエンリータは既に確認し終えており、弓の張を軽く弾きながら空を見ていた。

「待たせたな、良いなら行くぞ」

装備し直したアーロンが声をかける。

「あ、うん。楽しみだなぁ」

緊張感こそあるが肩の力は抜けている、そんな様子でエンリータはアーロンの背に続いて廃城の門を潜り抜けていった。


門を潜り枯れ果てた庭を抜けていく。手入れは当然されていない為、かつては芝生が生え、木々や花々が咲いていたのだろうと思わせる面影は残っているがそれらが風化した姿は繁栄と衰退を見ているようで心寂しさを滲ませる。足元は辛うじて石畳が残っており、その上を軽く足音を鳴らしながら内門を潜り、城の内部に踏み入る。内部は不思議な事にまだ城の面影をかろうじて保っており、所々に飾りが壊れているもののその姿を想像することは出来る。全体が石造りで高い技術力を持って作られた事が素人目にも分かり、エントランスだからだろうか、くすみ切ったボロボロの赤いカーペットも敷かれており、かつての姿なら胸を躍らせただろう。奥には先に続く道がぽっかりと口を開き、奥の中庭まで貫通して見える。

だがアーロンの目にはそんな昔も見た様な光景は気にならなかった。それは初めて来たエンリータも同様である。何故ならば部屋の中央には黒い煙の様な球体が浮かんでいたからである。

「ねぇ、アーロン。あれがそうなのかな・・・?」

当然のように浮かんでいるそれにエンリータが恐々尋ねて来る。

「恐らくな・・・」

確かにどこにでも現れると聞いていたし、この入り口付近でも発生報告は多数あった。それでも最初から目撃するのは面食らう。

「なんだが不気味だね・・・」

周囲の物悲しい雰囲気と合わせてか、それとも通常ならありえない異常性がそう感じさせるのかアーロンには分からなかった。黒い球体は自身の中央へ渦を巻く様にして回転しており、その動きは近寄るものを吸い込んでいるようにも見える。そしてその有り方から中に入ってしまえば2度と出られないのではないか、そんな予感すらも感じさせるほどに空恐ろしい。

「考えても仕方ないか・・・」

アーロンの冒険者としての勘は引き返せと頭に警鐘を鳴らすが引き受けた依頼で来てしまった以上、行かない選択肢は取れない。

「行くぞ」

まだ怯えているエンリータに短く告げるとアーロンはそれに近づいて行く。


近づいて行くも黒煙から特に反応は無く、変わりなく佇む。

「さて、触れればいいか?」

誰に言う訳でもない口ぶりで呟き、手を伸ばす。するとそれは突然、動きが速くなったかと思えば閉じ込められていたものが弾けるようにして広がり、2人を包み込む。

「ちっ、離れるなよ!」

その動きに舌打ちをして、咄嗟にエンリータの手を取ると強く握り、引き寄せる。驚いた彼女の声が聞こえるが気を回してやる余裕はない。そして煙に包まれ切ったアーロンはどこかに跳ばされる感覚と共に意識が薄れていった。


「う、ここは・・・?」

アーロンはどこか底冷えするような冷たさを頬に感じて目を覚ます。瞬間、意識が消える時の事が脳を駆け巡り、目がさえ、飛び起きると同時に咄嗟に腰のファルシオンを引き抜き、転移で酔った頭を必死に回しながら周囲に視線を飛ばす。

「本当にどこなんだ・・・」

視界に広がるのは果てしない闇だった。いくら目をこらそうとも見通せず、何もかもを塗りつぶして尚、有り余るほどの闇。根源的な恐怖故か少しだけ足が地面を掻き、後退する。するとコツンと踵に何かが当たる。

「っ!!」

声を飲み込み、少し跳ね、武器を構えて当たったものに目を向ける。しかし当たったのは仲間のエンリータの手で一気に警戒が霧散する。

「ふぅ・・・」

少しばかり速くなった動悸をため息とともに落ち着かせ、一旦武器をしまい直す。

(なんとか離れ離れにはならずに済んだか。しかしここは一体?どこかに繋がっているとは聞いていたがあまりにも生気が感じられない)

先程までは聞きこそすれど、アーロン自身が見たことが無い場所と現象だっただけに軽い錯乱を起こしただけで落ち着きさえあるならばそこは一流の冒険者、落ち着きが戻ってくると思考も上手く回りだし、冷静にもう一度周囲を見渡す。

周囲が闇に包まれているのは変わらないがアーロン達が今、立っているのはどうやら支柱はないがドワーフの街の様な足場だった。丸い円盤の様な形をしており、それほど広くはないがこの空間に浮いているようで今すぐにでもなくなってしまう様な感じでは無い。全体的に紫色でボコボコしており、所々に赤い欠片の様なものが埋め込まれ、外周部分を植物のツタの様なものが縁取りをしている。また、明かりの様なものはないが不思議と足場の上は見渡せ、視界に異常はない。眼前には数本の触手が絡み合ったような道があり、その先にはまた同じような足場が点々と設置されている。

(異常な光景だな・・・不気味と言ってしまえばそれまでだが・・・だが何よりも)

そう、アーロンが何よりも気になるのは空間に漂う生気の無さだった。通常であればどんな場所であっても草木や動物、魔物に人と何かしら息づくものの空気が感じられるのだがここにはそれが無い。

(まるで死者の国に来たみたいだ・・・となれば出て来るのも死者か)

大陸には種類は多くないが死者の魔物も出現する。タイプによっては物理の様なものは殆ど効果がなく、聖職者の加護から得えられる魔術か聖属性の攻撃位しか致命傷にはならない個体も存在する。

(いや、いくら考えても現状では仕方ないか)

かぶりを振って思考を中断する。

「まずは起こすか・・・」

そう呟くと背後でまだ倒れているエンリータに近づき、膝をつくと彼女の肩を揺らす。

「ん、ん・・・あれ、ワタシ・・・?」

想像よりも簡単にエンリータは目を覚まし、体を起こす。

「あ、アーロン・・・ってここはドコ?」

まだ覚めてはいないのか朧げな表情でアーロンの名を呟き周囲を見渡す。

「さぁな、少なくともここがあの黒煙の先、というぐらいしか分からん。それよりも早く目を覚ませ」

アーロンは立ち上がり、エンリータを見下ろしながらやや急かす。


その後、目が覚めたエンリータに現状報告をする。

「つまり、よくわかんないって事?」

やや能天気な雰囲気を持って彼女が首を傾げる。

「まぁ、そうだな・・・取りあえずここにいても仕方ない。お前の準備が整ったなら行くぞ」

荷物を背負い直し、グレートソードはいつでも振るえる様に肩にかけたアーロンがそう告げた時だった。アーロン達が進もうとした道の先に黒い影の様なものが浮いているのに気付く。それは明確にこちらに向かってきており、近づいてくると共にどこか冷たい風が頬を撫でる。

「チッ!来るぞ、構えろ」

アーロンは苦虫を噛み潰したような表情をしたまま武器を構える。


それは大きな人型をしていた。背丈はアーロンよりもやや大きいだろうか、地上から少し浮いて移動している為に正確な大きさは掴めない。全身に黒い頭陀袋の様な外套を身に纏っており、その端が浮遊に合わせて揺れている。裾からは足先の様なものが出ているが青白く透けており、その先が見えている。手もだらりと垂れ下がり、大よそ首を吊った人間がそのまま移動しているようだ。顔の部分には犬の骸骨の様なマスクを着けており、ほの暗い眼孔の奥にも光は見えない。頭頂部には鳥の羽の様なものが数本生えており、そう言う髪飾りのようにも見える。

「見たことが無いな・・・おい、お前は下がっておけ。まずは俺があたる」

流石に見たことがない魔物相手、ましてやこんな場所に居る相手を初見で対応させるのはエンリータには若干荷が重い。そう思い、彼女を庇う様にして前に出る。敵はまだ道を下って来ている途中で速度が遅い事もあってもう少しばかり余裕がある。そうして遂に敵が2人の立つ足場に踏み入り、止まる。

(やはり異質な雰囲気がする。問題はゴーストかアンデッドか判別がつかん。しかし臭いがしないならゴーストか?)

ゴーストとアンデッドは同じ死者がモチーフにされているが対処は変わる。互いに聖属性が特に効果的なのは共通だがゴーストは有体と幽体があり、幽体時は物理が一切効かなくなる。アンデッドは物理も通るが見かけに反して耐久と力が高く、痛覚が無い為に怯みもしない。また、傷を受けてもゆっくりとだが回復する性質がある為に実質物理は効果が薄い。アーロンは止まった敵を見据えながらひとまずグレートソードを握り込み、様子を窺う。敵も変わらずフラフラと宙に浮いてまま睨みあう。緊張感が張り詰める空間で最初に動いたのは魔物の方だった。だらんと下げられた両手を上に伸ばし、まるで何かを掴むようなしぐさを始める。アーロンの頭に嫌な予感が走り、瞬時に駆け出す。距離はそう遠くない、ほんの数歩もあれば届く距離。しかし、敵の攻撃が完成する方が僅かに速かった。掲げられた両手から紫色の丸い塊が浮き出す。内側からボコボコと沸騰する様に蠢いており、どう見ても食らってはならないものだと直感で判断できる。後一歩、そこまで接近したが敵の攻撃は無慈悲に放たれる。

「限界まで下がれ!」

自身に目掛けて放たれているのは分かるがエンリータが範囲外とは限らない。故に大声で声をかけて自身も足を踏ん張り、全力で横に跳ぶ。速度はそれなりでしかなかった為に直撃は避けることが出来たが安心することは出来ない。攻撃が当たった部分は焼けただれ、マグマが通ったかのような有様だ。また、紫色の煙が周囲に弾け、刺激臭が鼻に刺さる。

「チッ!『風精よ、願うは静謐なる間隙』」

咄嗟に煙の除去のために魔術を唱える。

(なんだ、効果が薄い?)

魔術自体はアーロンが唱えた通りに発動した。どこからともなく強風が吹きつけ、煙を吹きとばしたが消費された魔力に対してあまりにも効果が薄いのだ。

(この空間のせいか・・・?)

直ぐに原因を探ろうとはするが今は戦闘の最中、直ぐに切り替えて敵を見据える。連発は出来ないのか追撃は来ず、距離も振出しに戻る。

(先は後手で届かなかった、ならば!)

今度はアーロンから踏み入り、距離を詰める。当然、敵も両手を上にあげ始め、準備をするが今度はアーロンの方が速い。

「シィ!」

鋭い息を吐きながら両断する様に振り上げた大剣を袈裟切りに振り下ろす。しかし、アーロンの刃はなんの手ごたえもなく敵の身体をすり抜けてしまう。

「チッ!やはりゴーストか!」

幸いにも幽体化する為か敵の攻撃は中断され、アーロンは素早く後退して再び距離を取る。

(想像はしていたが面倒な事になった。理由は分からんが魔術の利きが悪い場にゴースト系統の魔物。俺の聖魔術で押し切れるか・・・?)

実の所、アーロンの得ている武神の加護にも聖属性の攻撃手段は存在している。

エンチャント、それこそエンリータのクロースにも付いているがアーロンはそれを一時的にだが自身の武具に付与することが出来る。

(しかし、それ以外に有効打が見つからないのも事実、やるしかないか)

正直な事を言えば、エンチャントは燃費が悪く、攻撃の威力が上がる様な物でもない。それでも自身の置かれた状況からこれぐらいしかやれることがないのも事実だった。そもそもアンデッドならともかくゴーストは特定の場所にしか存在しない為、そこまで対策を練り切れていないのもあっただろう。

『聖精よ、願うは白銀、極彩色の使者』

大剣の根元から剣先へ呪文と共に手を滑らせる。瞬間、鈍色をしていた刃に薄っすらと白い靄の様なものが纏わりつく。

(やはり少し効きが甘い。しかし、これで)

柄を握り直し、後ろに流した状態で敵を見る。アーロンが呪文を唱えている間に敵は攻撃の準備を整えており、いつでも攻撃を放てるように構えている。

「すぅぅ」

息を吸い込み、止め、駆け出す。それと同時に敵も攻撃を放つ。そして迫りくる紫の塊がアーロンに接触するかという所でアーロンはやや斜め前に跳ぶようにして力強く踏み込むことで攻撃を回避する。後ろで地を焼くような音がするのを聴きながら攻撃後の硬直で動かない敵の正面に立ち、後ろに流していた大剣を横薙ぎに振るう。今度は幽体化も間に合わず、非常に軽い手ごたえと共に刃が敵の身体を両断した。すると敵は苦悶の声一つ上げず、まるで風に千切れる草のように宙に消えてしまう。煙となる訳でもなく、消えていくその姿に少し目を開くが直ぐに大剣を引き、身を守る様にして構える。しかし、敵は背後に燻る音だけを残してその姿を消したのだった。

読んでくださりありがとうございました。

また1ヶ月後位になってしまうとは思いますが続きを投稿していくので良ければまた読んでいただければ嬉しく思います。

感想や評価、ブックマークなどしていただければ幸いです。

それではよいお年を!

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