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アーロン  作者: ラー
二章

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三話

出てきたドワーフの男、ドンガとエンリータの短弓について相談する。そして一通り寸法や筋力などの情報を測ってもらい見積もりをだす。

「これならミクロス用の短弓を改造するだけで問題ない」

測り終えたドンガが言う。

「それなら明日、素材を集めて来るからそれで頼む。そう言えばエンリータ、お前は弓に何か希望は有るか?」

一口に弓と言っても様々な形がある。木製、鉄製等の素材から弦の素材、そもそもの弓の形と多種多様で使用者の個性がかなり出る。鉄製なら耐久性も高く、木製と比べて手入れも楽で物理的な威力にも期待しやすい。反面、物によってはかなりの力が要求されることと魔術の影響を受けにくい事だろうか。もちろん素材によってはカバーできるが同じランクの木製には及ばない。

木製であれば単純な威力は劣りかちだか魔術の影響を受けやすい素材を使うのが一般的なため魔術が得意であればこちらだろう。また、使うごとに使い手に弓が馴染んでいくためこちらが好みと言う人も多い。

「ん~ん、そうだなぁ・・・やっぱり木製かなぁ・・・でもなぁ」

腕を組みながら唸る様にしてエンリータは考え込む。

「まぁ、そこら辺はじっくりと考えな、お嬢ちゃん。どちらにしろ最初のうちは強化するための鉱石は変わらん」

ドンガがエンリータに対してそう投げかける。

「そうだね、うん、もう少し考えてみるよ!アーロンもそれでいい?」

「構わん、お前の武器だ。納得するものを買え。金なら俺が出す」

不安そうにこちらを見上げて来るエンリータにそう言うと出口に向かって踵を返す。

「それじゃ爺さん、また明日同じ位にここに来る」

「おう」

そう短く告げて2人は外に出た。

「ふう、これで今日やることは終わりだよね?」

「あぁ、さて飯でも食うぞ」

そう言いながら繁華街がある場所に歩を向ける。

「そう言えばここって山の中だから時間が分かんないよね・・・みんな如何してるんだろ?」

周囲を見ながらエンリータがそんな疑問をつぶやいた。

「ここに住むドワーフは基本的に時間に頓着していない。好きな時に起きて、好きなだけ鍛冶をして寝る。それが此処の基本だ。だからある意味ではこの街に夜はない」

「へぇ~そうなんだ。でもそれだと他所の人って困らない?ほら、旅立とうとしたら夜だった、みたいにさ」

「この街は日に4回鐘が鳴らされる。それで大よその時間を知らせる決まりになっている」

アーロンがそう言った時、ゴーンゴーンゴーンと鐘が鳴らされた。

「こんな感じにな。今は3回なったから外では夕方ってわけだ」

「へーなんか面白いね」

そう言いながらエンリータはアーロンの少し前を駆けていく。

「そういえば食事って繁華街でするの?」

エンリータがこちらを振り返る。

「あぁ、この街はドワーフの為に酒場がかなりの数ある。何か食いたいものでもあるのか?」

「んーワタシは来たことないからなぁ・・・そう言えばなんか名物みたいのってあるの?」

そう言われてアーロンは少し考え込む。

「そうだな・・・基本的にはドワーフは何でも食べるが肉類が一番好まれるな。ここはドワーフ王国だけあって牛、鳥、豚、羊何でもある。何より外で過ごす森ドワーフが飼育した肉は人族の王族も食べる位美味だ。地底に住むドワーフならトカゲなんかも旨いな」

過去に食べた料理を思い出しながらそう言うと「え、トカゲも食べるの・・・?」とエンリータは若干引き攣った様な顔を浮かべる。

「あぁ、それにでかい芋虫なんかも結構食べるぞ」 そう付け加えるとエンリータは身体を抱き、震える様なリアクションを取り「いや、それはちょっと・・・」と嫌悪感を表す


その後、普通の肉にしようと異様に高いテンションで言うエンリータに押されて外の肉を専門に扱う酒場に2人は入る。繁華街に入った時から酒の匂いと笑い声がそこら中から聴こえていたが扉を1つ潜るだけでそれらはより強くなった。

「お、いらっしゃい。適当に座りな!」

この店の看板娘だろうドワーフの女が大量のジョッキを持ちながら入って来たアーロン達に声をかける。アーロン達が席に着くと配膳を終えた女が声をかけて来る。

「やぁやぁいらっしゃい!さて何を呑むんだい?」

もはや酒を呑むことを1つも疑わず、何なら呑みに来ただけなのだろうと言わんばかりの言葉はある意味この国特有かもしれない。もっともドワーフ国の店のメニューにアルコールが入ってないものは置いていない為、間違ってはいないのだが。

「そうだな、俺は火酒。エンリータ、お前は」

そう促すとやや食い気味に「ワタシも!」と声をあげる。

「ハイハイ、火酒が2つね」

そう言いながらドワーフの女は厨房に向かって行く。

「一応聞くが明日は採掘場に行くんだが分かっているか?」

「うん!大丈夫、抑えるからさ!」

まだ呑んでもいないのに上機嫌なエンリータを訝し気な表情で見ると元気な声で返事が返ってくる。思わず帝都での事を思い出しため息をつくが一応、次の日の行動に問題があったことはないので信頼して酒が来るのを待つ。


ドワーフの国で火酒と言えば文字通り火がつくほど辛い。口に入った瞬間はかなり爽やかでスルリと通っていくが喉の辺りで一気に熱くなる。甘さの様なものはなく、とにかく切れて温まる為、ドワーフ以外の女性にはキツイと評判だが男たちの間では酔いたい時にはかなりの人気を博する。アーロン自身はかなり酒に強く、甘いものは精々がドライフルーツであった為、ドワーフの火酒は好みに入るものだ。

「カッー!!凄いね、このお酒!」

一口呑んだエンリータがまるでおっさんの様な声を漏らしながら言う。

「ドワーフの火酒だからな。慣れればこれが一番なんだが。・・・呑みすぎるなよ?」

他国の酒場では中々提供されていない酒で度数も高い為、くり返し釘を刺す。

「ふふーん、分かってますよーだ」

そう言いながら2口目を呑み始めるエンリータ。その姿を横目に先程の店員を呼びつけて適当に食事の注文をする。

「今日はなにかお勧めはあるか?」

「ん~そうだねぇ羊とクログリがお勧めだね」

「なら羊にしてくれ」

「あいよ!煮か焼きどっちだい?」

「焼きだな」

そう言うと店員は再び厨房に戻る。

「ねぇねぇ、アーロン。明日採掘場に行くって言ってたけどどんなところなの?」

機嫌良さそうにエンリータが聞いてくる。

「明日は東の採掘場だな。ここは狭い通路と広い階層が交互になっている」

過去の記憶を思い出すようにしながら言葉を続ける。

「細い通路は当然だが坂だ。そこを暫く行くとそれなりの広間のような場所に行きつく。それが最深部まで10階層連なっている」

「へぇ~結構独特っていうか作ったみたいな形なんだねぇ。あ、魔物も出るんだよね?」

それに返事をしようとした時だった

「はい!お待たせ!」

店員がそう言って大き目の皿を二枚持ってきた。

「わぁ~!」

先程の質問も忘れてエンリータがはしゃぐ。更に乗ってきたのは骨が付いたままの羊肉だった。1つ1つは左程大きくはないが円形に何枚もの骨付き肉が並べられており、中央にはマッシュされた芋が盛られている。骨付き肉にはかなり濃そうな茶色のソースが塗りたくられ、香ってくるニンニクが食欲を刺激する。

「話は後にして食うか」

その言葉にエンリータは嬉しそうに手を皿に伸ばす。アーロンも肉を掴むと一思いに齧る。瞬間、羊の脂の旨味と独特の臭み、そして鼻に抜けるような香草の香りが口いっぱいに広がる。噛めば噛むほど口の中で味が混ざり合い濃くなっていき、喉を通った後も芳醇な後味が残る。それらを火酒で流し込むと口の中がさっぱりと洗い流されてあれほど濃かった味にも関わらずいくらでも食べられそうだと思ってしまう。思わず夢中になり食べては呑んでを繰り返し腹の具合もちょうど良くなった頃、食事の前にしていた話をアーロンは振る。

「さて、採掘場に魔物がいるかと言う話だが当然魔物は出る。主にはスカル系とヴァイパー系だ」

「ほへぇ~ってスカルはともかくヴァイパーは不味くない?」

酒で赤らんでいた頬を引き攣らせながらエンリータはアーロンの言葉に疑問を投げかける。スカル系は文字通り人や獣の形をした骨で構成された魔物で実力はピンキリなものが多い。弱ければ叩いて砕くか胸の辺りにある炎の様な核を消し飛ばせば倒すことは簡単だ。加えて攻撃方法も基本的には物理であり、元となった生き物と大差がない。その為、上級のスカルでなければ脅威にはなりにくい。それに引き換えヴァイパー系は冒険者のランクで言えば最低でも3以上を求められる。理由は単純で彼らは基本的に速度が速く、牙には毒があり、更には身体の長さを生かしてのリーチと巻きつきがあまりにも厄介だからだ。いずれの攻撃も一旦受けてしまえば致命傷を避けられず、ソロでは対処が難しい。その為、ある一定以上の戦闘能力が求められる。また、森などで接触した場合は相手が奇襲を仕掛けてくるため即死する冒険者も少なくない。エンリータもその事は知っていたのだろう先程までの上機嫌さが若干なりを潜めてしまっている。

「そうだな、今のお前ではヴァイパーは無理だ。だが彼らは基本5階層より奥に行かなければ出てこない。もちろん例外はあるが今回は3階層までだ。問題はないだろう」

そう言うとエンリータはほっとしたように息を吐く。

「良かった~。でもそうだよね、流石にヴァイパーを倒せとは言わないよね!」

そう言うや否や再び酒を呑み続ける。

「なんにせよ明日はまだ前衛をする可能性があるんだ、ほどほどにしておけよ」

そう言うと調子のいい返事が返され、やや不安になりながらも2人の夜は更けていくのだった。

翌日、2人はギルドの前に完全装備の状態で立っていた。余分な荷物は宿に預けて普段よりは身軽である。アーロンはいつものごとく背にグレートソード、腰にはファルシオンを佩き、チェストアーマーに脛当て等の急所を守る為の装備をしている。採掘場で泊まる予定はない為、外套などはしておらず唯一腰には携帯食料と水等が入ったものを身に付けているぐらいだった。エンリータもいつもの服に帝都で買ったレザーアーマーにクロースを肩にかけて腰にはダガーといった軽装だ。その上で起きて一度鍛冶屋に寄って借りてきたクロスボウガンを背に掛けている。

「さて、行くぞ。作戦は言った通り先ずは3階層まで一気に降りる。道中で遭った魔物はお前がボウガンで牽制、その後俺が突撃して前衛。その間お前は後ろから援護だ」

「うん、大丈夫だよ」

そう返事を返したエンリータの顔は自信に溢れており、これならよほどの事が無ければ問題にはならないだろうとアーロンは思う。

ギルドの受付で東の採掘場に入る事を伝えた後、2人はギルドの奥にぽっかりと開いた洞窟の中に足を踏み入れていく。


中は明かりの様なものは無いが神の加護を受けた場所だからか十分な視界が確保できるだけの光量があった。大人が5人横並びになっても十分なほどに横幅があり、正しく炭坑とでも呼べる岩肌が続く。入口からすぐに緩い下り坂になってはいるが仮に戦闘になってもそこまで不利を受けることはないだろう。しかし、流石に洞窟なだけあってやや肌寒い空気が漂っており、閉鎖空間な事もあって人によっては息苦しい感覚を受けるだろう。

「ホントにギルドの奥にこんな空間があるんだ・・・」

エンリータは物珍しいのか周囲をキョロキョロと興味深そうに見たり、周囲の岩肌をぺたぺたと触りながら採掘場を観察する。

「おい、さっさと奥に行くぞ。それと分かっているとは思うが魔物が出る。周囲を警戒しろ」

そう言うとアーロンは奥に進み、エンリータがそれに続く。この採掘場の魔物は徘徊する魔物も多いが突然岩壁から魔物が生み出されることもある。そのため視界に映っていなくとも警戒だけはなくせない。

緩やかな傾斜を円を描く様にして下っていく。現在2人がいるのは一階層に繋がる通り道の中間ほどの場所にいた。

その時、2人の耳にパキリと岩が弾けるような音が聴こえた。

「ん?何だろう?」

足音とははっきりと違う音にエンリータが小首を傾げる。

「魔物が生まれる音だ。構えろ」

そう言うとアーロンは背のグレートソードを抜く。音は2人を挟むように聴こえ、徐々に大きくなるとともにその形を変えていく。初めに人間の頭部の様な形をしたものが岩壁を突き破る様にしていくつも出現する。それから骨の手が這い出し、自身の身体を壁から引きずり出していく。その姿はまるで自身がいる場所が魔物の体内で、そこから子供が産みだされているかのようにも感じる。そうして壁から産みだされたのは10数体のスカル系、人型の骨で構築されたスケルトンだった。

「前に向かって走れ!」

アーロンは横に立つエンリータに指示を飛ばすと洞窟の奥に向かって駆けだす。現在の位置では左右から挟まれる形のため良い状況とは言えない。勿論アーロンが1人で倒すならば立ち止まって戦ってもいいが今回はエンリータとの共闘を視野に入れていたためエンリータを敵のいない場所に置いて自身が前衛を取る形にしたいが故の指示だった。

エンリータも素直にアーロンに追随して囲いから抜け出す。下級のスケルトンは移動速度が速くなく、攻撃方法も近づいての物理攻撃しかない為、簡単にアーロンを敵全体の前に置いてその後ろから援護できる位置にエンリータを置くことが出来た。スケルトンたちは骨をカタカタと鳴らしながら虚ろな足取りで不規則な並びのままアーロン達に迫ってくる。

(武器を持ったやつもいないか)

全体を見渡しながら敵の戦力を測る。幸い敵は武器も持っておらず、サイズも一般的な大きさに収まっている。骨の強度も所々罅が入っている辺り大したこともないだろう。

「エンリータ、お前は敵胸部の中にある核を狙え」

スカル系に必ずあるのが心臓部の核だ。そこに一定以上のダメージを負うと彼らは自身の形を保てなくなる。しかし、それが出来なければいくら砕いても最終的には復活してしまう。

「了解!」

そう短く返したエンリータは早速借りたクロスボウを構えると一番近いスケルトンに向かって矢を放つ。ピュッと風を切る音をさせながら放たれた矢は敵のあばら骨を縫うようにして通り抜け見事に敵の核に突き刺さる。刺さった核は一瞬激しく燃えたかと思うとすぐに霧散する。それと同時に撃たれたスケルトンはボロボロと崩れ落ち、煙となって消えていく。

「問題は無さそうだな。俺が押さえておくうちに他のも倒せるか?」

「うん、これくらいなら大丈夫だよ!」

自信に溢れた返事が返ってくる。それを聞いてアーロンは向かってくるスケルトンの集団に駆け出す。そして正面に辿りつくと大剣を一振り、横に薙ぐ。スケルトンたちはそれに対して回避行動のようなものは一切取らず、アーロンの一撃をもろに受けて骨が大剣によって砕かれ、へし折られる。吹き飛ばされた骨は瓦礫の様に蹴散らされ、無残な残骸が周囲に広がる。それと同時にアーロンは一旦後ろに跳べば同時に後方から風切り音をさせながら矢が再び1体のスケルトンを貫く。そうしてアーロンが近づく時と下がる時にエンリータが撃つと言う極シンプルながらも連携と呼べる動きを続けながらスケルトンの群れを無傷で沈黙させた。実力からすれば当然の結果ではあるが何事も初めては不安になるものだ。それに反してエンリータが予想よりもいい動きを見せた事にアーロンはひとまず安堵する。

撃った後のボウガンの矢を回収しながらその事をエンリータに話す。

「思ったよりは良く出来たな」

「ふふん、まぁこのくらいはね。動きの速い相手じゃなかったしね」

やや自信ありげに胸を張る。

「なら今後も暫くはこの形で行くぞ」

軽い打ち合わせを終えて2人は再び採掘場の奥に向かって歩き始めるのだった。

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