表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーロン  作者: ラー
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/255

十四話

あれから、作戦をルーカに伝えられ頭に叩き込んだ後、3人で軽く食事と武器の手入れを済ませて夜が更けるのを待つ。

月が空に昇り、空気が冷え込み始める頃、3人はひっそりと闇に紛れる様に動き出す。潜入に不必要な荷物は元の場所に置いて、背中にグレートソード、腰にファルシオンと応急薬だけを身に着け、草原を駆ける。

前にはルーカが道案内の為に先導しており、エンリータはアーロンが背に荷物の様に乗せていた。

「わぁ~凄く速い!てゆうかワタシ重くない?」

「ミクロスの1人、担いで走れなくて前衛は名乗れん。後、静かにしていろ」

今、ルーカとアーロンは自身に魔術をかけ、風になっていた。一歩、大地を蹴る度に景色があっという間に後ろに流れ、目の前の城壁が大きくなってくる。アーロンも魔術は得意ではないが一時的なら馬よりも速く進むことが出来る。とはいえ消耗は大きい為、左程長くは走れない。一方、ルーカの方は余裕がまだまだありそうで流石はあの英雄の部下だと感心しながら後を追う。

アーロン達がいた丘から右に旋回しながら城壁の周りを回っていくと前にいたルーカが速度を下げながら後ろ手に合図する。それを受けて魔術を解除しながらエンリータを肩から下し、手招きするルーカを追う。

ルーカは周りを少し警戒する様に見渡しながら、地面を探る。そして、草と地面を掴み、持ち上げるとそこだけ綺麗に剝れて鉄の蓋が出てきた。

「ここから一気に城の庭園まで行きます。長年使われていない隠し通路で魔物が出て来るので注意を」

それに無言で頷き返し、先に潜っていったルーカに続き下りていく。

蓋の下は人がやっと通れる位の縦穴になっており、さび付いた梯子が頼りなさげに付いている。ルーカの言う通り、長年使われていないようで手入れもされていない辺り、もしかしたら既に忘れられている可能性もあるだろう。カンカンという梯子を下りる音だけが闇の中で木霊する。そうしてそれなりの高さ、恐らく一般的な家屋が5か6はゆうに入るだろうという距離を下りた後、やっと地面に降り立つ。

「今、明かりを付けます」

ルーカがそう呟き、魔術を唱えると彼の頭上に光球が浮かび上がる。暫く闇の中に居たせいかその光に思わず目を細める。

「ここからは地図で見た通り、ほぼ一本道なのですが一応、分かれ道もいくつかあります。帰りで万が一僕が一緒に行動出来なくなってしまっても帰れるように道だけはしっかり覚えておいてくださいね」

「あぁ問題ない。エンリータ、お前も何かあれば1人でここを行くことになる良く見ておけ」

「うん・・・」

ルーカの言葉にベテランの冒険者らしく落ち着いて言葉を返し、エンリータは少し自信がなさげな、不安な声で返事をする。しかし、ここまで来て一人返すわけにもいかない為、アーロンは腰のファルシオンを抜き、最後尾に着く。

「では、行きましょう」

ルーカも腰の剣を抜き、頼りない光の下、3人は通路を進み始めた。


通路は石造りで大人が横に3人は並べるほどには広く取られており、只の隠し通路にしては力が入れられているのが見て取れる。長年放置されていたせいか汚れや埃っぽさは隠せないが崩れることも、水が漏れるような気配も全くしていない。カツンカツンという3人分の音が通路にただ響く。

そうして道なりに進みながら幾度か分かれ道を行くうちに前を歩いていたルーカが左手を横に出し、停止の合図を出す。それを見たエンリータは不思議そうな顔をするがアーロンは顔を引き締め、暗闇の先に意識をやる。ルーカは耳を床に付け、暫く目を瞑りながら聴き耳を立てている。

暫くすると耳を離し、小声でアーロン達に「この先に敵がいます。恐らく複数、正確な数は分かりませんが3体前後」と手短に伝えてきた。

「俺が先行しよう、明かりと周囲の警戒を頼む」

ルーカが聞きつけた音はまだアーロンには聞こえなかったが魔物狩りは冒険者の得意分野であるため、ルーカには一旦、後方に下がってもらい、奇襲の備えと支援をしてもらおうと判断した。

それなりに幅は有るが流石にグレートソードを振り回すにはやや不釣り合いな場の為、右手にファルシオンを構えたまま足音を立てない様に慎重に前へと進む。ルーカが後方に下がったため、視界がやや狭まったが目を凝らすようにしていると先から足音と口から漏れ出すような獣の唸り声がアーロンの耳に届いた。

(あの曲がり角の先、数歩と言ったところか)

光は届いていないが走ればすぐにある一本道の曲がり角、その先から反響する様にして音が響いてくる。後ろを振り向き、ルーカに光を小さくするように合図を送る。直ぐに光が小さくなり、何とか足元が見えるかと言った位になった後、闇に眼を慣らしながら前に進み、曲がり角で顔を僅かに覗かせる。その先にはアーロンと同じくらいの大きさで、ずんぐりとした輪郭の魔物が2匹、まるで話し合う様にしてたむろしていた。

(はっきりとは見えないがあの体格にこの饐えた獣臭、マグバグスか)

マグバグスは森や洞窟に発生しやすい魔物だ。一見、大男といった風体だが肌色が深い緑で、異常なほど隆起した手足にエラ張った顔をしている。口からは上に向かって左右から白い牙が上唇よりも突き出ており、目は人間そっくりだが暗い所でもなんの問題もなく視界が利き、鼻も良く通る。それに加えて集団で行動し、知恵もある為、中堅どころの冒険者が一方的に殺されることも多く、酷ければ村が消えたこともある非常に危険な魔物だ。それゆえ、村近辺で発見された際は程度によるがギルドで最優先の討伐が出される可能性のある種族でもある。

(随分と厄介なのがこんなところに湧いたものだ)

思わずため息が出そうになる。これから先の事を思えば戦いたくないが倒さねば通れず、また帰りに遭遇しても厄介なため倒さなければならない。後ろにいる2人に対してここで待つように伝え、ファルシオンを握り直し、もう一度顔を覗かせ、敵との距離を測る。

(まずは牽制といくか)

そう決め、魔術を唱える準備をする。幸いマグバクス達はこちらに気付いておらず、目立った動きもない。アーロンは腰を屈め、足に力をこめる。そして一旦深く息を吸い込むとともに角から跳びだした。

『炎精よ、願うは焔の花』

空いた左手を前に突き出し、呪文を唱える。すると手のひらから真っ赤な火球が手前に居たマグバクスの顔を目掛けて飛ぶ。敵もアーロンの走る音と声に反応して顔をこちらに向けており、火球を挟む形で戦闘が開始した。

放たれた火球は奇襲の甲斐もあり、吸い込まれる様にマグバクスの顔に直撃し、顔を焦がす。ジュウという肉を焼く音と臭いが噴き出し、同時に当たった火球が破裂するような音と共に火の粉となって飛び散りながら暗い通路を照らし、僅かながらに視界が開く。流石にこの一撃で致命傷には至らず、軽度の火傷程度ではあったが顔を焼かれた敵は突然の痛みに戸惑い、手で顔を覆い、行動が止まる。後ろのマグバクスは前の味方が壁になっていることと突然の明かりに目が追い付かず、その場に立ち尽くしていた。

その隙をアーロンが見逃すわけもなく、片目を閉じたまま一直線に肉薄する。そして炎による明かりが消える頃には敵をファルシオンの射程に収め、勢いよく振り下ろす。

マグバクスの弾力性のある筋肉質な肉が一気に裂け「グギャァァァ!」という悲痛な叫びが通路に響く。アーロンは振り下ろした状態から更に踏み込み、右肩で体当たりを仕掛け、後ろの敵を巻き込ませながら転倒させて自分は少し後ろに飛び退く。いくら強靭な肉体をしているとはいえ、勢いよく切られ、視界もおぼつかない状態だったマグバクスは足に力を込められず、たたらを踏みながら味方を背中で押しこみ、倒れ込んでしまう。後ろにいたマグバクスはまだ余裕があったのか自身の手で倒れ込む味方を軽く押して後ろに跳び、巻き込まれるのを避けたようだ。

そうしてまた暗くなった視界の中で閉じていた目を開き、アーロンは油断なく敵に目を向ける。

(一体は暫く動けない、もう一体も間に味方がいては動きにくい。もう一度牽制するか?)

そう思案していると立っているマグバクスが両足を踏ん張る様な姿勢をとり、怒りの形相で吠える。

「グォォォォォォォ!」

その叫びと共に踏ん張っていた両足で跳び上がり、味方を越え、着地するとともに右腕を後ろに引き、地面を踏み鳴らしながらアーロンに近づく。それを正面から目を逸らすことなくアーロンも身体を半身引きながらカウンターの構えを取るがマグバクスはそんなアーロンの姿など目に入らないと言った風で構わず踏み込んでくる。

そしてついにマグバクスが突進しながら後ろに引いていた右腕を上から叩きつぶす様にしてアーロンの頭を目掛けて振り下ろす。ズシンと言う踏み込む音と共に力任せに振り落とされた拳をアーロンはファルシオンを顔まで持ち上げて、上から下へ斜めにしつつ右足を更に引きながら完全に半身になり、拳にファルシオンの側面を沿わせ、流した。

マグバクスは自分の攻撃の勢いのままアーロンの横を通らされ、無防備な姿を晒してしまう。当然その隙を見逃すわけもなく、流した勢いのまま上段に構えられたファルシオンがマグバクスの後ろ首を目掛けて振り下ろされた。

刃は吸いこまれるように首に向かって行き、肉を裂き、骨を砕きながら両断された。血を撒き散らしながら首を失った身体は力なく地面に倒れていき、ズシンという音と共に静かになる。それを見届けたアーロンは最初に攻撃したマグバクスに目をやる。敵は必死に床で藻掻いており、なんとか立ち上がろうかという所だった。焼けただれた顔を手で押さえながら目をかっぴらき、怒りの表情でアーロンを睨み付ける。それを見たアーロンはファルシオンを垂らしたまま油断なくマグバクスに駆けよる。それを見たマグバクスも吠えながら立ち上がり、両手を組んで上から下へハンマーの様に叩きつける。駆けていたアーロンは落ち着いてバックステップを踏み一撃を避ける。避けられた拳は床を叩き、大きな罅を入れた。

(流石に馬鹿力だな・・・)

後ろに跳んだアーロンは一度仕切り直す様に直立する。

マグバクスは怒り冷めぬといった表情でこちらを見ており、足に力を入れて突撃する姿を見せている。

「グォォォォォ!!」

そうしてこちらに力の限り走ってくる敵を見ながらアーロンは持っていたファルシオンを敵の顔を目掛けて投げ飛ばした。

ファルシオンは回転することなく真っすぐマグバクスの顔を目掛けて飛んでいく。それと同時にアーロンは背のグレートソードを抜き、駆ける。

飛んできたファルシオンに一瞬、意識を持っていかれた敵は導かれるように己の剛腕を振ってファルシオンを弾いた。そして薙いだ腕が視界を覆い、開けた時、目の前にはグレートソードを振りかぶるアーロンの姿があった。

アーロンは隙を晒したマグバクスの胴体に力の限りグレートソードを振り下ろす。刃は骨の硬さすら無視する様にその巨体を肩から切り裂く。そして振り切るとともにマグバクスの巨体が膝から崩れ、ドシンという音を響かせながら床に横たわる。アーロンは念のため倒れた敵の首に刃先を突き立てて確実に息の根を止める。

暫しの硬直の後、グレートソードを引き抜き、血を拭って刃こぼれが無いか確かめ、背にしまう。同様に投げ飛ばしたファルシオンの確認も済ませ鞘にしまい「終わった、先を急ぐぞ」後ろで待機している2人にそう声をかける。

そうすると曲がり角からひょっこりとでも言う様にエンリータが跳びだし、その後ろから周囲を見やりながらルーカが近寄ってきた。

「流石、と言った所ですね」

どこか愉しげにルーカがそう話しかけてくる。

「本職だからな、この程度出来なきゃ生き延びていない」

当然、とでも言いたげな声色でアーロンはルーカの軽口に返事をする。

「それは心強い、では僕がまた前を行きましょう」

そう言うとルーカは明かりをまた強め、前を行く。

「ねぇねぇ、怪我はない?」

どこか心配げにエンリータが下から顔を覗き込むようにして聴いてくる。

「あぁ問題ない。それより行くぞ」

そう言いながらルーカの背を追った。


それから数回、小型の魔物と交戦したがマグバクス級の魔物はおらず、3人は順調に通路を進み、遂に庭園の下に辿りついた。

「では、最後に確認をしましょう」

小声でルーカがそう切り出す。

「この階段を登ると城の裏手にある庭園に出ます。幸い周囲は草木に隠れている為、騒がなければ問題ないとは思いますが何があるかは分かりません、出る時には十分に注意を」

アーロンとエンリータは頷き、次を促す。

「そしてエンリータさんは出たところで退路の確保をお願いします。僕たちが目的を果たして帰ってくるまで身を隠しながら入り口を封鎖されない様にしてください。最悪、見つかってしまい命が危なそうであれば渡した信号弾を打ち上げて、逃げて下さって結構です」

「うん、わかったよ」

いつになく真剣な表情でエンリータが返事をする。今回、城の内部に潜入するのはアーロンとルーカだけだ。単純に数が増えると身を隠すのが難しく、加えて何かあった際にエンリータが足手まといになってしまうのを避けるために今回は退路を確保する役目に落ち着いた。

「アーロンさんは僕と一緒に城の壁を登ってもらい、屋上の扉から内部に侵入します。その後、廊下を進み、王の寝室まで繋がっている隠し通路で待機。最後に扉の前にいる衛兵を僕が別ルートから気絶させ、寝室に潜入後に寝所で王と対面します」

「あぁ了解だ。しかし本当に大丈夫だろうな?結構シビアに思えるが」

内部に上手く入る所まではいいとしても王の寝所を守る兵だ、当然実力は低くないだろう。また叫ばれでもすればそれだけで作戦は破綻してしまう。

「えぇ、そこはお任せください。僕が衛兵を魔術で眠らせて寝所にいれて、防音の魔術で時間を稼ぎます。アーロンさんは僕が中に入る音を聞いてから、部屋に入って下さい」

「まぁ良いだろう。任せるとは言った、それにここまで来て引き返すわけにもいかない」

「良かったです。では、行きましょう」

そう言うとルーカは梯子を登り始め、アーロン達もそれに続く。


ゴトリと言う音と草が千切れる音が聴こえ、開いた隙間から月明りが差し込む。まず、ルーカが周囲を警戒しながら地下通路から跳びだし、アーロン達にサインを送る。それに続いてアーロン、エンリータの順で外に出る。木々の隙間から見える月は頭の上まで昇っており、ずっと暗い地下にいたせいか夜風が身に沁みる。城も寝静まっており、虫の声だけが夜を賑わしていた。

ルーカが入り口を目立たない様に隠す姿を見届けた後、エンリータの顔を見る。エンリータは少しばかり緊張した顔をしながら深呼吸をしており、肩が固くなっていた。アーロンは驚かしてしまわぬように彼女の前に回り、頭を軽く叩く。

目をぱちぱちしながらきょとんとするエンリータに口で任せるとだけ伝え、手を離す。エンリータは少しだけ呆けた顔になったが顔を引き締め、無言で頷く。どうやら少しは肩の力も抜けたようで安心したアーロンは既に作業を終わらせて茂みから城の方を見ているルーカに近づいて行った。


アーロンが近づくとルーカは顔を少しだけこちらに向ける。それに対して少し頷くだけで返事を済ませ、2人は城に向かって駆けだす。ほんの僅かな時間とはいえ2人の姿は月明りに照らされて姿を晒す事になり、思わず心が逸りそうになるが抑え込み、静かに地を駆けぬけて城の壁面に身体を密着させる。

『風精よ、願うは天翼、孤高の大鷲』

静かに、呪文を唱えると身体の重みが消え、足元から風が吹き始める。少し身を屈め、力強く地面を蹴ると風は更に強くなりアーロンの身体は屋上を目掛けて真っすぐに飛び上がる。

(クッ!久しぶりに飛んだが制御が難しい)

空に飛び上がったところまでは良いが風をコントロールし、体を制御するというのは難易度が高く、最初こそ真っ直ぐだったが少し左右にフラフラしながら飛んでしまう。自分よりも先にいるルーカは見事な制御技術で無駄な風も無く、綺麗な状態で空に向かって駆けあがっていた。

そうして何とか屋上に辿りつき、縁に手を掛け、よじ登る。周囲を見渡すが見張りは居らず、巡回兵もちょうどいない隙間でルーカの諜報能力に思わず感心してしまう。その当人は既に屋上の通路でこちらを見ており、手でサインを送っている。アーロンも通路に静かに下り、その背を追って城の内部へと侵入していった。


侵入した城の廊下は全体が綺麗な乳白色の石材で出来ており、道の真ん中には赤いカーペットが敷かれ、左右の道には等間隔で花が花瓶に活けられていた。通路の壁上には明かりの確保の為だろう大きな窓が一定の感覚で設置され、廊下に月明りが差し、夜でも十分な光量があった。その通路を2人は足音を立てない様に走る。幸い柔らかいカーペットのお蔭で大きな音はせず、予定通り、例の隠し通路のある部屋に辿りつくことが出来た。まずルーカが先に部屋に入り、安全を確認しに行く。その間、アーロンは廊下を見渡し、衛兵が来ないか注意を払う。

(今の所上手く来ているがあまりにも静かすぎる。小国とはいえ城の、王の寝所がある階だぞ。こんなにも上手く行くものか?そもそも兵がいるような気配すら感じられない)

思わず疑問が頭をよぎる。今、アーロン達がいる場所は国にとっての急所である事は疑いようがない。しかしあまりにも兵が少なく、巡回の明かりすらほぼない。本来であればこの階は勿論のこと屋上、庭含めて兵士がグルグルと集団で回っていてもおかしくないのだ。

(分かってはいた事だがやはり違和感が拭えない。間違いなく何か異変が起こっている)

そう思案していると確認を終えたルーカが扉から顔を出し、手招きをする。最後にもう一度周囲を見渡した後、アーロンも扉の中へと入っていった。


部屋は中央に大きなソファーと長机が鎮座しており、天井には大きな照明の魔道具が吊るされ、壁際には暖炉やお茶を淹れたりする為の施設が揃っていた。奥には更にカーテンの掛けられた入口があり、恐らく寝室に続いているのだろうと感じられた。アーロンの様な冒険者であっても一目で金が掛かっていると見てとれ、全体的な色合いから高貴な女性の部屋であることが分かる。ルーカは部屋の奥の扉に向かっており、アーロンも無言でそれに続く。奥の部屋はやはり寝室だったようで天蓋付きの大きなベッドに、化粧台、本棚等があった。しかし、人が住んでいるような痕跡は無く、あまりにも綺麗に整えられたままで生活感が全くしなかった。

(この部屋はもしや王妃の部屋か)

アーロンが周囲を見渡している間にルーカはベッドの奥側に回ると壁に向かって何やらいじり始める。するとギィと言う音と共に壁が開き、通路が現れる。

「アーロンさん、ここを行けば王の寝所に繋がっています。行き止まりにはドアノブが付いているのでそこで待機してください。僕は寝所の正面の衛兵を押さえて中に入るのでその音を合図に」

「あぁ、分かった」

小声で返事をしながら通路に踏み入る。後ろで扉が閉まる音を聞きながらアーロンはゆっくりと闇の中へ身を潜らせていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ